第16話 おっさんボランティアをする②
昼の休憩が終わり、午後からは組手の試合だ。
型試合と比べると選手達の顔にも少し緊張が浮かんでいるようだ。
型試合はなんだかんだ言って、自分のやるべきことをやるだけなので、相手はいるものの対人競技のイメージは薄い。だが、組手は違う。相手と直接戦うので、神経をかなり使う。番狂わせが起きるのは大体組手だ。
午後も私は息子のいる5年生が入っているコートのお手伝いだ。今度は誘導ではなくタイムキーパーと得点係。ある程度ルールを把握しているが故の人選だそうだ。
まずは幼児の部から。
ある程度ちゃんと組手になっている子、訳も分からずとりあえず手を振り回している子と様々だ。防具があるとはいえ、上段を蹴られて泣き出す子もいる。なんだかんだ言って可愛いものだ。
次は小2の部。小2ともなるとある程度基本が出来ている子もちらほらいる。
決勝はかなりハイレベルで、お互いポイントがとれず、延長戦突入。
延長終了間際に赤の子が後ろ回し蹴りを決めて優勝した。
赤の子は延長に入ってから、蹴りを出していなかった。おそらく、狙っていたのだろう。末恐ろしい・・・。
次はいよいよ小学5年生の部だ。型の部は16人だったが、組手の部は30人近く。ただ、欠場の子もいるようで実質25人前後といった所か。
うちの道場生は私の息子を含めて3人。息子・ハルキ君・エイタ君だ。型は職人と言って良いほど上手なハルキ君だが、組手はあまり得意ではないらしい。運動神経は良いが、そもそも好きではないのだろう。
エイタ君は入って1年になるが、センスはずば抜けている。フルコンの大会では結果は出せていないが、今回は結構いい線まで行くかもしれない。
型で準優勝の広川君も出場だ。フルコンの試合によく出ているが、硬式もできるようだ。ちなみにフルコンでは何度か優勝している。勝手が違うとはいえ、彼の高速後ろ回しはかなり脅威だろう。トーナメント表とゼッケンで対戦相手を確認したが、相手の子はかなり大きい。見た感じ強そうだ。一回戦注目のカードと言って良いのではないだろうか
何はともあれ試合開始。最初の試合でいきなり息子が登場。試合開始とともに相手の選手が飛び込んでくる。
息子は私に似て体は大きい。しかしやる気はないし運動神経も良くない。ただ、強くないが、ディフェンスだけは上手い。
身体が大きいのも相まってフルコンでは相手の強弱関係なく大体泥試合になる。
早いスピードでどんどん飛び込んでくる硬式の組手は厳しいだろうなというのが私の予想だ。
飛び込んできた相手を冷静に避けて突きを返す息子。しかし、攻撃が遅い。
攻撃されてはディフェンスし、たまに息子が申し訳程度に攻撃する流れ。
どうやら息子のリーチが長いので、相手選手は懐に飛び込めないようだ。
この大会は先取2本先取。先取とは先にあてた選手にポイントが入る仕組みだ。
先取の場合、往々にしてポイントの基準が厳しいので綺麗に決まらないとポイントになりにくい。(ちなみに先取でない場合、通常5本先取。ポイントを取られた直後なら反撃すればポイントが入る。逆に一回の流れで2ポイント以上入ることもある。)
消極的な塩試合と言っても良い展開が続く。結局時間切れ引き分け。延長戦だ。
延長も似たような展開が続き、結局相手に旗が3本上がった。
相手の子はスピードはあるが、突きがオーバーハンド気味になっていたので、ポイントが入らなかったようだ。
息子を見ると、へらへら笑っている。もうちょっと悔しがれよ・・・。
試合は進み広川君の番だ。試合開始と共にスピーディーな展開。結構ハイレベルだが、広川君の方がちょっと上手だ。やや背が高い広川君に対し、相手選手は背が低いながらも激しい出入りでかく乱しようとする。広川君のハイキックが決まりポイントが入る。
そこで私はある違和感に気づく。
次回に続く
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