エンディング

【“導きの港”ハーヴェス】


「お別れだな」

「どういう事? キャプテン、お別れだなんて突然じゃないか」

「俺は冒険者だ、また冒険の旅に出る、七王群島に戻るつもりは無い」


 テオフェラトゥスは静かに船から降りる新しい旅へと向かう事を告げる。


「ま、待ってくれよキャプテン、嫌だよ、お別れだなんて! 嫌だ!」

「無くなフィト、お前はこれから王になるんだぞ、泣き虫な王に誰がついていく」

「でも、でもぉ……」

「本当に行っちまうのかキャプテン? そしたらこの船のキャプテンは誰になる」

「お前がやれよカルルス、まだまだ人生これからだろ」

「無責任な奴だな、いやそう言う奴だったなキャプテン、いやテオフェラトゥス」


 船を降りるテオを追って、仲間達も揃って船を降りてテオに声をかけようとする。

 最初に声をかけてきた泣き出すフィトの頭を乱暴に撫でながら、カルルスの問いにあっさりとそう答えて船に未練などこれっぽちも無さそうであった。


「いつかキャップの詩を歌うよ七王群島、ううん世界に届くくらいすっごいのをさ」

「出来ればうんと格好いい姿を歌ってくれよ、いや親しみやすい姿を謳ってくれた方が女性の心象がよくなるか?」

「どっちも歌うよ、楽しみにしててね~♪ 天啓が北、さっそく書かなきゃ!」

「っふ、慌ただしい奴だな」


 マリア・ララリラはテオへの決意と共にリュートを一度だけ響かせると、早速歌を作らなきゃいけないと船へとそそくさと戻って行ってしまう。


「キャプテン殿改めテオフェラトゥス殿、貴方の力、勇気、智慧、それらすべて私に多くを学ばせてくださいました、今一度、感謝を、貴方は第二の師匠にございます」

「よしてくれよ、アンタの師匠に悪いじゃないか、俺は誰かの先達を勤めれる程立派な男じゃないよ、リィンレイン、師匠を大事にな」


 最期まで几帳面に礼をするリィンレインにテオは自分には出来なかった師匠孝行をするように言葉をかける。


「船長、いえ船を降りるなら、テオフェラトゥスさんですね、命の恩人の貴方との旅は商人としてだけでなく一人の男として成長させて頂く旅になりました、私は私の道で貴方は貴方の道で懸命に生きましょう」

「ああ、こちらこそセベロの用意してくれた道具の数々には助けられたよ、アンタが商人として大成する日を祈っている」


 旅の中、一際逞しく見違えたセベロの硬い握手を交わしそれぞれの未来に激励をしあう。


「短い間でしたが、面白かったですよ、テオフェラトゥス様、私は七王群島に戻るおつもりです、残り短い時をあの島の神域で後身の育成に励むのが私の最後のガメル様へのご奉公としようと思うのです」

「そうか、出来ればフィトや皆を気にかけてやってほしい、この中じゃ一番の年長者は貴方なんだ」

「ふふっ、そんなに心配なら共にあればいいと思いますが」

「それは……別れが辛いから、俺も、あいつらも」


 ルフィアに言われたテオは顔を俯かせ小さく呟きながら息をつく、自分が迎えるそう遠くない未来を憂いながら。


「キャプテン様、本当に行かれるのですか? まだまだ七王群島は平穏とは言い切れません、きっとキャプテン様のお力が必要になります」

「後の事はフィトやアルーミナスお前等の仕事だ、一介の流れ者にいつまでも頼るようじゃ駄目だ、運命は自ら切り開く者、そうだろう」

「キャプテン様……」


 今にも泣きだしそうな顔をしてアルーミナスはテオに行かないよう求めるが、運命は自ら切り開く、その言葉に唇を神鳴くのを我慢するのが精いっぱいだった。


「ローグ、お前はどうする? 俺は北に行こうかな、ブルライトからは離れるぜ」

「ぼかぁ……七王群島に戻るのサァ、テオ、君との冒険も楽しかったけど、ぼかぁ、あの島の事が……いやフィトや皆の事が心配サァ、だから……ごめん、その代わりと言ったらなんだが、餞別のガメルなのサァ」

