「デメリットの分だけ高性能」という代償鍛冶システムのコンセプトが、まず掴みとして最高だ。
プロローグの世界観設定も丁寧だ。長い法整備の空白期間を経てついに発売された本格VRMMO「NEW FRONTIER」を、全抽選に外れ続けてようやく手に入れた主人公・敦子のテンションが微笑ましく、読み手を一気に親近感へ誘う。「人体の塩分を伝導体にして血中ナノマシンにデータをダウンロードする」という近未来設定の緻密さも好印象だ。
第1話では、ドワーフキャラ「ジュール」として攻略掲示板の情報を活かして師匠NPCを探しに行くのだが、スラム街で迷子になるというコミカルな展開が良い。計画通りにいかないゲーム体験のリアルさが伝わってくる。
「デメリットの代わりに性能が高い」という代償鍛冶の仕組みは、単純に強い装備を作るだけでない奥深さを予感させる。使いこなすプレイヤー技量が問われる生産系の醍醐味が、この作品で味わえると期待している。