死体に恋しちゃった少女の話。

廉堂文

第1話 二月

私は確かに恋をした。

少女の死体に。


好きになったばかりのキミにそっと口付ける。

キミの死因は知らないし、これから私がどうなるかも分からない。

名前も知らないキミは、私の初恋。

ただそれだけが分かる。


昔から、他人の「恋」に疑問を抱いていた。

何故ソレを愛おしい思うのか、何故ソレに温もりを感じるのか。

分からなかった。

信じられなかった。

だけど、私にもちゃんとあったんだ。

恋する気持ち。

よかった。


キミを抱きしめてみる。

冷たい。

どこかの誰かが言っていた「温もり」はそこには無い。

けど、私の心にはしっかりと「温もり」が感じられる。

笑みが溢れてしまうな。

顔が火照る感覚。

初めて。

この気持ちをどこに置けばいいのか分からない。

キミのこと、どうすればいいんだろう。

ずっとこのまま抱きしめていたいな。

でもきっとそれは許されない。


キミはどうなっちゃうの?


キミを道の端に寄せる。

もう二度と会えないかもしれないけど、忘れないと思う。


これが禁断の恋かぁ。

帰り道の空気は澄んでいて、鋭い寒さが鼻に突き刺さっていたい。


もう二度とこの道は使わない。

ただそう決めた。

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