【200PV突破!】キマイラエクリプス
なおタロ
第1章 最愛の兄 編
第1話 平和な日常
───この小説はフィクションです。───
───暫くは、アレンの幼少期の旅が続きます。手っ取り早く成長した姿をみたい方は『第8話 運命の転換期』からご覧下さい───
それはアレンの中の遠い記憶。
顔も覚えていない。母と父の記憶だ。
「あなたが大きくなっていく姿をずっと見ていたかった」
母は、涙を流して幼いアレンを抱き上げると涙を流した。
「すまない…」
父は、絞り出すように言葉をはき出すと母の上に覆い被さるように抱きついた。
だが、物心もつかないアレンにとってそれがどういう状況なのか理解は出来ず、ただ黙って母を見つめていた。
そして、そのまま母と父から引きはがされたアレンは、少年に抱き上げられると両親の方に手を伸ばし大声で泣いた。
そんなアレンを見ても少年は一度も足を止めることはなかく、ただ一層アレンを強く抱きしめると瞳いっぱいに涙を溜めてただ小さな声で
「リーシャ様、アイド様…」
アレンの泣き声でかき消されたその言葉は少年の心を強く引き裂いた。今すぐ、振り返ってしまいたい、そんな衝動を抑え少年は暗い闇夜を走り続けるのだった。
一体どれほど走ったのか、足からは血が滲み痛みも感じなくなってきた頃、少年は近くの村へと辿り着いた。気づくとアレンは泣き止んでいて静寂が流れる満月の下、少年はひっそりと抜け殻のように地面に倒れ落ちた。
日が登り始めても少年は一向に目を覚ます気配は無い。
すると、村の中から
「おい、誰か倒れているぞ!!」
「子供…?…!赤ん坊もいるぞ!!」
村の人々は倒れる二人に手厚く看病施した。
薄れた意識の中、そんな村人達に掠れる声で礼を言った少年。
だが、村人達は首を横に振りただ笑顔で笑った。
それがこの村、リング村との出会いだ。
盆地に位置するこの村は、人口が少なく閉鎖的だ。だが、そのかいあってか村のみんなは家族の様に仲がいい。みんなお互いを助けて、助けられての生活を送っていたのだ。
そんなリング村でアレンとかつての少年、ウィルは牛の飼育を任され、生計を立てていた。
「アレン!牛たちに餌をやってくれないか?」
ウィルは、目が優しくていつも笑ったような顔をしている。髪型は、前髪を真ん中で分けていて、綺麗な黒髪をしている。そして、見た目がすごく色っぽくてカッコいいから密かに村の女の子たちの間でモテているらしい。
「わかった!!」
それに対してアレンは白髪をしている。だからウィルとアレンが本当の兄弟でないことはこの村では周知の事実だ。眼帯をしているのは、目が見えないわけじゃない。でもアレンの左目はみんなから見るとちょっと変に見られるかもしれないからと物心ついたころからつけている。
アレンは牛小屋にわらを敷いていくと、牛たちは待ってましたと言わんばかりにかぶりついた。
その後は水替えやら、小屋の掃除やらで一日の時間はあっという間に過ぎてしまう。だが、そんな忙しい日常の中でもアレンとウィルは毎日日課にしていることがあった。
「アレン、精霊力が落ちているよ」
今やっているのは、アレンの中にある精霊力と魔力を混合させた力を実体化させる訓練。これが意外と難しくて難儀している。
この世界には、精霊力、そして、魔力というものが存在する。アレンはこれを実体化させる訓練をしているわけだが、こんなものは普段の生活には何の役にもたたない。本来、魔力と精霊力は魔法に使われる。なんでこんなことをさせられているのか、よくわからないが、七歳を過ぎたころからこんなことばかりをさせられている。
「アレン、このことは誰にも言っちゃあダメだ」
これはウィルの口癖で、アレンが魔法の訓練をしていることは誰にも言ってはいけないらしい。
でもウィルが言うことはいつも正しいし、村の人たちはこんなアレンたちにも偏見の目を向けることはなかったので、アレンは何も疑うことなくウィルの言うことを聞いていた。
だが、そんな平和な日常も長くは続かなかった。
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