第42話
浅井side
月島先生の退院日が土曜日で学校が休みという事もあり、俺が病院まで迎えに行くと言ったが、月島先生に断られてしまい俺はベッドの上で仰向けになり、退院した月島先生からの連絡を大人しく待つ。
待てど暮らせど月島先生からの連絡はなく、時間が過ぎてくばかり。
我慢の限界が来た俺が電話を掛けようとしたその時、スマホが着信を知らせ慌ててスマホを見るとそれは今の担任からだった。
なんだよ…休みの日に面倒くせぇなと思いながら俺は担任からの着信をとると、その内容は退学処分の話し合いが取り下げられたという報告だった。
俺たちが乱闘騒ぎを起こしてからというもの、反省したはずの過去の俺たちの悪事まで引っ張り出され、学園のためにも退学させるべきだと話し合いが続けられていた。
俺たちは教頭や新しく赴任してきた担任と何度も話し合いを繰り返し、教頭と担任が必死になって俺たちの肩をどんなに持っても、話し合いはいい方向にはいかなかった。
はじめはその原因は俺たちの日頃の行いのせいだろな…なんて思っていたがある日、ププが教頭と担任の話を聞いてしまい、それは親がこの学園に多くの金を寄付をしている佐々木の仕業だという事を知り俺は思った。
佐々木はもしかしたら俺と月島先生の関係に気付いているのかもしれないと。
それから俺は自分のせいでクラス全員を巻き込んでしまった事を悔やみ、毎日のようにお見舞いに行っている月島先生にも相談することが出来なかった。
俺はともかく…他の奴らだけの退学は何としても防がないと…。
そう思っていた俺は昨日の放課後、職員室にいるはずの佐々木の元を訪れていた。
するとそこには予想通り、次の日の授業の準備をしている佐々木がいた。
凸「佐々木先生…お話があります。」
俺がそう言うと佐々木はチラッと俺を見て無言のまま立ち上がり、職員室を出ると歩き出す。
俺は佐々木の背中に付いていくと奴は理科室の扉を開け中へと入り、俺はその背中について入る。
すると、佐々木は扉を閉めてすぐ口を開いた。
S「要件はなんだ?忙しくてね…手短に頼むよ。」
そう言われた俺はグッと歯を食いしばり奴の前で跪いた。
そんな俺の姿を見た奴の口元は微かに笑いながら俺に言った。
S「何のつもりだ?こんな事して。」
凸「俺はいいんで…アイツらのことだけは…どうか…退学にしないで下さい。」
そう言って俺が頭を下げると、奴は笑いながら俺の頭を掴みグイッと床に押しつける。
S「頼み事するには頭が高いんじゃないか?ん?お前は俺に他にも言わなきゃいけないことがあるだろ?」
月島先生に最低な事をしておきながら、偉そうに俺にそう言う佐々木に腹わたが煮え繰り返るが、俺は血の味がするほど下唇をギュと噛み怒りを堪えた。
凸「俺が月島先生に手を出しました…すいませんでした。」
S「そうか…月島先生に手を出したのか…涼は男なのに可愛いくて堪らないよね?イク時にギュッてしがみ付いてきてさ?ホント可愛いくて癖になる。涼はキミにもそうしたのかな?涼のセックスは全て俺が教え込んだセックスなんだよ?尻の青いお前なら涼とのセックスは相当気持ち良かっただろ?」
限界だった。
気づいたら俺は奴に掴みかかり壁に押し付けていた。
佐々木はもがきながら俺の腕を掴もうとし離させようとするがそんな力では俺に敵わない。
もがけばもがく程、頸動脈が圧迫されていき奴の顔色がなくなっていく。
そして、俺は奴の耳元で言った。
凸「生徒だからって舐めんなよ。犯罪者が偉そうな口叩いてんじゃねぇよ。バレてないと思ったら大間違いだからな。もし、万が一クラスの奴らを退学にするような事があったら…お前の人生もお終いだと思え。」
俺は佐々木にそう言うと首から腕を離し、床に座り込み咳き込みながら息を吸い込んでいる奴を見下ろす。
凸「佐々木先生?生徒を指導される前にご自身の生活見直したらいかがですか?教師があんなにも堂々と女子高生と手を繋いでデートするのは如何なものかと?」
俺はそう言い残すと佐々木を置いて理解室を出たのだ。
それが昨日の出来事なので、まさか一晩で俺たちの退学についての話し合いが取り下げられるなんて思ってもみなかった俺は、担任との電話を切ると不思議に思いながら考える。
あの佐々木が俺の言葉に怖気付いたとは考えにくい。
しかし、他の奴らだけでは無く俺の退学の話し合いまでも取り下げられた。
このひと晩で何があったのだろう?
