2次創作「沈丁花は井戸端会議を所望する」
私は帝都で新聞記者をやっている御湿布角蔵。貸本屋琴丹書房の店主、利蔵にその娘瑞香について取材する中で、私は彼に友情にも似た感情を芽生えさせていた。
娘を愛する親の苦悩、私の中では最早瑞香が魔性であろうとなかろうと関係ない。いや、この利蔵の娘なのだ、断じて魔性であるはずがない。そうだ、絶対に間違いない。もはやゴシップ記事などどうでもいい。私はこの親子を断固そっとしておく。
大体、あの若き花神巫達が阿呆なのだ。大人しい物書きを目指す娘へ、勝手に懸想する馬鹿ですけべぇで人騒がせな阿呆共だ。通報してやりたいくらいだ。私はそう強く感じていた。そんな折に郵便配達が瑞香からの手紙を持って来た。
郵便配達の栄吉「利蔵さん、ほら、瑞香ちゃんからの手紙が来たじゃないか。おいらの言った通りだろ」
私がどういう事だと首を傾げていると、利蔵が説明してくれた。有名な文士の元に行った瑞香とはもう二度と会えないらしい。今生の別れを済ませ、利蔵は断ちがたい娘への未練を断つためにも、手紙を一切出してない。そして文士の下で世間とは違う生活を強いられ、きっと自分の事を恨んでいるかもしれないと言う。
即座に、私は利蔵の頬を激しくぶっ叩いた。
角蔵「馬鹿野郎! 親一人子一人の絆が簡単に終わってなるものか! 見ろ、これを! こうして手紙をくれたその優しさを。その心を、親のあんたがわかって上げなくてどうする! おい、利蔵、どうなんだ、なんか言って見ろ!」
利蔵「だ、だが、正式に縁を切りたいとか書いてるかもしれないんだろ!」
角蔵「こ、この! なんて事言うんだ! もう一回ぶっ飛ばすぞ!」
郵便配達の栄吉「ちょ、ちょ、ちょ! 待って下さいよ、二人共! 言い争いをしなくても、ここに手紙があるんですから! ねっ、利蔵さんも、少し寂しさが高じて、拗らせただけですよね、ねっ、ほら、手紙を読んで見ればわかるじゃないですか!」
私達は必至に止める郵便配達の栄吉の言葉を聞き、一旦落ち着くことにした。そしてちゃぶ台の上には爽やかな藤色の封筒が一つ。
角蔵「ほら、利蔵、早く開けてみろよ」
利蔵「だ。駄目だ、できねぇ! 何が書いてあるか、俺は怖いんだ」
角蔵「まだそんな事を! 見ろ、この穏やかな宛名の文字を! 幸せに暮らしていないとこんな字は書けねぇ!」
郵便配達の栄吉「そうですよ、利蔵さん。きっと瑞香ちゃんからの幸せな報告ですよ、ほら、早く読んであげなきゃ!」
利蔵「で、でもよぉ……」
角蔵「おい、利蔵、この文字はどんなペンで書かれてるんだろうな! おめぇなら見分けがつくだろうが! その目ん玉見開いて、よぉく、見てみやがれ!」
瞬間、利蔵の表情が一変した。そう、その文字は利蔵が無理して送った舶来の上等なペンで書かれてるはずだ。そのペンを使う意味、それを悟った瞬間、利蔵はごくりと唾を飲み込み、覚悟を決めた。
利蔵「お、俺は手紙を読むぞ、すまん、俺が馬鹿だった!」
思い詰めた表情から、明るさを取り戻した利蔵が手紙に手を伸ばそうとした瞬間だった。
突如、茶の間を白い何かが横切ったと思うと、目の前の手紙が消えた。
ネコ「にゃふふふ!」
なんと、白いもふもふしたネコが手紙を咥え、鮮やかに私達の前から「にゃ!」と跳ねる様に去って行った。
「「「うっそおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
私達は思わず絶叫した。 つづく
もう完全に長編化してすいません(汗)。 いつでも削除して下さい( ;∀;)
作者からの返信
ふくやまさん。
笑っていいのかわからないけど、わたしはこれ、めっちゃ笑った。お腹抱えて、背中曲げて。なんでいきなりぶん殴るの! え、ねこさんが! って、ずっと声あげて笑ってた。
しばらく声あげて笑うことなんてほとんどなくて、わたし本気で笑うと、声が、にはは、になるんだけど、そのにははで笑ったよ!
なんどもなんども、読む!
ありがとうございます!
あぁもう瑞香さんが、遊楽先生が。そして、牡丹さんが……みんな囚われてしまったみたいで、息が苦しい。
それなのに角蔵さんは拳で語るタイプだし、ネコさんは自由だし、どっちもどうなっちゃうの!?(本編と混同してはいけません)
作者からの返信
月子さま。
はい……息苦しい回です。ごめんなさい……。
もう角蔵さんに殴り込んでもらったほうが早いですよね(混同