初めて獣人が発見されてから百年以上。獣人に関する法整備も進み、獣人用の商品を店で見かけることも珍しくなくなった一方で、未だ多くの獣人は研究対象とされていた。
アームリムカーク研究所もその例に漏れず、世界最高の権威とされるこの研究所で、ホルスは警備員兼飼育係として働いている。
次第にユキヒョウの獣人と親しくなったホルスは、ある事件をきっかけに彼――人語を巧みに操り木の実や果物を好んで食べる白銀色の毛に花柄模様の斑点が美しい獣人の少年――トドゥルユルを研究所から逃がそうと決意するが――。
以前『オー、ブラザーズ!』を拝読したときにも思ったのですが、この作者様の作品に触れているとどことなく海外文学の雰囲気が、しかもイギリスよりはアメリカ文学のような雰囲気が漂っていて、大自然の中で身体一つで生き抜かねばならない過酷さだったり、あるいは人間社会の中にあっても精神的な支配からの自由や解放だったり。映像的でありながら文学的でもある本作では、獣人が存在することによってかえって人間とはどんな存在か、自然と浮き彫りになっているように思いました。
きっと書こうと思えば純文学寄りの作品もエンタメ寄りの作品も書けてしまう方なんだろうなと個人的には思っているのですが、そこは作者さまの力量というのか、ヘビーな内容を扱いながらもしっかりと読み応えのあるエンターテインメントとして昇華させていて、キャラクターたちが能動的に動き回るにつれ、ストーリーはハラハラドキドキ、急上昇的に加速していきます。緊張感溢れるバトルシーンなんてもう手汗がヤバい(語彙力笑)。
一方で、人の(あるいは獣人の)弱さも悪意も否定せずにそっと眼差しを向けている。けして押しつけるわけではないのになぜか自然と物語として浮き上がってくる。そんな本作はけして明るいばかりの内容ではありませんが、心のどこかで燻っていた何か、長い間掬いきれずにいた何かを間接的に照らしてくれるような優しさがありました。
素敵な作品をありがとうございました🌸