『嘘つきな俺と睡眠姫の催眠商法』は、売り物にならないはずの才能を抱えた主人公ライザが、眠りの力を持つ少女ヒュノと出会い、「信用されない側」から世の中をひっくり返していく物語だ。『全年齢対象(オールフリー)』という希望と、『低用量』という呪いが同居している設定が効いていて、理想を語れば語るほど現実に殴られる。その痛さが、語り口の軽妙さと合わさって、笑いながら読み進めるのに喉の奥が少し苦くなる。
第17話までで特に印象に残ったのは、第7話の露店の場面だ。売れない+1アームリングを前にして、ヒュノが「肩こり」を言い当て、言葉で相手の気持ちをほどいていく。そこから一気に『催眠商法』の看板が点灯し、読者は笑っていいのか、背筋を正すべきか迷わされる。にもかかわらず、決定的に嫌な気分だけで終わらないのは、ヒュノの無邪気さが嘘の方向を「悪意」から遠ざけ、ライザの貧しさと孤独が「切実さ」を残すからだ。稼げてしまった金額が強烈で、成功の眩しさと危うさが同じ光で照らされる。
この先も、嘘が武器になるほど敵も増えるはずだが、ここまでの流れは、ライザの嘘が他人を踏むためではなく「眠れる場所」を守るために形を変えていく手触りがある。掛け合いはテンポが良く、世界の不穏さが少しずつ滲む入れ方も上手い。続きを追うほど、タイトルの『嘘つき』がどんな意味に落ち着くのか見届けたくなる。