「宅配でーす」

　ピンポーンというチャイムの音とともに、玄関先から声がする。

　オートロックとは無縁のオンボロハイツ、宅配も勧誘も玄関まで直通だ。って言うか、最近注文したものなんて、あったっけ……？　そんな思いでドアを開けた。

「海外からのお届けものですね。斉藤さんでお間違いなければ、サインは結構です！」

　ああ、あの時買ったアレか——

　大きな段ボール箱を受け取ると、配達員は笑顔で礼を言い、階段を軽やかに降りていった。昔に比べ、配達員の愛想はよくなったものだ。

『RC-AVATAR（リアル コピー アバター）』

　確かそんな商品名だったと思う。

　注文してから、二ヶ月は経っていると思う。面白い商品は無いだろうかと、中国のオンラインモールを漁っていた時に見つけたものだ。ブランド不明のスマートウォッチなどに混じって、ポツンと一点だけ販売されていた商品だ。

　キャッチコピーは、「ワンタッチで、もう一人の貴方を作ろう！」というもの。

　日本円にして４万円程だったと思う。未だかつて無いほどにFX（外国為替証拠金取引）で大勝し、その勢いで買ってしまったものだ。そうでも無けりや、こんなグッズに手を出したりはしない。

　だが、段ボール箱を開封して驚いた。商品が入っているケースがとても立派だったからだ。質感、光沢、デザイン、どれを取っても申し分無い。思わず「おお！」と声を上げてしまった程だ。

　ケースを開けると、マットな光沢を放つ真っ白な人形が出てきた。

　サイズは６０cmくらいだろうか、手に取ってみるとズッシリと重い。裏返してみると、背中部分に指紋認証リーダーらしきものがついている。深く考える事無く、人差し指を当ててみた。

　『ピピッ』という甲高い電子音が聞こえた直後、人形は重さを増し、手から滑り落ちてしまった。床に落ちた人形は仰向けに転がり、グングンと大きくなっていく。驚きのあまり、思わず後ずさってしまう程にだ。

　そして人形の拡大が止まると、今度は体のパーツが少しずつ形成され始めた。鼻や性器の部分が盛り上がり始め、目の辺りはくぼみ始める。白いボディは徐々に肌の色味を帯び、頭髪や体毛が生えだした。

　こ、これは……間違いなく……

　俺だ……