第30話 ゲーム?

 街はすっかりクリスマスの装いに代わり、ジングルベルが商店街の隅々まで染み渡る。


「そっか、クリスマスがやってくるのか………」独り言がもれる。


 クリスマスでまず頭に浮かんだのは、茉白ちゃんへのプレゼントだ。何か喜んでもらえる物を用意したいと思った。しかしいい考えは浮かばない、サンロードを歩きながら考えた。


 ふと前を見る、琴音さんが紙袋を下げてお店から出てくる。どうやらゲームソフトを買ったようだ、僕は声をかけようと思ったが思いとどまる。もしゲームが僕へのクリスマスプレゼントだとしたら、見なかったことにしたほうがいいと思った。僕は踵を返し駅ビルへ向かった。


「そうだ、琴音さんへのクリスマスプレゼントも考えなくてはいけない」そのまま駅ビルの横を抜け商店街を歩き続ける。


 気がつくとそいとげの和菓子屋の前まで来ていた。お店の前に『和菓子のクリスマスセット予約受付中』と書いてある。


「ぷっ!そいとげのやつ、また挑戦してるな」思わず笑いを堪える。


 そして思いついた、和菓子のクリスマスセットに花をつけて送ろう、うん名案だ。ゲームのプレゼントだったらこれで許してもらおう、そう思った。


「こんにちは!」お店のドアを開けて中へ入る。そいとげが不思議そうな顔で出てきた。


「何?どうしたの?」


「あのクリスマスセットを予約しようと思ってさ」


「えっ、マジ!」そいとげは固まって立ち尽くす。


「ミコトさんにあげるから良いのを作ってよ」僕はにこやかに答える。


「実は初めての予約なんだよ、嬉しいなあ………それにミコトちゃんが食べてくれるなら最高の物を作らなくちゃあ」そいとげは目を潤ませて僕を見ている。


瞳が大きくなって夢見る少女のようになった、ぽわ〜っとハートが溢れ出てハートの中にミコトさんが微笑んでいる。『キモッ!』。


 予約を済ませて駅ビルへ戻ってきた。クリスマスプレゼントコーナーの雛壇が並ぶ。様々な小物などが展示されている。目に止まったのは小さなクリスタルのオルゴールだ。丸いクリスタルには可愛い白いクマが入っていて下の台がオルゴールになっている。回転すると綺麗なメロディが流れクリスタルの中には雪が降っているように見えた。


 僕は茉白ちゃんのカバンに付いていたクマの人形を思い出す。これなら喜んでもらえるかもしれない、そう思って購入する。可愛く包装してもらい琴音さんに見つからないよう部屋へ隠した。


 リビングではジャージ姿の琴音さんがバイクの雑誌を見ていた。


「ねえ星七、このバイクカッコいいと思わない?」雑誌を差し出す。


 見るとレーサータイプらしいバイクが見えた。僕は自分がバイクに興味がないことを隠さなければいけないと思い、ニコニコと雑誌を覗き込む。


「僕はどちらかというと、横にあるこっちのバイクの方が好きですね」無難に答える。


「おっ、星七は良いバイクに目をつけたねえ、このバイクは最近人気なんだよ」


「へ〜、そうなんでですか?」雑誌を覗き込んだ。


「このバイクは250ccだから車検もいらないし、経済的でカッコいいから女の子にも人気があるんだ。星七のバイク研究のためにこの雑誌はあげるよ」微笑んでいる。


 コーヒーを淹れた琴音さんはニヤニヤしながら話しかけてきた。


「もうすぐクリスマスだねえ、何かサンタさんへお願いしたいものとかある?」


 僕はゲームを買っていた琴音さんを思い出す。


「そうですね、ノリノリで楽しいものとか………」思わず口を滑らす、まずい!勘付かれたかも。琴音さんは勘が鋭い、ゲームを買ったところを見られたと気がつくかもしれない。


「そうか、ノリノリで楽しいものか?」天井を見ながら考えている。


よかったバレてないみたいだ。胸を撫で下ろす。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る