気狂い、配信をする
「
「
「
3人が自己紹介をする
【きちゃーーー】
【声良】
【耳がー】
【ウォッチドクターがガトリング砲使ってたの????】
【メイジ???でも刀使ってたじゃん???】
【エグセキューショナー???】
【疑問の多いコメ欄ですね(白目)】
「今日は政府の依頼で初心者ダンジョン井之川に来てるよ〜」
カメラに向かって手を振る。
「初心者にわかりやすく井之川の説明をしてほしいと言われた」
カメラを掴んで、あたりを映す。
「まぁ、井之川は各ダンジョンの雑魚を集めただけなんだがな…」
「雑魚は雑魚でも瓦妓の雑魚は
【さすが底なしダンジョン】
【A級ダンジョンの雑魚は雑魚ではないと思うんだけど…】
【わー、後ろのアレなんだろうな】
【誰も言わなかったことを…】
消失しかけている
「今いるところは、井之川ダンジョン中層だよ。」
「ここは基本的に
沙織が説明する後ろで伶於が壁に向かって近づく
「例えば、ここを押すと…」
伶於が壁の一部分を押す
「
壁に穴があいて
【わざわざトラップ引っ掛かるんだ…】
【何か普通の
「ブヒィー?!」
絲に襲いかかろうとした…
首が、ズレる
「ブヒ?」
「む、この
伶於が
「
「…面倒になったな…」
眉を顰め辺りに気配を巡らす絲
「この様子だと、今いる感じだね……」
沙織が
【キメラ狂い…なにそれ】
【まさか混沌の博士じゃないよね!?】
【まって??】
【もちつけよ】
【お前がな】
「レオは前に博士に会ったことあるの?」
沙織は伶於を心配そうに見た。
「?博士には会っていない」
意味が分からず首を傾げる。
「……なァ、レオ…その言い方、関連する物には会ったということか?ん?」
絲は伶於に顔を近づけ、ニコリと笑い問い詰める。
笑みで細められた瞳の奥は暗かった。
「……
気まずそうに目を伏せる。
「ねぇ……まさか」
沙織の口角が、僅かにひくついた。
「やってない…絲にも沙織にも散々言われたから……」
小さく首を振り、絲と沙織を見る。
「……本音は?」
沙織は目を細めて伶於に聞いた。
「バラしたい……」
伶於はぷいっと顔を背けた。
「はぁ…やってなければいい…でも会ったことは言わなきゃ駄目だろ」
指先で額をつんと突く。
叱る口調とは裏腹に、指の動きはどこか柔らかい。
「レオさぁ……もう」
沙織は呆れたように長い長い溜息をつく、
でもその顔には何故か笑みを浮かべていた。
「……すまない……」
伶於は突かれた額を手で抑え、一瞬目を逸らし絲を見上げる。
【やっぱり博士って、博士って言ったよね!??】
【……あのバケモノいるのか……】
【わぁなんてすてきなほしなのかしら……】
【現実逃避者多いいな……】
【そうでなきゃ、無理だろこの情報量は】
───ドォーン
遠くから轟音が鳴り響き、地が震え、壁を揺らす。
「……なァ、これ」
絲と沙織が目を合わせる。
「やっぱり?」
嫌な予感があって欲しくない沙織は自身が“見た”情報が間違っていて欲しかった。
「あぁ、博士付近に人間がいる」
だかその情報を裏付けするように伶於が同意する。
「約80%博士のターゲットにされてる可能性がある」
「
そこまで言って伶於は表情を動かし、目を見開いた。
とても不味いことになった。
そこにはいないで欲しいと思っていた気配が存在していた。
「少しスピード上げるぞ」
カメラに向かって声をかける絲。
沙織がカメラを手に持ち、3人ともスピードを上げていく。
【はやっ】
【すげー】
【そういえば博士にターゲットにされるってかなりヤバくない?】
【それはそう】
【というかキメラって言ったよね……】
───パチパチ…
紫電がある一点に向かって走る。
「…みつけた」
視線がそこに向く。
“影”が何かを求める様に揺らめく。
「あぁ、いる」
首を傾げ鋭い目つきでそこを見る。
───ボチャン……
水の、堕ちる音がする。
「…負傷者発見」
眉を顰めてそこを見続ける。
【あ、いた】
【おー、博士単体だねぇ】
【え、なんかきこえる】
【なにあれ、え】
セイレーンの上半身、グリフィンの羽、誰かの四肢
全てが消える
視界が白く濁る。
───♪¿♪♩♯✧☩☼◁♬〜
聴こえる、声が…聴こえる
不気味な声が、空気を震わせ何かを訴えてくる。
助けて助けて助けてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてにげてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてころすたすけてたすけてたすけてころすたすけてたすけてたすけてたすけてはいじょたすけてたすけてにげてたすけてたすけてころすたすけてころすたすけてたすけてたすけてたすけてにげてたすけてたすけてにげてたすけてたすけてたすけてころすたすけてたすけてたすけてたすけてたすけてちょうだいちょうだいたすけてにげてたすけてたすけてたすけてもうにげられないたすけてからだをちょうだいころすたすけてきずつけたくないちょうだいたすけてちょうたすけてだいちょうだいちょうだいにげてちょうだいころすちょうだいにげてたすけてちょうだいちょうだいたすけてちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいちょうだいたすけてにげてたすけてたすけてたすけてたすけてわたしがきずつけるまえにたすけてたすけてたすけてたすけて
