第4話後悔の後
光希は大きなすきを見逃すことなく、スピードを一気にあげ屈折獣の懐に入り込んだ。「魔力開放:発」とつぶやくと光希の手が輝きだし、握っている剣の刃が一回り大きくなり、まさに光の速度のように剣を振り上げた。豆腐を切るようになんの抵抗もなく屈折獣は胴体を真っ二つに切られた。声も上げることなく絶命し、今まで魔力を使うことで透明になっていた体が元に戻り少年が勝利したことを表していた。「任務完了。これから避難している人たちの手伝いをしている仲間たちのもとに向かう。後処理は頼んだ」と力に言い、光希はその場を後にした。
俺は自分のふがいなさに隣に遥さんがいるにもかかわらず顔を手で覆い目から熱い液体を数滴流してしまった。
「正善くん!時間がたって痛みがまた悪化しちゃった?」御薬袋さんが俺の背中をさすりながらやさしく聞いてくれた。メンタルがやられている状態で優しく接してもらい歩いていた足をとめ、強張っていた足から力が抜け膝から崩れ落ち座り込んでしまった。そして力なく今思っていることをしゃべる。「俺は何もできませんでした。友達を助けることも、声を出して助けを呼ぶことも。今も耳に目にこびりついてるんです。一天の羽がもがれるときの悲痛な叫びが、颯雅が俺を助けるために大声をあげて勝てるはずのない魔物に突っ込んでいき返り討ちに合う姿が。比京が一天を突き飛ばし、醜い笑い声をあげながら逃げていくさまを。俺は助けに応じることも、俺のせいで危険な目にあう親友や人をおとりにして逃げていくやつをを止めることもできませんでした。この事実がとても悔しいんです。もう少し勇気があれば、行動力があれば、力や知恵があればみんな助かったかもしれないと思うともう心がしんどくて、つらくて、壊れてしまうんじゃないかと思ってしまうんです。」黙って情けなく聞き取りずらい涙声を聴いてくれた御薬袋さんが俺が話し終わると「正善くん、それは違うと思うよ。確かに君はなにもできなかったかもしれない。ただ今の状態変えることのできない現実なんだよ。厳しいことを言うけどいくら考えたってなにも変わらないし、得るものもないんだよ。君たち三人は強大な魔物から無事生き残ることができた。今はそれだけで十分じゃないかな。でも過去を振り返るのは悪いことばかりでもないよ。今は悪いところだけしか見えていなくても落ち着いて客観的に過去の失敗を見ることができたら今の悩みの解決策を見つけることができるはずだよ。君は生き残ることができた。だからこそいっぱい悩んで後悔して、そして前へ進むための答えを見つけ、成長していく。これが人として生きていくために必要なことだと思うよ。だから取り乱している今はいっぱい泣いて、冷静になってから一緒に考えよっか。」と背中をゆっくり安心させてくれるようにさすりながら慰めてくれた。俺はこの言葉をきき安堵し、冷静になるまで御薬袋さんの好意に甘えるように泣くことにした。
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