気になる王様

 リーサは離れのあてがわれた小部屋で一晩を過ごした。朝になって食事が運ばれてきたが、特に仕事を仰せつかることもない。


「私にお手伝いできることはありませんか?」


 と食事を運んできた侍女に聞いたが、


「特にありません。あなたはここにいてください」


 と小部屋のドアをピシッと閉められてしまった。それで朝から何もすることもなく、窓から外の風景を眺めているだけであった。


「今頃、どうしているのかな・・・」


 多分、女官たちはてんてこ舞いの忙しさだろう。王様のお世話のことも気にかかる・・・。そう思うとじっとしていられない気分になった。


「ちょっとだけなら外に出てもいいか・・・。王女様も出かけられるようだし。」


 だがドアから出ていけない。多分、女官たちに咎まれてしまうだろう。リーサは窓を開けた。


「ここを走っていけば誰にも見つからない。ちょっと様子を見て来るだけ・・・」


 リーサは窓からそっと出て行くと、猛然と走り出した。


 ◇


 離れではサラサ王女が外出の準備をしていた。多くの侍女が手伝い、お化粧をして華麗なドレスに着替えさせた。


「王女様。今日もお美しいですわ。これなら王様もお喜びになるでしょう」


 ドルネ侍女長がうっとりしていた。


「急いでね。もうすぐ王様は庭に出られるようよ」


 サラサ王女は何とかアデン王の心を向けたいと思っていた。父のプラクト大公からは


「アデン王を篭絡するのだ! あの国を我がものにするためだ!」


 などと言われていた。だがサラサ王女にはその気はなかった。彼女は初恋の相手のアディーに会いに来ただけだった。婚約を破棄された相手でもあるが・・・。成長してどんな人物か、気になっていた。


(素晴らしい方だった・・・)


 彼女はアデン王に心を奪われてしまった。その堂々としながらも包み込むような優しい様子・・・。

 だがアデン王にその気はないようだ。それを振り向かせて見せるとサラサ王女は気合が入っていた。


(あの方の妃になるのは自分しかない!)


 サラサ王女は心に決めていた。そのために障害をすべて排除することに決めた。父譲りの強引さが彼女にはあった。


 ◇


 リーサは女官室の近くに来た。そっと隠れて伺っていると、幸いにも仲のいいマモリが通りかかった。


「マモリ」


 小さな声で呼ぶと、彼女は気が付いてリーサの方に来た。


「心配したの。大丈夫?」

「大丈夫よ。それよりみんなはどう?」

「目が回るくらい忙しいわ」

「王様は?」

「サラサ王女様のところから侍女が2人派遣されて、お世話係になったわ。カーラなんか、お世話係になろうとしたけど断られたみたいなの」

「そうなの・・・」


 リーサは王様のことが気になった。あれもこれも・・・して差し上げることはいろいろある。だが王女の侍女がついているからそれを頼むことはできない。


「お姉さん! いいの? ここに来て?」

「気になって抜け出してきたの。これは秘密よ。私は戻るわ」


 リーサはそう言ってまた走り出した。


 その様子は外にいたカーラに見られていた。彼女は遠くからずっと離れを見張っていた。リーサが必ず出てくると・・・。そして予想通り、リーサが離れから飛び出してきた。カーラはここまで息を切らせながらも何とかつけてきたのだ。彼女はニヤリと笑ってその場から立ち去った。

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