第12話 かつての暴君 ムチムチプリンになって帰って来た
紳士「美しいレディ、次は私の手を取って下さいませんか?今宵、貴女と踊れる栄誉を私にもお願いします」
「ええ、よろしくてよ」
チッ!
次から次に何しに来るんだよ!
うっ…こいつの香水めっちゃ臭っ!なんか吐きそうだ
差し出された手に手を重ね、ダンスホールへ
腰に手を回され軽やかにステップ
もう5人目だよ疲れたわ
紳士「人違いならすみません…貴女はマリーウェザー・ハインツ様ではありませんか?」
「はい…」え?この人も俺の知り合いなの?
「王都の夜会でお会いしました、貴女は目立ちますから
私はドゥードゥル・ヴァーゲンです」
ヴァーゲン男爵家の次男だそうだ
確か…国の西側(海側)貴族で
成り上がり嫌いじゃないぜ?
でも100年近く前の話だよな、子孫はずいぶんチャラい優男になってしまったな…ムキムキのバイキング感は皆無だ
「こちらへはご旅行ですか?
良ければ当家に食事などいかがでしょう?」
「嬉しいお誘いですわ、ただ船の出航まで予定が合うかしら…フフ」
「(ゴクリ)…こ、この後テラスで休憩しませんか?お疲れでしょう、ここは海が見えるのです」
「お気遣いありがとう存じます、実は足が疲れてしまいまして
ヴァーゲン卿がテラスまでエスコートしてくださる?」
「ドゥードゥルとお呼び下さいハインツ公爵令嬢」
照れて嬉しそうにする
「マリーウェザーでよろしくてよ」
これあれかな俺をお持ち帰りしようとしてる?
ただの社交だよな?
まぁいいや疲れたし、そろそろ休憩したかったんだよな
なぜパーティに参加してると言うと
公爵令嬢が港に来てるって噂になったらしい
まぁ白髪碧眼の超絶美少女の俺がフラフラ歩いてたら目立つらしいね
本当可愛いって罪だよなフッ
そんでもってヨシュアに接触してきて、港の権利をもつハーグリーヴス伯爵家の脅しに近い要望に断りきれず
パーティ参加するだけだしいいよ、と参加することになった
ちなみにデュランと斬鉄を連れて帰ったら
ヨシュア「デュランさんお久しぶりです!いつ頃こちらに?
あ、そちらは斬鉄君ですか?!
大きくなるの早すぎませんか?わぁー僕の身長抜かされちゃいましたね」
「ヨシュアはデュランを知ってるの?
凄いわね、コーネリアスお兄様の部下も把握してるのね」
ヨシュア「え?デュランさんはマリーウェザーお嬢様の部下じゃ?留学に行くときも一緒でしたし…
あぁ、コーネリアス様に取られましたか
デュランさんほど優秀なら、時期領主の側近に取り立てられるでしょうね」
そうか、ヨシュアは俺の昔をよく知ってるんだな
留学へ行った事実は何となく覚えてるんだけど…
肝心の留学では何したんだ?全然覚えてない
そんな事より、ハーグリーヴス伯爵家のパーティだ。
ヨシュアが言うには船の造船してるんだって
跡取り息子は王都のタウンハウスにいて、俺と同期だったらしい
次男がアカデミーに通ってて、入学前の三男ロベールと一発目のダンス踊ったよ
身長が俺と同じくらいだから、13、14歳くらいかな?
ロベール少年はガチガチに緊張して、足を踏まれそうになるのを避けてるうちにダンスが終わった
真っ赤になって泣きそうな顔をしてたから
「フフ、久しぶりに楽しいダンスでしたわ。足は踏まれてませんから、そんな顔をなさらないで。
今日は誘って頂いてありがとう存じます、実はパーティは久しぶりなの」
ってリップサービスしたら……多分惚れられちゃった
恋する少年の眼差し向けてくるなよー!
いや、俺って可愛いけどね?
その後、すぐに違う人にダンスを誘われて乗り換えた
そして、流れるように5人と踊った
ダンスが終わって、ドゥードゥルにエスコートしてもらってテラスに向かう
途中でダンスの申し込みがあったけど丁寧にお断りしてテラスにでる
他を断った時のドゥードゥルのドヤ顔がちょっと笑える
出る時にウエイターに飲み物テラスに持って来てと頼む
テラスから港町と海が見えた…この世界の夜景も悪くないね
町の明かりが見えて、その向こうに黒い海が見えた
優しい夜風が気持ち良い
シャンパンを持ってきてもらったからクイッとあおった、喉乾いてたんだよな
ドゥードゥルの話では、造船場が出来てからこの町が賑わって景気が良くなったらしい
港に倉庫や工場が出来て冷凍漁船が凍らせた魚を運んで来て冷凍車で国内に魚が出回ってるんだって
へぇー
「マリーウェザー様のお力でこの町も栄えました」
え?誰のお力で?
