第20話 初めてのダンジョン(1)

 ダンジョンに行くためには様々な装備品が必要だ。僕達は放課後に商店街の武具屋や雑貨屋に買い出しに行くことにした。



「まずはライトね。」



 ダンジョンの中は真っ暗だ。だから灯りを持っていくのだが、魔石を利用した魔道具がある。魔力を流せば明るくなる仕組みだ。灯りは一人一つ買った。その次はテントだ。テントは2人用と3人用を購入した。軽くて折りたためるので、ものすごく便利だ。そして干し肉のような食料だ。なるべく日持ちするものがいい。



「結構買ったな~。」



 するとマリアが言ってきた。



「この荷物って当然男性が持つのよね?」


「ああ、大丈夫さ。マイケルは力がないから無理かもしれないが、アスラと俺でしっかり運ぶさ。」


「シュバルツ!酷いよ!僕だって荷物ぐらい持てるから!」


「じゃあ、これを持てるか?」



 シュバルツが買ったばかりのテントと食料を渡した。



ドサッ



「ほら見ろ!無理だろ。」


「マイケル!君はこの食料を持ってくれ。テントや他の物は僕とシュバルツで持つから。」


「わかったよ。」



 マリアとシャリーは、僕達が知らないところで香水を買ったようだ。そして、いよいよ宿泊演習の日がやってきた。渡されたガイドブックによると、1階層と2階層は昆虫系の魔物、3階層と4階層は小動物系の魔物、5階層はゴブリンがいるらしい。僕がいるからかもしれないが、僕達のグループが1番最初にダンジョンに入っていくことになった。ガイドブックにはダンジョン内の地図も書かれているので、それを見ながら歩いていく。



「マリア!あんまりくっついてくるなよ!」


「だって~、虫の魔物なんでしょ?気持ち悪いじゃない。」


「大丈夫だから。出てきたら剣で斬っちゃえばいいんだから!」



 魔物の習性かもしれないが、一番嫌がりそうな人間のところに集まる。マリアの前に大きな蛾のようなものが飛んできた。



「キャー」



 シュバルツが一刀両断した。討伐された魔物は光の粒子になって消えてしまった。



「ありがとう。シュバルツ!」



 今度は上から大きな蜘蛛の魔物だ。

 

 

「マイケル!上だ!」


「うん!」



 マイケルがジャンプして蜘蛛の魔物を斬った。



「この程度の魔物なら余裕だね。」



 しばらく歩いていると草原に出た。歩き疲れたので座って休んでいると、バッタの魔物がこちらに向かって飛んできた。



「おい!キングホッパーだ!群れで来るぞ!」


「マリア!シャリー!剣を抜いて僕達の後ろに隠れて!」



4人は剣を抜いて身構えた。だが、キングホッパーは予想外の行動に出た。僕達を取り囲むように襲ってきたのだ。次々と斬っていく。だが、マリアだけは斬るというよりも、怖くて叩き落していると言った方がいいようだ。



「終わったようね。」


「マリア!剣は叩くんじゃなくて斬るんだぞ!」


「わかってるわよ!シュバルツはいちいち煩いんだから!アスラ~!何とか言ってよ!」


「まあまあ、ちょっと休もうか。」


「賛成!僕も疲れたよ!」



 僕達は草原地帯の岩場に腰掛けた。持ってきた水を少しずつ飲んでいく。しばらく休んで再び歩き始めた。草原地帯がまだまだ続くようだ。真っ暗だと思って魔石の明かりを持ってきたが、意外にもダンジョン内はうっすら明るい状態だった。何かを踏んだ感触があったので、足元を見てみるとたくさんの芋虫がいた。



「キャー」



 これにはシャリーも悲鳴をあげた。



「私、芋虫苦手!何とかして!」



 僕とシュバルツとマイケルで次々と踏みつぶしていく。



グシャ グシャ グニュ



「もう大丈夫だよ。」


「ありがとう。」



 マリアは僕の袖を引っ張っているし、シャリーはマイケルの袖を引っ張っている。自由に動けるのはシュバルツだけだ。そのまま、全員でぞろぞろと歩いていく。どのくらい歩いただろうか。ダンジョンの中だと時間の経過がよくわからない。2階層に続く階段が見えてきた。



「今日はこの辺で寝ようか。」


「賛成!」


「シュバルツ!マイケル!交代で見張りをしようか?」


「ああ。」



 マリアとシャリーには休んでもらって、僕達が3人で交代で見張りをすることになった。テントを作り終わると、女子2人がそわそわし始めた。



「マリアもシャリーもそんなにそわそわしてどうしたんだ?」



 するとシュバルツが教えてくれた。



「トイレだろ?どうせ。」


「もう~!シュバルツ、最低!無神経すぎるわよ!」


「だって本当のことだろ?」


「もういい!」



 魔法で転移するわけにもいかない。



「魔物が来ないように、僕達がここで見てるよ。」


「わかったわよ!絶対に見ないでね!これは王女としての命令だからね!」


「はいはい。わかりました~。」



 その後はすっきりしたのか、女性達の機嫌も直って簡単な食事をした。



「悪いわね。男達にだけ見張りをさせて。」


「大丈夫だよ。ねっ!シュバルツ!マイケル!」


「ああ、大丈夫だ。早く寝ろよ!」

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