「気にするなよ、また気ままな一人旅になるってだけさ、それも悪くない、餞別は確かに受け取った、それじゃローグ、こいつを代わりに」

「これは緋の王の描かれた金貨?」

「おう、俺達の友情と絆の証だ、フィト、お前にも」

「キャプテン……ッ」

「俺達はずっと仲間だ、同じ船で旅をして同じ飯を食って、泣いて、笑い合った最高の仲間だ、それじゃ……あばよっ!」


 テオはローグとフィトの小さな手の平に金貨を載せる、それには緋の王の肖像画が掘られていた、友情の証、そういって渡すと、テオは駆けだす様にその場を去っていく、次の新たなる冒険の旅へ向かう為に。


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――――――――――――――後の世の彼等の伝承――――――――――――――


【“不死鳥の”カルルス】


 ハーヴェス~七王群島間定期連絡船二代目船長として生涯船乗りとして暮らした。

周りからは何故二代目なのかを不思議がられていたが、彼は頑なに二代目を名乗る事をやめなかった。


【“竜巫女”アルーミナス】


 竜巫女としてしばらくは海賊や蛮族、邪神の犠牲となった七王群島の竜たちの鎮魂に努める、後に建国王からの熱烈な求婚を受け二人は結ばれ、子宝に恵まれる。

 国母としても竜巫女としても慈愛に満ちた彼女の姿は国民の癒しとなった。


【“小炎天”リィンレイン】


 七王群島だけにとどまらず大陸にも伝わる程の知勇兼備に優れた随一の武人として名を馳せた、師匠より“炎天”を名乗る事を許された後も生涯“小炎天”を名乗り続け、師匠への敬愛を示し続けた。


【“不撓商人”セベロ・プリシオス】


 七王群島で最も大きな商会“銀環商会”の初代会頭、国王の信頼厚く彼は王家の御用商を勤めていたと言われている。後に彼が晩年に記したとされる自叙伝“不撓不屈”は過去の初代国王や王妃、国の重鎮について記されている歴史書としても非常に貴重な資料となった。


【“未来を謳う”マリア・ララリア】

 

 周りに迷惑をかけながら名曲の数々を世間へと生涯に亘って出し続けた、その中でも特に銀髪銀瞳の青年の雄々しくもあり同時に親しみやすさのある姿を想わせる歌が人気を博しており、それらをまとめて劇にした“銀剣活劇”は子供に人気の英雄譚として知られている。


【“清貧なる樹木”ルフィア・スベトラーナ】


 ガメル神の神域に長らくとどまり後身の育成に励む、寿命を迎え樹になってからも神域のすぐそばの庭に彼女は物言わずともガメル神への祈りを続けている。


【“暁の王”フィト】


 邪神に侵されつつあった七王群島に仲間達や神の力と共に夜明けをもたらし16の若さにもかかわらず、七王群島に国を建国し300年に亘って王として君臨し優れた政治手腕を振るった、玉座を退いた後も海軍将校として緋の王が使ったとされる3本の剣を操り優れた武勇で国を幾度も救った事で夜明けを照らす英雄と呼ばれた。


【“七王群島の踏破者”ローグ】


 七王群島初代国王の下でしばらくの間は家臣として仕えたが、窮屈な宮廷暮らしに辟易すると、過去に購入した温泉宿を拠点に七王群島の探検を専門にした冒険者業を始める、彼の発見は七王群島の文化や技術の発展、成長に大きく寄与した。

 後に“七王群島の踏破者”の称号を正式に王家より賜わった。


【テオフェラトゥス】


 後世に残されている記録は全て人伝の者しか残っていない、しかし、彼を語る時に七王群島の人々は口をそろえてこう答えるのだ。


“夜明けの勇者”と


Fin

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