メジャーリーガー達の意識を変えるんですわ!

そのチェーン店のロゴは、大きな角を持ったトナカイがクラウチングスタートの体勢で走り出そうとしているイラストが印象的。



トナカイもそうしたくなるほど美味いということなのであろう。



実際に少し前に、かえでにせがまれて食べてみたら普通に美味しい。種類がたくさんあるし、中になめらかなクリームが入っているやつが俺は気に入った。



かえではチョコがたっぷりかかった定番のやつ、もみじはハニーシロップたっぷりのふわふわのやつ。みのりんはモチモチしたストロベリー味のやつとそんな感じ。




1塁側のカメラアングルだと、土下座していたはずの俺が、だんだんと側にあるトナカイのロゴと一緒のポーズになっていく。



そしてカメラに向かって、どういう訳がしゃくれ気味のキメ顔でフィニッシュ。



スタンドのお客さん達から、笑い声が上がり、満足した俺はレフトのポジションへと走っていくのだ。



しかもこのカリブードーナツ。屋号は変わっていないが、何年前経営が傾いた時に、ビクトリアカンパニーに、買収されているのだ。



そのアメリカおばちゃんが所有している日本のプロ野球チームからやって来た男。


そいつが全米中継されている試合で、ドドンとその広告をこんな手法で注目を集めたのだから、後はわざわざ言う必要もあるまい。







2戦目も負けて首位から陥落してしまったが。




「ニューヨーク、スターターピッチャー……ランディ・ハリソーン!!」




「「フォー!!」」




ニューヨークとの3戦目。



ビジターとはいえ、3連敗は許されん。ロレンス監督のカミナリもあり、少しチームの雰囲気は変わっているように感じた。



もちろん、変わった気がするだけではダメですから。



チームの変化、調子、勢い。それを作り出すのは1番バッターの役割である。




カキッ!!



「流した!3塁線!飛び付きますが、捕れません!!長打になります!打ったバッターは1塁を蹴って2塁に向かっていきました。


シャーロットの1番、ヒラヤナギがレフトへのツーベースヒットです」




ナイス。



アウトコースのボールを逆らわずにミートを心がけたバッティング。メジャーの守備位置は、やはり日本よりも塁際が空いていますから、そこに飛んでくれるとちょっとラッキーである。



俺も続かねば。




カンッ!



「これはセカンド正面です。ホーキンスが捌いて1塁アウト。ヒラヤナギは3塁に進んでいます」




バッターはバーンズ。外野フライでええねんでというところだったが、変化球を空振りし、速いボールをファウルであっという間に追い込まれてしまった。



それでも、真ん中低めのワンバウンドした変化球を見極める。




4球目は、左腕の勝負球。右バッターの膝元をエグるカットボールである。



高く足を上げたバーンズが強く踏み込み、そのボールを打ち返した。



昨日、一昨日。


いや、ここ5試合くらいのバッティングとはまるで違う右方向へおっつけるようなスイングに見えた。


バットが折れたので分かりにくかったが。



詰まった打球は、ピッチャーの右側に転がるボテボテ。



折れたグリップ部分を投げ出しながらバーンズは走る。


1アウトですから、3塁ランナーの平柳君もホームへ突っ込んだ。



ピッチャーがボールを追う。3歩4歩とマウンドを駆け下りるようにしながら右腕を伸ばしたその先をボールが抜けた。



ファーストがカバーしてボールを捕球、逃げようとしたバーンズの脇腹辺りになんとかタッチする間に平柳君がホームを駆け抜けた。





1点は1点。



豪快なバッティングで生み出したのと同じ1点。



シャーロットの本拠地の左中間にある、飛行機のコックピットの中に直接ホームランボールを打ち込むと100万ドルの賞金が出るらしい。


そんなホームランの1点と、チームを前に進めるための1点という意味合いでは同じだ。



だからベンチで見ていた俺も、ホームランを打った時と同じように、2人を出迎える。



よくやった。しぶといナイススイングだと、褒め称えてあげるのだ。




平柳君がアウトコースのボールを丁寧に流し打ちしてツーベースヒットにし、俺も逆方向に打ち返して進塁打にした。


バーンズも追い込まれながらも、インコースのボールをなんとか右にという意識があり、サウスポーのグラブが遠いところに転がして打点を挙げた。



そして、4番のクリスタンテも。空振り三振に終わってしまったが8球を投げさせた。



こういうの、こういうの。



打線ですから。1人1人の個人事業主がチームのため、次のバッターの為に出来る事をやる。 


これがチームプレー。打線というものですよ。



クリスタンテがじっくりボールを見させてくれたからか、2回の先頭アンドリュースが平柳君と同じように、アウトコースのボールを図ったような流し打ち。



鋭い打球が三遊間を破っていった。




6番のブラッドリーもライトを破るヒットを放ち1、2塁。7番のロンギーはセカンドゴロを打ってしまったが、最後まで全力で走り、ダブルプレーは阻止した。





そして8番のヒックス。 




カァンッ!!



「いい当たりだ!鋭い打球!センターの右、ライナー掴みました!タッチアップ!バックホームされますが、送球が僅かに逸れました!アンドリュースがホームイン!!シャーロットが2点目を挙げています!!」



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