22 旅に出るのにゃん(地下通路を行く編②)

「ニーナさん、スフィアさん、ここから先は明かりがランプだけになるので、足元に気をつけて付いてきてくださいね?」


「わかったにゃん。」


「うっうん…私も…」


「それじゃあ、進みますね…」


サリーを先頭に地下通路を歩き出した。


「それにしても入り口はそんなに広くないのに

 地下通路の中はこんなに広いにゃんね…?」 


「ええ、私も小さい頃、初めてここに来た時は驚いた記憶があります。」


「その時はサリーさん、アンナちゃんと一緒に来たんだったんだよね?」


「そっそうです…」


「よかったらその時のこと聞かせてくれないかにゃん。」


「えっ!」


「私も聞きたい。」


「わかりましたよ…でも二人とも笑わないでくださいね…?」


「うん…?」


「わかったにゃん…?」


「そっそれじゃあ…アンナちゃんとここを初めて一緒に歩いた時、私は最初、暗いのが恐くて…

 先に進みたくないって、ずっと泣いたんです。」


「そうなのかにゃん…?」


「サリーさんって小さい頃は暗いの駄目だったの…?」


「暗いのが駄目というか…小さい頃は何でもすぐ怯えるぐらい、恐がりで弱虫だったんです。」


「今のサリーちゃんからは想像できないにゃん…?」


「そっそうですか?」


「そりゃそうだにゃん、冒険者の仕事を教えてくれた時から、サリーちゃんといえば強くて恐れない、とっても頼りになる、かっこいいお姉さんって感じの女の子だなって思ってたにゃんも。」


「私も何でも出来る素敵なお姉さんだなって思ってた。」


「そっそんな…私はニーナさんやスフィアさんが思ってるほどの人間じゃありませんよ…」


「じゃあ、サリーさんはいつから恐がりじゃなくなったの?」


「確かに気になるにゃん。」


「それこそきっかけはこの地下通路をアンナちゃんと一緒に制覇したことだったんです…」


「そうなのかにゃん?」


「ええ。」


−今から10年前−


『やっぱり恐いよぉ…引き返そうよ…アンナちゃん…』


『だいじょうぶだよ、行こう!』


『でっでも…』


『怖がってたら、何も出来ないよ?私がついてるから。』


『わかった…行く…』


『うん!』


そして私は怯えながらもアンナちゃんと出口までたどり着いたんです。


『やっやったぁ…出られた…』


『やったね、サリーちゃん!』


アンナは喜びのあまり、強く抱きついた。


『サリーちゃん!?』


『ほらね?だからだいじょうぶって言ったでしょう?』


『そっそうだね…』


『これをきっかけにサリーちゃんは強い子になれるよ、だって恐くてもここまで来れたんだから。』


『サリーちゃん。』


『頑張ろうね?』


『うん、なるよ、私、強い子になる。』


『えらい、えらい。』


『ありがとう…アンナちゃん…』


「幼い頃に両親に先立たれた私にとって、唯一の家族だったお姉ちゃんと親友のアンナちゃんの存在は本当に大きくて、そんなアンナちゃんとの約束したあの日から何でも恐れないで、チャレンジ出来るようになったんです…」


「そうだったのかにゃ。」


「今のサリーさんがあるのはアンナちゃんのおかげなんだね。」



「ええ…でも私は…スフィアちゃんにあんな…」


「サリーさん…?」


「泣いてるのかにゃん…?」


「私は弱いまんまなんです…討伐隊の人達と世界の掟に恐れて、大切な友達のスフィアさんを…拘束しようとするなんて…」


「サリーちゃん…」


「小さい頃の弱虫だった頃と何にも変われてない…駄目だな…私…」


「そんなことないよ!」


「スフィアさん…?」


「サリーさんは自分も危険にさらされるってわかかってて、私のためにここまでしてくれてるんだもん…私は感謝してるんだよ…だから自分を悪く言わないで…?」


「スフィアさん…」


「スフィアの言う通りだにゃん。」


ニーナはサリーを後ろから抱きしめた。


「ニーナさん…?」


「ありがとう、やっぱりサリーちゃんは頼りになるお姉さんだにゃん…」


「二人からそんなこと言われたら…嬉しすぎますよ…」


「ふっふ、あっ、少し光が見えてきたにゃん!

