第28話 神様との、ふたりごと


「――――ちょっと、いずみちゃん。やり過ぎじゃない?」


 倒れているお狐様の元まで歩いて行くと、紅葉が声をかけてきた。珍しく乱れた髪が、彼女の闘いの激戦っぷりを物語っている。


「…………本当ですよ。危うく鼓膜こまくが破れるところでした」


 一方、青葉はいつもと変わらない美しさで、いずみを迎えてくれた。しかし、いずみは知っている。彼女は限界を遥かに超えて、疲れ切っているのだ。その証拠に青葉は、いずみが駆け抜けて出来た大きな亀裂に向かって話し掛けている。


「ふふっ青葉ちゃん。私はこっちだよ?」


 いずみに声をかけられても、青葉はまだポーっと目を泳がせていた。



「お―――い!みなさ~ん!」


 そこに息を切らした桜と、あの子が飛び込んできた。二人に抱きつかれて、いずみは地面に尻もちをついてしまう。


「いずみさん!すっごいヒーローっぷりでしたよ!」


「イタタ……! あははっ!桜ちゃんが創ってくれたこのヒーロースーツに感謝だね。おかげさまで、最後に最高の走りが出来たもん!」


「…………最後?いずみさん、最後ってなぁに?」


 すると今度は、キョトンとした顔の桜を押しのけて、あの子がいずみの顔を全力で舐め始めた。


「ふふふっ、そんなに舐められたら、くすぐったいよ!」


 そんな風に、二人と一匹がじゃれ合っている時だ。倒れているお狐様の様子を確認していた紅葉から、声を掛けられた。


「―――みんな来て。お狐様が、お呼びになっておられるわ」


 慌ててお狐様の元まで走っていくと、狐のお面が外れて、その美しい顔があらわわになっている。うっすらと目を開けたお狐様はみんなの姿をゆっくりと見つめた後で、私は負けたんですね―――と、言った。


「もうすぐ、ここに――― 私のお仕えしているお方が来られます。全ては、そのお方のご判断に委ねます」


  ―――そしてその姿は、ゆっくりと消えていった。



「…………この夢の中から、出ていかれるんだわ」


「うん、あの神社に戻るのかな?」


「きっと、そうかもね……」


 そして、お狐様の体が消えた直ぐ後のこと。辺りの全てが、優しく包み込む様な温かい雰囲気に変わった。





『―――――なんじゃ、ふみを読んで急いで駆けつけてみれば、もう喧嘩けんかしまいいか?』




 そして―――


 その声がしたと同時に、世界は薄い紫色の光に飲み込まれていった。




 ✿✿✿★✿★✿★✿★✿★✿✿✿




 気が付くといずみは、薄い紫色の世界に立っていた。


 周りを見回してみても何もなく、誰もいない。


 ――――ただ、一面が優しい紫色の光に包まれ美し過ぎる世界。




『…………目が覚めたようじゃな。いましと、少し話がしたくてな、此処ここに来てもらったんじゃ』


「ひゃあ!なになに?だ、だ、だ、だれ?だれなの―――?」


 急に頭の中に女性の声が聞こえてきて、いずみは驚いて周りを見回した。しかし、幾ら見回しても誰の姿も見当たらない。


『ふふっ驚かせて、すまん。我は宇迦之御魂神うたのみたまおおかみと、申す者だ』


「う、うた?………うたのなぁに?」


『ふふっ長い名前ですまん。まあ、平たく言えば――いましたちが言う神じゃな』


「はえ!?か、神様なんですか!?女神さま!?」


『ふふっ、そうじゃ――ところで、いましは名を何と申すのじゃ?」


「わ、私!? 私は金森かなもりいずみっていいます!」


『そうか、いずみか………よい名じゃな。


 ―――ところで、いずみ。我は、いずみに謝らなくれはならん。今回、我の手の者が、大変に迷惑を掛けたようじゃ。いましの寝ている間に、彼奴あやつから詳しい事情を聞いた。取り返しのつかないことを、彼奴あやつはいずみにしてしもうたようじゃな。彼奴あやつに変わって謝らせてほしい。


 ―――本当に、すまんことをした』


 頭の中の女神さまは、いずみにしきりに謝ってきた。それが何のことを言っているのか、いずみには思い当たることがあった。


「…………やっぱり私の足、もう動かないんですね?」


 いずみは、桜の夢の中に来てしまう前の出来事をハッキリと覚えていた。


 それは、あの子と一緒に紅葉と青葉の家である輝命寺こうめいじに向かっている途中の出来事だった。突然現れた車からあの子をかばって、いずみは車と壁の間に両足を挟まれたのだ。


 ―――――そして気が付くと、いずみはあの子と一緒に、真っ青な空と真っ白な百合ゆりの花が広がる不思議な世界に立っていた。



 そこが桜の夢の中だと知ったのは、桜達とその世界で出会った後だった。










 ☆あとがき☆


 こんにちわ!🌞、こんばんわ!🌙

 今日もこの物語のページを開いて下さり、本当に本当にありがとうございます!  

 そして――!たっくさんの応援を、いつもありがとう!


 引き続きの応援―――どうぞ、よろしくお願いいたします。(*_ _)ペコリ



 前話からの続き――――激闘の末、お狐様との戦いに勝利したヒーローたち。そして勝利に沸き立つ桜達の前に、お狐様の主である女神――「宇迦之御魂神うたのみたまおおかみ」が降臨する。

 

 気が付くと、いずみは紫色の世界に立っていた。そして頭の中に響く、優しい女性の声。いずみと女神さまの、が始まった。




 女神さま、キタ――――――っ!!

 Σ(゚Д゚)

 

 お狐様のあるじ、うたの……何たらいう女神さまが遂に来ちゃったよ!

 (≧◇≦)💦


 そして会話をし始めた、我らがヒーロー「サニーイエロー」こと、いずみちゃんと女神さま。こ、これは………気になるね。


 ふっ二人には申し訳ないけれど、読者の皆様と一緒に二人の会話を、こっそ―っと聞かせてもらおうかな?💦



 ――――え?


 いずみちゃんの足が、もう動かないって……どういう…………?





 ☆と💗そして――作品とわたくし虹うた🌈のフォローで応援を、どうぞよろしくお願い致します。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る