主人公の高級娼婦は、読み手すらも心地よい罪の楽園に誘う
- ★★★ Excellent!!!
女は複数の顔を持つ、というが、この物語の主人公・ヌイヴェルは高級娼婦であり、男爵夫人であり、魔女でもあり、その時々でふさわしい顔を見せている人物である。彼女の娼館を訪れる様々な客たちに楽園のひとときを味わってもらうために高い知性をそなえている。
そんな彼女は、長年のなじみ客の死に際して相続問題に巻き込まれる。亡くなった伯爵が、ヌイヴェルに遺産の半分を遺すという遺言書を書いていたからだ。相続人たちは当然激怒するが、ヌイヴェルは怯まない。それどころか、相続人たちの醜悪さ、犯した罪を逆手に取って鮮やかに対処していく。
感想:物語はヌイヴェルの一人称の語りで紡がれるが、その語り口が上品でありながら、妖艶さもあり、たまにかわいいところも覗いていて心地よい。
娼婦であるために時には生々しい性の事を述べることもあるが、不思議と彼女の表現は気品がある。美貌と才知と魔術で、陰謀渦巻く社交界を鮮やかに乗り越える様は読むものを心地よくしてくれる。まさに彼女は高級娼婦である。
オススメです💖