第二話 姉にとって

大都市圏の近郊の住宅地に暮らす私は小澤早千江おざわさちえ、15歳の高校一年生の春。


私は成績が普通よりちょっといいぐらいなので、地域の公立の中堅クラスの進学校に入っていた。


いつものように6時45分の目覚ましで布団を抜け出し、朝の身支度を整える。


気難しいい父親を起こさないよう、注意深く動き一階の洗面所に降りる。


父親は理由は判らないが、なぜか周平への当たりがきつい。

成績を理由に暴力を振るうことが日常茶飯事だ。


夜遅くに仕事から帰って来て、朝は遅めに起床するので、物音で起こすとめんどくさくなりそうで怖い。


そんな、朝。


私の立てる物音に気が付いて、周平がキッチンから顔を出し、いつものように

「姉ちゃんおはよう。今日も奇麗だね!」

と小声であいさつをしてくる。


いったい何がきっかけなのかわからないが、いつのころからか、周平は私にこんなことを臆面もなく言ってくるようになった。


当初は子供っぽい幼稚なものと思い、何とか聞き流していたが、正直気持ち悪いと思っていた。


それでも、年単位で言われ続けると慣れてしまって気持ち悪さが減ったころ、私を見る目から幼稚さがなくなり、本気で言ってるような真剣さがこもってきた。


姉弟相手に本気の恋愛感情を向けてくるって、また気持ち悪さがぶり返してきた。


でも結局、そんな感情を向けられるのを年単位でされるとやっぱり慣れてしまって気持ち悪さが減ってきていた。


もっとも、周平の目もスケベな男子が女子を見る体を舐めまわすような視線ではなく、いとおしいような優しい視線であることもまた慣れる要因でもあった。



ある時私は友人に「弟」っていうものに対する感情を聞いてみたことがある

「かわいい」とか「うざい」とか「きもい」とかみんなバラバラ

そういうことなら周平も「きもい」に分類される普通の弟なのかな?

でも、視線が姉に向ける視線じゃあない

そんな弟にうんざりしつつ慣れさせられていた



そんな日常の中、クラスメイトで席が隣の仲よくなっていた堀正弘くんから告白された。

彼とは高校に入学した当初から、おとなしめの成績の近い、テストの点数を競えるような近しい間柄となり、放課後には一緒に図書室で勉強したり、本を一緒に読んでゆっくり過ごしたりしていた。


一緒にいることが自然な感じの彼は、居心地のいい関係性で、そんな彼からある日の放課後の誰もいない教室で

「小澤早千江さん・・・ずっと前から好きでした」

「俺と付き合ってください!」

そう告白された


私はびっくりした


中学時代、私は男子からの視線が嫌だった。

周平から向けられるいとおしいような視線ではなく、私の体を値踏みするような、舐めまわすような視線。


正直、私の体はそんなに男の子受けするような出るとこが出てるようなものじゃあない。

高校生になった今もせいぜいふっくら盛り上がってる程度。

ぶっちゃけBカップしかない。

やせ型で肋骨までは浮いていないが、男子たちが盛り上がるような体型ではないと思う。


でも、彼はおとなしい性格からなのか、舐めまわすような視線ではなく、優しく微笑むような視線を向けてくれる



そんな彼からの告白


私はしばらく考えて

これで周平からの変な態度を『彼氏が出来たから』を理由にやめさせることが出来るかも

そう結論付けてみる


それならこの告白に応えてみよう


居心地のいいこの関係性なら間違いない

そう考えて告白を受けて付き合うことにした

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