「造船場だけでなく食事何処や宿泊施設にも出資下さって、感謝しております
船乗りの病とその解消法を伝えてくださったのはマリーウェザー様でしょう?
私はあの時、あそこにいたのです…。当時の貴女は、まだ目立ってよい時では無かったですからね」
「今も目立ちたくありませんわ」
船乗りの病って壊血病だよな?歴代の転生者達は教えてなかったのか?
あっ!何か思い出した!
それぞれの港で隠してるんだっけ?
確か教会から特効薬ってビタミン薬を高額で売りつけてるんだったな
弱小港町では買えない代物なんだよな…
この国の教会は腐ってやがる
「マリーウェザー様が再びこの町に来て下さる日を皆待っていたのです
当家の料理人は公爵家の料理番から直接指導を受けた者です」
和食を洋風にアレンジしたから是非食べに来てねって、ナンパじゃなくて本当に社交辞令だったんだな。
料理の話になったから中に入ってテーブルに並んでる華やかな料理を見た
エビチリは洋風ってより中華じゃないか?エビマヨは和食かなぁ?
ケーキバイキングのコーナーにデュランと斬鉄がいて全種類食べてた。
デュラン「カカオの甘さを控えめにしたのは良いですな、上品な味です」
コック「デュラン先生の合格が出た!公爵家の料理番に認められた、やった!」
公爵家の料理番ってお前だったのかよ!
港町で料理教室でも開いてたの?
コック「料理長!俺もいつか自分の店を持ちたいです!」
料理長「デュラン先生お久しぶりです。小僧をあまり甘やかさないで下さい」
伯爵家の料理長がデュランに挨拶してる!?
今更だけど、いや本当に今、気がついたけど
このパーティって俺の歓迎会だったらしい
ヨシュアの説明をちゃんと理解してなかった
なんか昔
俺がここにきた時に肉より魚が好きだって言ったせいで
次に立ち寄った時はたくさん魚あげるね!みたいな約束をここの長男としたらしい
全然覚えてないんだけど!
それで凍らせて船に乗せるのに冷凍庫の整理とか、入らない分は干物にしたりとかで時間かかってるんだって
なんか俺が海賊みたいじゃん!暴君でごめんよ
前に来た時もヨシュアとデュランとヴラドがいたから、俺以外はスムーズに話が進んでいってた
ハーグリーヴス伯爵家の人から部屋を用意したから泊まってけって誘われたけど、気疲れするし宿に帰ることにした
宿で湯浴みを終わらせてベットにゴロンと寝ると窓からカリカリ音がする
ガラス窓じゃないから、開けて見たら窓の外に猫がいた!
「船から出てきたの?ってか今までどこにいたの?
しばらくいなかったから海に落ちたのかと心配してたんだよ?」
『僕のこと心配してくれたの?嬉しい忘れられたかと思ってたから…ねぇ部屋に入ってもいい?』
猫を部屋に入れて手足を拭いてやった
あんまり汚れてなかった
「今日は一緒に寝る?毛布に入って寝てよ
ぶっちゃけ上で寝られると重いんだよね」
『いいの?僕のこと怖くない?』
「怖くないよ、めっちゃ可愛いけど
あ、黒いにゃんこって不気味がられるから?
でもふわふわの毛の猫は、お高いお猫様だからそこまで不吉とか言われないんじゃない?」
『…どこかの国では、黒い猫は神の使いとして崇められてたんだよね?』
「へぇー、知ってるんだね。この世界にも似たような文明があるんだ」
『前に聞いたんだ…同じこと言ってる』
前の飼い主も転生者だったっけ?
『今日のパーティ楽しかった?』
「もしかしてパーティの間、待たせちゃったかな?ごめんね次は部屋のドアを開けとこうか?」
『そんな事しちゃ駄目だ、余計なものが入ってくる…お前は温かいな』
「泣いてるの?どうしたの?」
『僕、泣いてるの?自分じゃわからない…もっと撫でてよマリーウェザー』
猫をモフモフしながら寝る
前世でも飼ってたし、懐かしい感じがする
布団の上で寝られると重いよね
冬は布団の中に入ってきて温かかったな
断罪後の悪役令嬢から始まる冒険記 ワシュウ @kazokuno-uta
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