第九夜:ボーダー

 蟻が行進している。

 長い列を作り、整然と歩いている。

 その先に食べ物があるのだろうか? 巣に帰るところなのだろうか?

 蟻達の前には、高いフェンスが立ちはだかっている。

 しかし、気にしている様子はない。やすやすと、くぐり抜けていった。

 蟻達とって、フェンスは、小石や葉っぱと同じで、進行を妨げるものではなかった。

 人間に踏まれることもあるが、仲間の屍を乗り越えて、進んで行った。

 たまに、フェンスが大きく揺れて、銃声が響き、人間が落ちてくることがあった。

 赤い液体が、ゆっくりと広がっていった。

 蟻達は、そのドロドロしたものを避けるようにして、歩みを止めない。

 フェンスを挟んで、自由な行進を続けた。

(了)

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