9句目 悪役令嬢 少女期・学園中等科 進級【春】



手を取りて 君と行く夢 花過ぎはなすぎ




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【悪役令嬢ガーネット・スフォルセフ(17歳)解説】


 リリベル・ミレットが、聖女となってわたしの周囲に多くの変化がありました。


 まずは級友が遠ざかりました。彼女の豊穣の力の恩恵を受けた貴族らが中心になって、彼女を我が家と対立する公爵家の養女へと押し上げたのです。農産物の収穫量の影響を直に受ける下位貴族ほど、彼女への傾倒は顕著でした。それは王家に必要な求心力と言えなくもありません。だから、彼女をわたしに代わる王太子妃候補に……との声が第二勢力として顕現したのです。


 父からは、能力のなさと王太子のお心を繋ぎ止めきれていないわたしへの当たりが強くなり、家族間の関係はギスギスしたものになりました。


 学園で常に側に侍らせるリリベル・ミレットには、柔らかな笑みを浮かべる王太子とは、近頃は疎遠になりつつあります。けれど、お諌めする言葉だけは婚約者としての務めですから、臆病になる心をなんとか奮い立たせて、震える声を押し殺しつつ、なんとかお伝えするのですが……。


 どうやら疎まれてしまっているようですね。

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