第2話 糾弾会

 卒業パーティーの熱気は、さきほどの大騒ぎで、陽気な空気は吹き飛んでいた。

 王子と壁になった子弟が必要以上に一人の少女を責め立てる。

 僕は群衆の先頭に立ち、静かにその様子を見ていた。

 こいつら、自分が何をしてるのか理解してるのか…⋯。


 壇上には金髪の王子と、その隣に寄り添い涙を流しながら薄く微笑んでる、栗色の少女――ステファニー。


 そしてその前に立たされているのは、薄い金髪の令嬢で元婚約者――アリスだ。


 王子とアリスの間では、四人の男が壁をつくっていた。

 銀髪の宰相候補、栗髪の騎士、紫髪の魔術師、そして王子の弟。

 それぞれが好き勝手にアリスを責め立てる。



「アリス、あなたの悪行はすべて把握しております」

「がっかりだぜ」

「妹よ、お前には失望した」

「ステファニーおねーちゃんは僕が守る!」


 アリスは黙っていた。


 泣くでもなく、叫ぶでもなく、俯くでもなく。

 ただ静かに、冷めた目で彼らを見つめていた。


 そして、子弟たちも一切の感情を廃した目で、ひと言も発せず、王子たちを見つめている。

――こういう時は動くなと、幼少の頃から叩き込まれてるからだ――


――仮にこれがありがちなゲームのエンディングだったら、『王子は王様になって、主人公は残りの4人と幸せに暮らしました』で終わるのだが――


 だがこれはゲームではない。

 ここにいる全員に感情があり、しがらみがあり、そして欲がある。

 そして当たり前だが、結婚というのは結婚してからの方が長い。


 それに、男というのはなかなか嫉妬深い。


 僕の記憶にある地球の歴史では、古今東西、親兄弟の権力闘争で歴史の教科書ができあがっている。

 そこに恋慕が絡んだらどうなるかなんて、火を見るより明らかだ。


 しかも、彼らはそれぞれの家を背負い、兵力を持っている。

 そして――不幸なことに――頭が回る。

 もし目的が『ステファニー嬢の寵愛を一番に受ける』ための軍事行動だったとしても、部下に本音を言うはずがない。

 もっともらしい“正義”を並べ立て、言い訳を揃え、理屈をつけて動くだろう。


 そして、その言い訳は際限なく肥大化し、やがて自らをも飲み込む魔物になる。

 その魔物は、いずれこの国全体を覆い尽くす。


 生み出した本人がそれと対峙することはない。

 対峙した瞬間、彼らの自我が崩壊するからだ。

 

 これはゲームの話ではない。未来が見えているわけでもない。

 同じ過ちが、古今東西、何度も何度も繰り返されており、また、ここでも繰り返されようとしている。


「アリスよ! 王の意思は国外追放だが、私の温情でミツハ殿の領への追放にとどめる!」

 王子の叫び声とともに、ようやく糾弾会というなのパーティーは幕を閉じた。


 ――僕にはその声が、地獄の門が開いた音に聞こえた。


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