24 旅に出るのにゃん(最初の強敵との戦い②)

【なっなぜ、スフィア様がお目覚めに!

 私の催眠術はそう簡単には解けないはず!】


「これ以上、二人を傷つけないで!」


「スフィア!」


「スフィアさん…」


「サリーちゃん!」


サリーが完全に気を失った。


「スフィア、回復を頼むにゃん!」


「うん、任せて!」


【させませんよ、もう一度眠ってもらいます!】


「もう効かないよ!」


だがしかしスフィアはその催眠術を気合で弾き飛ばした。


【そっそんな、私の催眠術を気合だけで…?】


「今、回復してあげるからね、サリーさん。」


スフィアはサリーの背中に手を当てて、傷という傷を全て回復した。


「これでだいじょうぶだと思う、直に目覚めるはずだよ。」


「ありがとうにゃ、スフィア…」


「次はニーナお姉さんの番だよ。」


【スフィア様!人間を回復するなんて、魔族の恥です!止めてください!】


「止めない…ニーナお姉さんは私の大事な人だもん…」 


「スフィア…」


【まっまさか…スフィア様…大事な人って…?】


「そういう意味だよ。」


「何の意味にゃん…?」


「もう、お姉さんったら…」


【私はこんなにあなた慕っているというのに

 それを踏み躙るというのですね…】


「あなたは私の大切なニーナお姉さんとサリーさんを傷つけた…あなたとなんか自分の国に帰りたくない、私は二人に送ってもらって国に帰るの。」


「スフィア…」


【もういい…】


「ぐぁっ!!」


「スフィア!!」


エルナ少尉は片手でスフィアの首を締めた!


【私を愛さず人間を愛するあなたなんていらない、このまま…このまま、殺してやる!!】


「あがっ…あがっ…」


「やめてくれにゃん!!」


【そこでおとなしく見ていなさい!

 おまえのせいでスフィア様が命を落とすところをなァァ!】


「この大馬鹿野郎!!」


【何ですって…?】


「スフィアのことを本当に好きなら、スフィア自身の気持ちをもっと理解してあげるべきだにゃん!

それなのにあなたは自分の気持ちを押し付けてばかりだにゃん!だから大馬鹿野郎にゃん!」


【おまえに何がわかるんだ?】


「私は少なからずあなたよりはスフィアのことを理解しているつもりだにゃん!」


【目障りだ、やっぱりおまえから殺す…】


エルナ少尉がスフィアを離して、ニーナに近づいた。


「ハァハァ…二ーナ…お姉さん…」


「スフィア!」


【おまえはただじゃ殺さない、この刀で刺して、刺して、刺しまくって、苦しみを与えながら殺してやる…】


(駄目だ、いくら動こうとしても体が言うことを聞かないにゃん…)


【さて、最初はどこから刺してやろうか?】


「やめて…ニーナお姉さんを傷つけないで…」


【やめませんわ!ご覧になるといいです、あなたの大事な人が苦しむ様を!】


「ぐっ!」


「やめて!!」


『させません!』


【えっ…?ガハァ…】


サリーに背中を刺されたエルナ少尉はそのまま倒れた。


「間に合いましたね…」


「サリーちゃん!」 

「サリーさん!」


「二人とも目覚めるのが遅れてすみませんでした…」


「そんなことないよ。」


「本当に助かったにゃ、ありがとう…」


「私は何も…」


「スフィア、絞められてたけど首は痛くないかにゃ…?」


「平気だよ。今、ニーナお姉さんを回復するから。」


「ありがとうにゃ…」


スフィアはニーナの傷を回復した。


「体が動くようになったにゃん、痛みもない。」


「よかった。」


【ガハァ…ゴハッ…油断しちゃってたわ…あなた達の勝ちね…】


「なっ!?」


「急所に当てたのにまだ生きてたんですね…?」


【これでも…魔族だからね…でもあと少しの命よ…】


「回復しようか…?」


「スフィアさん、何を考えてるんですが!

 私達の命を狙ってきた奴ですよ!

 助けてやる義理なんかありません!」


「そっそうだけど…」


「私も回復してあげていいと思うにゃん。」


「ニーナさんまで!」 


「何だか、可哀想に思えてきたの…」


「そうだにゃ、好きな気持ちが行き過ぎた、ただそれだけのことにゃん…」


「お二人がそこまで言うなら…」


【ハッハハッ…人間ごときに…哀れまれるようじゃ…魔族失格ね… でも回復しても無駄よ…間に合わないわ…】


「そうなのかにゃ…?」


【スフィア様も…記憶喪失とはいえ…優しくなられてしまったし…

 そんなスフィア様なんて…好きじゃありません…】


「記憶喪失前の私を知ってるの…?」


【ええ…以前のあなたは…幼くも冷徹非道…皆から恐れられる存在で…とても素敵でした…】


「それが前の私…」


【でも今のスフィア様も…素敵ですよ…】


「本当…?」


【何度も言いますが…そんなスフィア様は…好きじゃありませんけどね…ハッハハ…ガハァ…ゴハッ…】


「でもありがとう…」


「よかったにゃんね…」


【人間のお二人…スフィア様を無事に…魔の国まで届けてくださいね…】


「言われなくても、そのつもりだにゃん。」


「自分もです。」


【そうですか…ハッハハ…】


エルナ少尉は笑顔で息絶えた。


「このまま放置するのは可哀想だから…土に埋めてあげたいな…」


「そうですね…そうしてあげましょう…」


「ごめんにゃ…痛い思いさせて…」 


ニーナはエルナ少尉の頭を撫でてあげた。


「ニーナさん…」

「ニーナお姉さん…」


そして土に埋めてあげると、手を合わせて、3人は歩き出した。


「ここから本当の試練です、心して魔の国を目指して行きしょう。」


「そうだにゃ、気合い入れるにゃん。」


「うん。」

(ありがとう、もう一人の私…あなたが協力してくれたから、催眠術に耐えられた…)

 

《感謝はいらないよ、いずれ君が自分のすべての記憶と眠っている力を開放したら、"ある者"と戦ってもらわなきゃならないんだから、君だってその人物ぐらいには心当たりがあるんじゃない?》


(・・・・・あるよ…)


《やっぱりね。》


(その時になったら…戦うから…)


《そっか、それを聞いて安心したよ、それじゃ。》


「スフィア、どうたにゃん?」


「何でもない。」


スフィアはニーナの手を握り、そして願った、この手が私の〇〇を止めてくれることを…


「絶対に離さない…」

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