第24話 夕暮れの少女

──放課後。補習が終わり、さくらはぐったりしていると、廊下に誰かいるのが見えた。


「…あれ?誰なのかな?」


小学生くらいの背丈に、大きな黒い瞳、赤い着物にスパッツを履いた、黒髪で両サイドを細く赤いゴムで結んだ少女が、さくらの前に立ちはだかる。


「君、迷子?お母さんとかはいるの?」


(この子、着物着てるのはなんでなんだろう?よし、聞いてみようかな!)


見知らぬ少女であったが、しゃがんで警戒せず笑顔で話しかける。

少女は無言で睨み、突然走り去ってしまった。


「…変な子、なんだったんだろ?」


しばらくしていると、白火が来て話しかける。


「よお、さくら。補習終わったか?」

「うん、終わったよ…疲れた…」


振り向いた瞬間、白火が血相を変えて、さくらの両肩に手をのせる。


「さくら!!髪紐はどうした!?」

「…え?髪紐ならあるじゃない…って!ない!?」


 自分の髪を触り、いつもなら左側にあるはずの髪紐がなくなっていた。


「ないない!!どうしよう!?あれ、おばあちゃんの形見なのに!!」

「元は春子のもんだけどな…とにかく探すぞ!!」


2人で探してみるが、一向に見つからない。


「…これだけ探しても見つからないなんて…あっ、もしかして、さっきの女の子が持ってちゃったのかな?」 

「…それ早く言えよな。どんな奴だ?」

「小学生くらいの女の子だったよ。赤い着物着てた」

「そいつ妖怪じゃないか?もうちょっとは警戒しろよ」

「だって!あんな小さい子なら大丈夫かなって!」

「そいつがいたところ探すぞ!」


少女に会った、廊下に行ってみるが、髪紐はなかった。


──それ以降は見つからなかったため、2人は帰った。


翌日。


「影里くん!私の髪紐知らない?」


千智や真菜実に聞いてみたが、知らないと言われ、信也にも聞いてみる。


「知らない。どうかしたのか?」

「それがよお、さくらの髪紐が取られちまったみてぇなんだ」

「まだ、あの子が取ったわけじゃないでしょ!」

「新山、あの子って?」

「昨日の放課後、赤い着物を着た女の子に会ったの。白火に話したら妖怪じゃないかって言われて…」

「赤い着物の女の子…」


信也は何か感じを受けた。


「影里くん、何か知ってるの?」

「…いや、俺の思い違いなら悪いが…」


言いかけた時にチャイムがなってしまった。



──放課後、さくらが職員室から出た時に、ポケットに入れてある数珠が鳴る。


「…えっ?なんで、鈴が…?」


言いかけた時に、待ち構えていたように夜行の手下が襲い出す。

一つ目の鬼で餓鬼のような妖怪で、痩せほっそていたが、恐ろしさを感じる。



「見ツケタ、巫女ノ生マレ変ワリ!!」

「そんな…!!なんでこういう時に白火がいないの!?」

「コノ娘ヲ殺セバ、夜行サマからちからヲ貰エル!」

「きゃあ!!」


目を瞑った瞬間、妖怪が悲鳴をあげる。


「ギャア!!ナニヲスル!!」


 目を開けた時には、昨日出会った赤い着物の少女がいた。両手にはクナイを持っている。


「あ、危ないよ!君!!」 

「全く、巫女の生まれ変わりなのに、あんな奴も倒せないの?」


少女が口を開き、妖怪をクナイで再度刺す。

クナイがちょうど目の部分にあたり、苦しみ出す。その隙にいきよいよく切り裂く。妖怪は苦しみながら、消えていった。


「すっすごい…!!」


さくらは、少女に近づく。ちょうど、その時に見回りをしていた、白火と信也が戻ってくる。


「さくら、大丈夫だったか?」

「…うん、この子が助けてくれたから!ありがとうね!」


 笑顔で振り向き、少女に答える。少女の姿が見えた瞬間、信也が声をあげる。


椿つばき!なんで、ここに来たんだ?」

「…えっ?この子の名前、椿ちゃんって言うの?影里くん、なんで知ってるの?」

「…はあ、椿は俺の妹だ。学校には用がない時は来るなって言ってるだろ」

「へぇ、こいつが信也の妹か似てねぇな」

「悪かったな」


少女は口を開いて答える。


「だって!!巫女の生まれ変わりだって聞いたから見て見たかったんだもん!!つばきは悪くない!!」

「だからと言って、学校には来るな!椿だろ、新山の髪紐を取ったのは」

「こいつが鈍くさいから!!」

「見た目は椿より年上なんだから、お姉さんだろ。ちゃんと謝れ」


 さくらと白火は2人はのやりとりをヒヤヒヤしながら見ていた。

信也が振り向き、さくらに謝る。


「…すまなかったな、新山。妹が迷惑をかけて。椿髪紐を返しなさい」

「やだ!!」

「椿!」

「…大丈夫だよ、影里くん!椿ちゃん、それは私にとって大切なもの返してくれるかな?」


暫く無言で黙っていたが、髪紐をなかなか返さない。


「お願い、椿ちゃん。それ、お姉さんの大切なもの!おばあちゃんの形見なんだ」

「……さくらなんか、お姉さんじゃないもん」

「…え?」

「つばきの方が年上だもん!!」


 そう言ってさくらの胸に髪紐を押し付けて、受けとる。


「つばきの方がお姉さんだから、さくらは敬語使ってよ!」

「え~!?なんで!」

「おっ、椿の奴結構言うじゃねぇか」


 白火は感心して、信也は呆れる。


「もう!感心してないでよ!」

「椿、帰ったら説教な」

「え~!!やだ!!」


説教が嫌なのか、椿は走り去ってしまった。


「…全く、困った妹だ」

「まあ、いいじゃねぇか、楽しそうで」

「影里くん、大変だね…」



──椿が去った後、3人はそれぞれ帰ることにした。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る