 もしかしてあそこに出口があるにゃか?」


「そうです、もうすぐ出口です。」


「いよいよだにゃん…」


そしてニーナ達は地下通路から無事に町の外に出られた。


「やったぁ。」


「町の外に出られたにゃん。」


「しぃー、静かに。ニーナさん、スフィアさん?

 まだ町の外に出られたというだけですよ?

 ここから早く移動しないと討伐隊の皆さんが来ちゃったら、すべて水の泡になっちゃいます。」


「そっそれもそうだにゃんね…つい嬉しくて忘れてたにゃん…

 ここまで連れてきてくれてありがとうにゃ、サリーちゃん…」


「ありがとう、サリーさん…」


「この御恩は決して、忘れたりは…」


「お二人とも、何を言ってるんですか?

 私も旅に同行しますよ。」


「・・・・・・えっ〜〜!?」


「しぃー、お二人とも何もそこまで驚かれなくても…?」


「だっだって、聞かされてないから驚くに決まってるにゃん!」


「そっそうだよ!」


「あっ、それもそうですよね、考えを伝えるのを忘れてました…」


「じゃあ、最初から私達と一緒に旅してくれるつもりだったのかにゃ…?」


「はい、それが私がスフィアさんに出来る罪滅ぼしだと思っているので…」


「サリーさん…」

「サリーちゃん…」


「私もこの命にかけて、サリーさんが無事に魔の国に行けるように守ります。今更ですが旅に同行してもいいですか…?」


「もちろんだにゃん、心強いにゃん…」


「私のためにそこまで…ありがとう…」


「よかった…これからよろしくお願いします。」


「私達こそ。」


3人は手を重ねて、笑い合った。


「それじゃあ、行くにゃん。」


「はい。」


「うん。」


【待ちなさい。】


「えっ!?」


月に照らされた木の影から現れたのはあのエルナ少尉だった。


「どうしてここがわかったのにゃん!」


「私にもわかりません!」


【あなた方に要はありません、こちらに来てください。スフィア様。】


「えっ!?」


「あなた私を知ってるの…?」


【ええ、それはもう。ですがスフィア様は記憶を忘れられているから、私を覚えていなくても仕方のないことです。】


「にゃにゃ!なんでスフィアが記憶がないのを知ってるにゃん!」


「あなたは一体、何者なのですか!?」


【黙れ、殺すぞ、私は今、スフィア様と話しているんだ。】


ニーナとサリーはゾクッとするぐらい、今までに感じたことのない殺気を感じた!


【さぁ、こんな者たちなど気にしないで。

 私と一緒にいれば安全ですから、こっちに来てください?】


(なんでだろう…この人恐い…)


【さぁ。】


「いっいや!こっちに来ないで!」


【おや、これは記憶がないとはいえ、かなり傷つきますね…

 スフィア様は私よりこの二人を選ぶのですか…?】


「そっそうだよ…?」


【き・さ・ま・らァァァ!!

 よくもよくも、私の大切な、大切な、スフィア様をたぶらかしたなァァ!!許さんぞォォ!!】


エルナ少尉が二人に向かって邪悪なオーラを放った。


「くっ!体が押し潰されそうだにゃん!」


「私もここまで強い力を感じたことがありません!」


(まるであの時のスフィアと同じ感じだにゃん!まさか、こいつ!)


ニーナの読み通り、エルナ少尉の頭からするどい角と背中から黒い羽が現れた!


「あっあの姿はまさか!」


「やっぱりだにゃん!」


「そっその姿…あなた私と同じ魔族だったの…?」


【見ててください、スフィア様!この者たちをぶっ殺して!あなたの心を奪い返してみせますからァァァ!!】


「ニーナさん!どうやら戦うつもりみたいです!

 戦闘態勢をとってください!」


「わかったにゃん!」


ニーナとサリーvsエルナ少尉、果たして戦いはどうなるのか!?


「ニーナお姉さん!サリーお姉さん!」


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