見たら死ぬと言われている、ある連続殺人事件の犯人の女を被写体にした写真。それが本当なのかどうか、ある人物の残したスクラップブックに集められた記事を通して真相を探っていくモキュメンタリ―形式の作品だ。
本作を構成するのは主に、「ヨシエさんの写真」の呪いについてセンセーショナルに書き立てた雑誌記事、起こった事件を簡潔に伝える新聞記事、ネット上の書き込みやブログなどの文書だが、気を付けないといけないのは、そこに書かれていることが必ずしも真実とは限らないということだ。
メディアが伝える情報は、建前としては常に中立の立場だが、実際は書かれた時点で多分に書き手の意図に沿って歪められている。そんな信用できない語り手から出された情報を照らし合わせて、読者は真実を探る。
「呪い」をテーマにしながら、極めて強い社会的なメッセージも含んでいるのが本作の特徴である。凄惨な事件や心霊現象を語る時、人は口々に怖いと言いつつも確実にそれを楽しんでいる。
それを取り上げるメディアは果たして罪なしと言えるのか、怖さと一緒にそんな疑問も浮かんでしまう一作だ。
見たら呪われると噂される「ヨシエさんの写真」にまつわる文書が集められたスクラップブック。その内容を書き起こした作品です。
一見無秩序に見えた資料たちが、読み進めるごとに段々と繋がっていき……真相に気づいた時には、そう来たかと目を見張りました。
情報社会に警鐘を鳴らす、新感覚のモキュメンタリーホラー。
シンプルに文書のみが集まった構成で、読者側の読み解く力が試されているような感覚があるため、謎解きが好きな人にもおすすめです。
(すぐに読めてすぐに怖い、様子のおかしいモキュメンタリ―短編4選/文=KADOKAWA編集者くま)
自らの死を予見していた知人が“私”へ渡した1冊のスクラップブック、そこにはさまざまな事件に関する資料がまとめられていた。なんの関連性もないはずの事件であるはずが、すべてに1枚の“呪いの写真”が関わっていて……。思うところは多々ありつつも、“私”はまとめられていた内容を書き起こす作業を開始したのだった。
各話で綴られるものは過去に起きた事件の記事やネットに投稿された体験談等々、それぞれなんの繋がりもないはずの情報です。そしてその端々に現れる、見たら呪われるとの曰く付きな「ヨシエさんの写真」は、ただのオカルト話なのです。でも、情報の断片がパズルさながら組み立てられて完成されていく、ヨシエさんならぬ“城山佳江”の像により、ただのオカルトが最高に最悪な恐怖と成り果せるのですよ。物語を紐解くにつれじりじり這い寄られるこの感じ、たまりませんねぇ。
本人が登場しないからこそ際立つキャラクター小説、そのおぞましさを背筋で味わっていただきたく。
(「恐怖へ迫るドキュメンタリー=モキュメンタリー」4選/文=高橋剛)