第30話

浅井side



帰りの電車に乗ると幸いな事に行きとは違い人も少なく、座席があいていたので2人用の座席に俺と月島先生は並んで座った。



窓際に座る月島先生は穏やかな顔をして微笑みながら流れゆく山並みを眺めている。



俺はそんな月島先生の横顔を見つめていると、三木からメッセージが届き俺はスマホに視線を向ける。


【メール:三木】

結果どうだった?



俺は三木への返信として、さっき表彰状とメダルを持って撮ったばかりの月島先生とのツーショット写真を三木に送った。



【メール:三木】

マジ!?

お前、賞取ったの!?


【メール:浅井】

審査員特別賞もらった。

お祝いしろよな。


【メール:三木】

こりゃ校内パレードしてお祝いだな。



三木からのメッセージを見てニヤッと笑っていると、ストンっと俺の左肩に重みを感じ、視線を向けると月島先生は俺の肩にもたれて眠っていた。



凸「先生…また寝てる…」



でも今、月島先生が眠ってしまっているのは昨日の夜、俺が寝かせなかったせいだな…と思うとさらにその寝顔が愛おしくてたまらない。



スヤスヤと寝息を立てている月島先生の手はいつの間にかだらんと無防備に俺の太ももの上にあり、俺はその手を繋ぎ合わせスマホのカメラを起動させた。



俺の肩にもたれ掛かる月島先生の寝顔をスマホの画面に写し、俺はこっそり月島先生の寝顔の写真を撮る。



ピコンとなる微かなシャッター音でピクッと手を動かした月島先生に起きたかと思った俺は慌てて寝たふりをする。



ゆっくりと片目を開けて月島先生が起きていない事を確認した俺は、左肩に感じる重みに幸せを感じながら帰路を過ごした。



最寄駅に着きそうになり俺はぐっすりと眠っている月島先生を優しく揺すって起こす。



凸「月島先生…もう降りるよ。」



俺がそう言うと月島先生は、ん~っと声をあげ、目を閉じたまま眉間にシワをよせると俺の肩に顔をすりすりとしてなかなか起きない。



初めて見る月島先生の子供のように甘える仕草に俺はドキッとするが、早く起きてもらわないと乗り過ごしてしまう。



凸「先生起きて!もう降りなきゃ!」



月島先生の耳元でそういうと、寝ぼけた先生はふにゅふにゅと何かを言いながら、俺の首に手を回しギュッと抱きついつくる。



めちゃくちゃ嬉しい。



めちゃくちゃ嬉しいのだけれど、先生を起こして電車から降りないといけない。



俺は首に巻き付いつてくる先生の腕を解きながら先生の名を呼ぶ。



凸「月島先生ってば!!」


凹「ん……ん…浅井…くん…好き…」



月島先生の口からそう出た瞬間…



思わず俺は固まり言葉を失った。



いいいい…今……



お…俺を…



す…好きって言った?



「次は~〇〇~〇〇~!!」



大きな音でそう車内アナウンスが響くと、呆然としている俺に甘えるようにしてしがみ付いていた月島先生はゆっくりとまぶたを開け、バチっと俺と目が合うと月島先生は慌てて俺から飛び跳ねるようにして離れた。



凹「ごめん…寝ぼけてた…」


凸「なんならずっと寝ぼけててもらってもいいですけどね。」



一瞬にして月島先生は目が覚めたのか先生の顔に戻り慌てて荷物の準備をし、俺たちは無事に最寄駅で降りる事ができた。



俺と月島先生は駅を出るとゆっくりと歩き、コンテストに向かう前に待ち合わせをしていた公園へ向かった。



凹「じゃ、ここで解散だね。コンテストお疲れ様。そして、審査員特別賞おめでとう。学生最後の残りの夏休み楽しむんだよ。」



月島先生はそう言いいながらニコッと微笑み俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。



凸「夏休み中に学校に行ったら…月島先生に会える?」



俺の質問に少し驚いたような顔をする月島先生は俺の頭を撫でていた手を下ろしながら言った。



凹「はっきりとは決めてないけど、暫くは横浜の実家に帰るつもりだから残りの夏休み中は学校にはいないよ。」


凸「じゃ、次会うのは俺の誕生日の始業式か…ご褒美期待してる。」


凹「ご褒美はもうしたじゃん。」



月島先生はそういうと自分の唇をペロッと舐め、俺はその仕草で月島先生のキスをご褒美としてもらったんだと思い出す。



凸「成人のプレゼントはまだじゃん。期待してるからね。」



俺がそう言うと月島先生は笑いながら誤魔化し、俺の言葉に返事をすることなく俺に早く帰るようにと背中をおして急かす。



凸「ちょっ…絶対プレゼントちょうだいよ!?ねぇ、先生!!月島先生ってば!!」


凹「気をつけて帰るんだよ~」



月島先生はそう言いながら俺の背中を最後に強く一回押すと笑顔で手を振っている。



俺も後ろを何度も振り返り、月島先生に手を振りながら角を曲がるまで月島先生に手を振り続けた。



つづく

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