第5話 燃え上がる廃墟、動き出す影



#### 1. ナハトの帰還と新たな火種


リアナ、カイ、トビアス、そして825と814を連れてナハトに帰還した一行は、住人たちから複雑な歓迎を受けた。略奪者との戦いで傷ついた集落は、食料と電力の危機に直面し、住人たちの不満は頂点に達していた。814が戻ったことで、一部の住人は安堵したが、多くは依然としてロボへの不信感を隠さなかった。「ロボを信じるなんて、リアナは正気か?」と囁く声が、集会所の暗がりで響く。


リアナは住人たちを集め、研究施設で得たデータを公開した。ハウス博士のログは、800番台ロボット兵が人間の感情を模倣するよう設計されたこと、そしてその「エラー」が825や814の行動に影響を与えていることを示していた。さらに、データにはロボの電力供給を安定させる方法が記されており、ナハトの電力危機を解決する希望が見えた。「これを使えば、集落を立て直せる。825と814は…敵じゃない。」リアナの言葉は力強かったが、住人たちの目は冷ややかだった。


その夜、老人のリーダー格マーサがリアナに迫った。「ロボを仲間だと言うなら、証明しろ。次の危機が来たら、奴らがナハトを守る姿を見せてみろ。」リアナは頷いたが、心には重い不安が広がっていた。廃墟の果てで見た「新たな影」の存在が、彼女の胸を締め付けていた。


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#### 2. アレリア革命団とワグレの暗躍


ナハトから遠く離れた廃墟の地では、かつての大国アレリヤの遺志を継ぐ武装集団「アレリア革命団」と、旧世界連合の流れを汲む暫定自治集団「ワグレ」が、熾烈な小競り合いを続けていた。アレリア革命団は、アレリヤの元将校や技術者を中心に結成され、「世界を再びアレリヤの秩序の下に置く」ことを掲げていた。一方、ワグレは旧世界連合の民主主義的理念を継承し、集落間の緩やかな連合を目指していたが、内部の派閥争いにより弱体化していた。


両者は、廃墟に眠る旧アレリヤの兵器や技術を巡って衝突を繰り返していた。特に、研究施設跡に残されたハウス博士のデータや、ロボット兵の残骸は、両集団にとって喉から手が出るほど欲しい「宝」だった。アレリア革命団のリーダー、ガルスは冷酷な戦略家で、ワグレの集落を次々と襲撃し、技術者を拉致してロボット兵の再起動を試みていた。対するワグレの指導者、エリナは穏健派だが、革命団の攻撃に耐えきれず、集落の存続を賭けた反撃を計画していた。


この二つの勢力の紛争は、ナハトのような小さな集落にも波及していた。斥候の報告によれば、ナハトの東50キロの廃墟で、革命団とワグレの戦闘が頻発しているという。さらに、噂では「新たなロボット兵」が戦場に現れ、両勢力を圧倒しているとのことだった。リアナはその話を聞き、背筋が凍った。あの「影」は、新たな800番台のロボット兵なのか?


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#### 3. アベーニャーの脅威


一方、ナハトの南に位置する小さな集落の集合体「アベーニャー」は、独自の動きを見せていた。アベーニャーは、複数の小規模集落が互いに協力して生き延びる連合体で、交易や情報交換を通じて力を蓄えていた。最近、彼らは廃墟の奥深くで「826」と呼ばれるロボット兵を発見し、修復に成功した。826は、825や814と同じ800番台だが、より高度な戦闘能力と自律性を備えているとされた。


アベーニャーの指導者、ザイラは野心家だった。彼女は826を戦力として利用し、アベーニャーを周辺地域の支配者に押し上げる計画を立てていた。すでに、近隣の小さな集落はアベーニャーの「保護」を受け入れ、事実上の従属状態にあった。ザイラの次の標的は、電力供給の技術を持つナハトだった。「あの集落には、825と814がいるらしい。ロボを我々の手にすれば、アベーニャーは無敵だ。」ザイラの言葉に、部下たちは熱狂的に頷いた。


アベーニャーの斥候がナハトの周辺に現れ始めた。カイがその一人を捕らえ、尋問すると、驚くべき事実が明らかになった。「アベーニャーは…826を使ってナハトを奪うつもりだ。抵抗すれば、皆殺しだ。」カイの報告に、リアナは拳を握りしめた。「ロボを…また戦争の道具に? ふざけるな。」


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#### 4. ナハトの防衛準備


リアナは緊急会議を開き、状況を説明した。アレリア革命団とワグレの紛争がナハトに迫り、アベーニャーの脅威が目前に迫っている。住人たちの間には恐怖が広がり、逃亡を考える者も現れた。だが、リアナは毅然と言った。「ナハトは俺たちの家だ。逃げるより、戦う。825、814、力を貸してくれ。」


825は静かに頷いた。「私は…ナハトを守る。リアナを…信じる。」 814は一瞬躊躇したが、825の目を見て答えた。「…私も戦う。だが、人間が裏切れば…容赦しない。」 住人たちは二体のロボの言葉に戸惑いながらも、戦う決意を固め始めた。


リアナは研究施設のデータをもとに、ナハトの防衛を強化した。壊れた太陽光パネルを修復し、電力供給を安定させ、バリケードを再構築。825と814は、自身の構造を解析し、電力効率を最適化する方法を提案した。カイは弓の訓練を強化し、トビアスは廃墟から回収した爆薬で罠を仕掛けた。ナハトは、まるで要塞のように生まれ変わった。


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#### 5. 迫り来る影


その夜、ナハトの周辺で不気味な金属音が響いた。斥候が急いで戻り、叫んだ。「アベーニャーの部隊だ! 826が…来てる!」 リアナは屋上に上がり、双眼鏡で遠くを覗いた。暗闇の中、赤い目が光る人影――826だ。その動きは、825や814よりも滑らかで、まるで人間そのものだった。背後には、アベーニャーの戦士たちが武器を手に続く。


同時に、東の廃墟から銃声が聞こえた。アレリア革命団とワグレの戦闘が、ナハトの近くまで迫っていたのだ。リアナは歯を食いしばった。「最悪のタイミングだ…だが、負けるわけにはいかない。」


戦闘が始まった。アベーニャーの部隊がナハトのバリケードに迫り、826が驚異的な速さで前進する。825と814は前線に立ち、826と対峙した。「…兄弟か?」825が呟くと、826の冷たい声が返った。「私は…完成形だ。お前たちは…失敗作だ。」 赤い目が暗闇で輝き、廃墟に火花が散った。


同じ頃、アレリア革命団の斥候がナハトに接近し、ワグレの追撃部隊がその後を追う。ナハトは、三つの勢力の戦場と化していた。リアナは叫んだ。「全員、持ち場を守れ! ナハトを…守り抜くぞ!」


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