極上の時代ファンタジー×百合
- ★★★ Excellent!!!
日本のようで、日本ではない山祇国を舞台にした時代ファンタジーです。
まず、「序」の艶めかしさに心をつかまれ、一気に物語に引き込まれました。
細部に至るまで、物語の世界観を壊すことのない、美しい文章・言葉と人物造詣が素晴らしいです。
特に、それぞれの登場人物が単なる物語を動かすご都合主義的なキャラクターではなく、それぞれに痛みを伴った人物として描かれていることが物語の奥行となっていると思います。
また、場面や情景、刀などの持ち物の細かな描写が物語への没入感を高めていると感じました。特に五十九話の刀の描写から凛の過ごした日々の壮絶さが垣間見え、その後の物語への説得感が増したのではないでしょうか。
甘いだけの話ではなく、かなり苦さも含んだ物語です。しかし、その分読了後の満足感は格別でした。時代小説好き、百合好きの方にはぜひ読んでいただきたい物語です。
願わくば、縦書きかつ紙で読みたい…