第6話

何のために書いてるの?

彼女は言う。


僕は、僕を救うためだけだ。

つまらないだろう。

キチガイだと言う奴もいたよ。

泣こうが喚こうが人生はある。

だから、僕は人生との距離感についていつも考える。

そんなに必死に考えてどうすんの?

そんなに適当でどうすんの?

全てはその人のさじ加減なんだ。

何にもおかしいことなんてない。

人間なんか全員、本当に全員自分以外の人間のことなんか考えちゃいない。

だから僕も僕のために書くよ。

だけど、本当にごく一部の人間だけ、

「優しい人」がいるんだ。


そういう人は例外なく死んでいった。

あっという間だよ。

社会が、世界が、歴史がそういう人を排除したいんだろうな。

だけど、そういう人たちのために文章を書けるわけじゃない。

自分本位で生きるということはそういうことだ。

今まで失った全てを否定するってことだ。



彼女は何も言わずに僕の前から去っていった。

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