まさか、ほかに何か悪いことでも企んでいるのか!?
そう俺がベッドの上で沸々と考えているとまた、スマホが鳴り響きディスプレイを見ると今度は月島先生からの電話だった。
凸「月島先生!遅いよ…待ちくたびれた。」
凹「ごめんごめん。佐々木先生の所に行って話してきたら…」
たしかに月島先生は佐々木とケジメをつけるために話をするとは言っていたが、まさか退院したその足で奴のところに会いに行くだなんて思ってもみなかった俺は、驚いたのと同時に心配と怒りといういくつもの感情が溢れ出す。
凸「は!?俺そんなこと聞いてない!!なんで1人で行くの!?危ないじゃん!!何もされなかった!?指一本触れられてない!?あぁ~もう何で1人で行くかな~!!」
俺がそうぼやいているとスマホの向こうからは月島先生の笑い声が聞こえてきた。
凸「人が心配してんのに何笑ってんの。」
凹「ううん…どっちが先生か分かんないね?」
月島先生はそう言うとしばらくの間、ケラケラと笑っていてその笑い声を聞いた俺は、少しずつ元の明るい先生に戻ってきてると思ったら少しホッとした。
奴との話のことは元彼との別れ話なので、本当はめちゃくちゃ聞きたくて仕方なかったけど深くどんな話をしたかまでは聞けなかった。
ただなんとなく…?
そこまで聞いてしまったら余裕のない子供だって月島先生に馬鹿にされそうで?
成人にもなったし余裕のある男のフリをしてみただけ。
しかし、奴は俺たちを退学処分にさせようとした張本人なのにも関わらず、俺たちが乱闘騒ぎを起こし、退学処分になるかならないかの瀬戸際まで追い詰められていた事をどうやら月島先生にチクったらしく、月島先生はスマホの向こう側で乱闘騒ぎなんかして怪我でもしならどうすんだーー!!とプンスコと怒っていた。
凹「本当にもう…ちゃんと高校卒業しないと俺付き合わないからね!!」
いつも自分の事を「先生」という月島先生が普通に「俺」と言うたびに、素の表情を見せてくれているみたいで俺は嬉しくなる。
凸「ねぇ…月島先生はさ?もう、俺の先生じゃないじゃん?」
凹「…ん?うん…」
凸「なら俺はなんて呼べばいい?」
俺がそう問いかけると月島先生はん~と言って考え込んでいる。
俺もスマホを耳に当てたまま考えるが、月島先生と呼ぶことに慣れ過ぎていてそれ以外の呼び方が思いつかない。
凹「思いつかないから浅井くんが高校を卒業するまでは先生でいいよ。それまでに考えておく。」
凸「分かった。ホテルはどう?良さそう?しばらくホテルに住むんでしょ?」
凹「うん。綺麗で静かだし良さそう。浅井くん…そんなに心配しなくて大丈夫たからね。」
凸「うん…分かってる…だけどなんかあったらすぐに連絡して…ね?」
凹「うん。分かった。」
凸「先生あのさ…」
凹「ん?どうした?」
凸「うん…その…」
凹「なに?」
凸「……愛してるよ。」
凹「…!?……うふふ////ありがとう。」
そうして俺たちは電話を切った。
つづく
【BL】アオハルスケッチ 樺純 @kasumi_sou_happiness
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【BL】アオハルスケッチの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます