第25話 ラメアイシャドウの試作スタート
妖精王からピクシーダストを分けてもらったことで、ラメ入りコスメを作る材料が揃った。翌日からさっそく試作に取り掛かる。
「とびっきり可愛いコスメを作るぞ!」
白いエプロンを身に着けた陽葵は、やる気に満ち溢れていた。その隣で、ティナもの準備を始めている。
「貴重な材料だから失敗しないように気を付けろよ」
「もちろん! 最初にアイシャドウの色を決めてから、ピクシーダストを加えていこうと思っているよ」
「ああ、それがいいな」
ちなみに今日の試作品作りには、陽葵とティナ以外のメンバーは参加していない。どんなコスメが入っているかは、発売日までのお楽しみにするためだ。
「アイシャドウの色は、ブラウン、アイボリー、シャンパンゴールド、ピンクの四色にしようと思うんだ。定番のカラーだから普段使いもしやすいだろうし、使い方次第で可愛い印象にも大人っぽい印象にも仕上がるんだよ」
アイシャドウの色については、洞窟で迷子になった際に考えていた。アイボリー×ピンクでふんわり可愛く仕上げても良いし、ブラウン×シャンパンゴールドでシックで大人っぽく仕上げても素敵だ。そこにラメが加われば、華やかになること間違いなし。
「配色はそれで良さそうだな。使い方次第でイメージが変わるなら、説明書もあった方がいいだろうな」
「ああ、確かに!」
陽葵の頭の中では、色の組み合わせ方のイメージが付いているが、他の人はそうではない。説明があったほうが親切だろう。
「さすがティナちゃん! お客さんのことを考えているね」
「いつぞやの社交界のように、化け物集団を生み出したら大変だからな」
ティナは肩を竦めながら苦笑いを浮かべる。いつぞやの社交界というのは、メイクレッスンの相談を受けた時のことだろう。あの時は令嬢たちの顔はすさまじかった。あの悲劇をまた起こしてはいけない。
「ビューティーコフレの中に、メイクガイドの冊子も入れておこうか。ラメ入りアイシャドウの使い方だけじゃなくて、メイクレッスンで教えたようなワンポイントアドバイスも載せたら喜んでもらえるかも!」
「メイクガイド……それだけでも価値がありそうだな」
ティナは、ごくりと生唾をのむ。もしかしたら冊子単体でも販売しようと目論んでいるのかもしれない。
「準備するものが多くて大変になっちゃうけど、サリヴァン様のお店に負けない商品を作るために頑張ろうね!」
「ああ、そうだな。あいつの店には負けたくない」
サリヴァンの名前を出すと、ティナの瞳に炎が宿る。よっぽど対抗意識を燃やしているのだろう。
方向性が固まったところで、さっそくアイシャドウで使うカラーサンドの色の調合を始めた。赤と白のカラーサンドを混ぜ合わせ、淡いピンクに調整していく。匙で少量ずつ追加しながら目的の色に近付けた。
陽葵の隣では、ティナがブラウン系のカラーの調合をしている。その瞳は真剣そのもの。邪魔をしないように、お口にチャックをしながら作業を続けた。
四色の調合が終わったら、ピクシーダストの出番だ。
「ピクシーダストってさ、見る角度や光の当たり具合によって発色が変わるんだね」
ビーカーに入ったピクシーダストは、シルバーに輝く時もあれば、青や緑に見えることもある。もとの世界でいう偏光パールのようなものなのかもしれない。まじまじと見ていると、ティナが補足をしてくれた。
「昼と夜でも見え方が違うから、コスメの原料として使うのは面白いかもな」
「たしかにそれは面白いかも!」
昼は明るく華やかに輝き、夜はしっとりと輝く。そんなギャップがあるのも面白そうだ。
「それじゃあアイシャドウにピクシーダストを加えていこう」
匙でピクシーダストを取り出して、調合したカラーサンドに加えていく。淡いピンクのアイシャドウにピクシーダストが加わると、きらりと輝きが生まれた。
「このくらいで良いかな。まずは手元で試してみよう」
ピンクの粉を少量とって、手の甲に塗っていく。すると、花が咲いたような淡いピンクに発色した。その中に、シルバーのラメがキラキラと輝いている。
「光にかざしたらどうなるんだろう?」
窓辺に近付いて発色を確かめると、ラメの一部がゴールドに輝いた。
「わあ! 単体のピンクより華やかだね! 角度を変えるとオレンジに見える」
「ブラウンも良い感じだぞ。所々でシルバーに輝いている」
「ホントだぁ!」
お互い手元の色を見せ合いながら盛り上がる。通常品のアイシャドウよりも華やかに仕上げるという作戦は成功だ。
「この調子で他の色にもピクシーダストを加えてみよう!」
アイボリーとシャンパンゴールドのカラーにも、ピクシーダストを加えていく。四色すべてに加えた後は、ホホバオイルと純度を高めたエタノールを加えて混ぜ合わせた。よく混ぜてからは、金皿に入れてプレス機で固める作業に移った。
「プレス機のスイッチを押すよ」
ぽちっとスイッチを押すと、板が垂直に降りて来て、粉体がぎゅっと圧縮された。
「良い感じだね。あとはアイシャドウを乾燥させれば完成だ」
「魔法で乾燥させればいいのか?」
「うん、お願い!」
通常は、1~2日程度置いて乾燥させるところをティナの魔法に頼って時間短縮した。カラカラになったパウダーを、パレットに入れれば完成だ。
「うん! いいんじゃないかな!」
完成したラメ入りのアイシャドウを前にして、陽葵は誇らしげに微笑む。ぱかっとパレットを開いた瞬間、ラメが輝くのがとても可愛い。開けた瞬間から心ときめくコスメだ。
隣でパレットを覗き込むティナも、目を輝かせながら頷いている。
「華やかさもあるし、勇者召喚祭にはちょうどいいな」
ティナからのお墨付きをもらったところで、アイシャドウは完成だ。後は、品質チェックをクリアすれば製品化できる。
「アイシャドウの試作を終わったことだし、この調子でラメ入りリップも作っていこう!」
「ああ、そうだな」
勇者召喚祭まで日数がない。二人は次の試作品作りに移った。
◇
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