息が、つまる。
【なにこれ】
【きもちわるいたすけて】
【なにこれなにこれ】
【みんな大丈夫!?】
【どうしたの!?】
【何事?】
【え】
【やばいもしかして精神汚染】
【やばいじゃん、えちょ、これ基本的に返事できてない人がそうだよね!?】
【やばいかも、同居人がやばい、どうすればいい??!?】
【回復ポーションある奴は遠慮なく割れ!】
【こんな時に法律とか関係ないわ!すまん、勝手に住所調べる】
──雷流五式 崩玉一刀
───ポチャン……
「Blasyi feliz,Curat,惑わされないで、目を醒まして」
声が聞こえる。
呼び覚ます声が…
「絲、沙織」
絲と沙織を呼ぶ伶於。
「あァ、任せろ」
絲は伶於の頭を軽く撫で、口角を上げた。
「もっちろん!」
意識のない冒険者に
稲妻が走る
ダンジョンの壁がゆっくりと崩れ、奥から鼻の奥をツンと刺激する薬品の匂いが風に乗って漂ってきた。
「……“スキル 記録”」
伶於は研究室の壁に手を付きスキルを発動する。
「絲、その博士は分身体だ」
「スキルで見た」
「あァ?……だから手応えがねぇのか」
絲が
そして
「ッ!!」
沙織は頭部の痛みで眉を顰める。
「「沙織!」」
2人の声が重なる。
「だいじょぶ……ただの…精、しんかんしょー」
少しふらついている。
「なら私は無効だな」「スキル ・“精神干渉無効化”」
伶於は沙織の頭に手を置きスキルを発動する。
「俺はこの程度なら無事だ」
何かがこちらを視る。
黒く濁った瞳を持つ美しい何かがカメラを通してわたしを見つめる。
わたしは美しい何かに……
「目を醒まして!」
誰かがわたしを呼んでいる。
でもわたしは彼女に会わなければ……
「おい!」
何の音……?
───パリン……
何かが割れる音がする
視界が黒く、染まった…
「早く!病院に運べ!」
【……もうダウンしてる人居ないよね】
【大丈夫なはずだ】
【一応スピーカー越しでも治癒魔法って使えるんだ……】
【確かに】
【なにこれ、僕が講座受けてる間になんでこんなことになってるの……】
「Ah… se–liin’thaa–ra… e–vieeel…」
けれど彼女は笑っていた。
「Sorelia……」
黒く濁っていた瞳に光が宿る。
たった一瞬でもそれは全てを魅了するセイレーンそのものに戻れた。
「あぁ、そうだ君はもう解放された…」
伶於は軽く彼女の
彼女は柔らかな暖まりのある歌を静かに口ずさんだ。それは過去を懐かしむ様な優しくて哀しい旋律だった。
満足そうに彼女はゆっくりと瞳を閉じていった。
まるで湖のような美しい瞳はもう何も写しはしてくれない。
「もう、大丈夫だよ」
沙織は優しい音色で彼女の未来を祈った。
「……俺に感謝されても少し困るぞ……」
絲は沙織と伶於の頭を慰めるように軽く撫でた。
彼女の体は少しづつ砕けていった。
薄い群青色のキラキラ光る灰だけが遺されていた。
「……なァ、レオ」
絲は視線をじっと向け、伶於の手元の動きを追いながら、静かに尋ねた。
「む? どうかしたのか?」
伶於は灰をかき集めている
「……何してるの?レオ」
沙織がいいづらそうにしている
「研究に使える!“鑑定眼”がそう言ってる!」
伶於は目を輝かせながら2人を見て言った。
「……そうか」
「そう……」
もはや何も言えない2人
【……なんか濃ゆい】
【やめろやめろ、現実見るな】
【これは見なきゃダメだろ】
【うぁ……これは政府とギルドの方々の胃がやばくなりそう】
【現在進行形で死んでるが????】
【ア゙ア゙ア゙仕事の癒しとして見ようと思ってただけなのに……なんで仕事ふえるの……】
【HAHAHAはァ】
【なんかそれっぽい方々が出没してるね……】
【うん、なんかお疲れ様です……】
【……わぁ、俺の部署もやばくなりそ】
【何それ、え?ただの灰だよね?それドロップ品なの???】
【見たってなに?ねぇ見たって何????】
「レオ、うちドロップ品をギルドに売りに行ってくるから兄さんと帰ってね」
ドロップ品を集めながら伶於に言う。
「わかった…ぁコレとそれは持っていくな」
よく分からないドロップ品をいくつか指差す。
「りょーかい」
ひと足先にダンジョンを出ていく。
「何に使うんだ?」
伶於の頭を撫でながら聞く。
「薬」
撫でられて目を細めながら答えている。
「薬かァ……」
何かを思い出し遠い目をしている。
【……薬と書いてヤクと読む……?】
【やめろやめろ、変な想像しちまったじゃねぇか】
【えっ、どんな想像だよw】
【薬って何に使うの??】
「ポーションや毒になる」
「かなり面白いぞ」
瞳を輝かせている。
「灰はモノガタリの為だ、ただそれだけ」
灰の入った瓶を軽く撫でる。
【モノガタリ?何それ】
【また新情報出ちゃったよ……】
【徹夜確定じゃねえか……】
【お疲れ様です……】
「まぁなんというかここ数ヶ月は博士出ないと思うぞ」
「あれだ、月ボスと一緒だ」
【えぇ、それでいいの……】
【ゲームじゃん……】
【(白目)】
【何だろうな……この言いようが無い感情は……】
「でも他の
淡い希望を壊すように言ってしまった。
【え】
【え】
【え】
「言っただろ?あれは分身体だと」
首を傾げる。
「まぁ、そういうことだ」
「じゃあ」
そんな伶於を口元を緩ませながら見つめ、配信を切った。
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