極めて隠喩的物語、かと思いましたが、これは……


鳩と呼ばれる能力を持った人間たち、通常であれば二度と戻ってこられない森、そして人々を縛る不可思議なルール……極めて隠喩的、ついつい深読みしたくなる要素盛沢山な物語です。

特に序盤は、それにより起因するどこか湿気った居心地の悪さや、真相を知りたいという好奇心がページをめくる推進力に化ける怪作です。

個人的には『新世界より』を思い出させる湿度や雰囲気で、特筆すべきものがあると感じました。

しかしながら、ただ雰囲気で押すのかと思えばそうではなく、物語の本質や主張は極めてシンプルで、ヒロインが男の子と結ばれたい、ただこれ一つです。

そんな彼女が不気味で暗い、怪しげな世界観をスパッと割って突き進み、牽引していきます。まるでジブリヒロインのようです。

ただ独特なだけでなく、ヒロインのある種執着とも呼べる『あかるさ』も本作の注目といえるでしょう。

ともすれば怪しげな世界観と、それすら吹き飛ばして邁進するヒロインの力強さ。このページを訪れたのならば、ぜひともこの作品の森へ飛び込んでいただきたいものです。

……ところでまだ何も知らない純粋無垢な少年をかどわかしめくるめく新世界へ連れていく年上お姉さんの森はどこへ行ってしまったのでしょう? キャッチコピーにはそんなことが書いてあった気がするのですが……森の中?

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