第14話これは無料で見ちゃっていいやつですか??②

「着替え終わった〜、ってあれ?私の方が先に着替えおわちゃった??」

「おう、お前着替えるの早いな」

「まあ、めちゃめちゃ早く着替えるように頑張ったからね」

「なんだそれ」

「凛先輩の水着を堪能するためさ!」


楓は店に迷惑なくらいの声量でそう言って、どこから取り出したのかいつの間にか手には一眼レフカメラを持っていた。


「え?お前いつからそんなん持ってた?てかどこに?」

「女の子は武器などを隠せる特殊な空間があるんだよ」

「何それ怖すぎる」

「まあまあ気にしないでこのカメラはお兄ちゃんを尾行するように持ってるだけだから」

「え、さらっとさっきのよりすごいこと暴露するじゃんこの子」

「まぁほんとなんだけどね」

「冗談風に言ってるけどより一層恐怖心が高まっただけよ?」


そんなことを話しているうちにカーテンの奥から呼ばれる声がしたのでとりあえず楓のカメラはほっとく事にして、話を戻す事にした。(いやほっといちゃダメなんだけどね!?)


「凛せんぱーい、着替え終わりましたか〜?」

「うん、実は割と前から...」

「え!じゃあ早く言ってくださいよ〜」

「お前が出にくい空気作ってたんだろ」

「え?」

「うん....」

「...私か...ごめん」


全男子高校生が憧れる水着イベントなのにこんなにも気まずい空気が流れるなんて聞いてない。かと言ってここで俺が変に盛り上げるのもおかしいのでとりあえず楓に任せることにした。


「と、とりあえず凛先輩出てきてもらっていいですか?」

「あ、うん。わ、わかった」


そう言うと佐藤さんはゆっくりとカーテンを開けた。そして、本当に見ていいものかわからなかったので、目を閉じていたが、このイベントを逃すわけにはいかなかったので目を開けた。(まあ、誰だってみちゃうよね!?)


「!!!」

「わぁ!流石、凛先輩!可愛いですね!」

「ありがとうね!そう言ってもらえると嬉しい」



楓の言った通り流石と言ったところだろうか、水着がとても似合っていて、スタイルもとてもいい。肌も白くて水着とよく似合っている。よくよくみていると少しスタイルが良すぎるように感じたが女子の体型や水着姿なんて全然見ないためよくわからなかったから、黙っておくことにした。そしてやはり、学年一の美少女は恐ろしすぎる。俺らだけでなく店員さんまでもが目を奪われるほど可愛い。てか、美しい。


「お兄ちゃん、見惚れすぎ、そんな見るならせめて一言ぐらい言いなよ」


ただでさえ女子の水着姿なんて見たことがないのにさらに学年一の美少女の水着姿を見ることができるなんて俺の脳のスペックが足りず、ただ茫然とするしかなかったのに、急な楓の無茶振りに流石に驚いた。


「え?あっ、ごめん。えと、似合ってると思う」


(うぉぉぉぉ!やらかしたぁ!!!!!なんだよ似合ってるって!!そりゃ、似合ってるに決まってるだろ!どこが似合ってるか具体的に言わなきゃいけないだろそこは!!)


めちゃくちゃ挙動不審な返事になってしまい恥ずかしさと後悔が混ざり、髪をかきむしった。


「だ、大丈夫??でも、ありがとう!!そう言ってくれると嬉しい!!」

「ど、どういたしまして?」

「何このアオハル」


そう言って楓は誰に向けてるかわからないけどよくわからないところを見ながら親指でこの状況を指していた。


「うっせえ!お前が余計な要求したからだろ!あと、お前どこ見てんだよ」

「まあまあ、気にすんなってお兄ちゃん〜ただ、第四の壁を越えてただけよ」

「よくわからないけど怖いことだけはわかるわ」


楓は肩をすくめてやれやれと言った感じで話を終わらし、再び佐藤さんの水着姿を堪能していた。


「楓ちゃんも水着姿似合ってるね〜僕よりも全然可愛いよ」

「え!?本当ですか!嬉しすぎます!!でも、やっぱり先輩の方が可愛いです!!」

「いやいや楓ちゃんの方が...」

「いやいや先輩の方が...」

「....」

「いや、止めてお兄ちゃん??」

「え?俺?」


そう言って楓の方を振り向くと、何やらちょっとずつ人溜まりができてしまっていることに気がついた。


「てか、佐藤さん?そろそろ着替えないと...オーディエンスができちゃってるから..」

「え?...って、ほんとだ!は、恥ずかしい....」

「はーい、店員さんも見惚れたい気持ちはわかるけど仕事してくださーい」


楓は見惚れてしまっていた店員さんにそう言って、周りに人が集まっていたことを気づかせて、オーディエンスに間接的に注意させた。(お前はその姿気にしないのか???)と思ったが口にはしなかった。

流石にいくら美少女で、普段色々な人から見られていても水着姿は流石に恥ずかしいのであろう。佐藤さんは顔を赤面にし、更衣室へ行きカーテンを急いで閉めて姿を隠した。


「ちょ、ちょっと一回着替えるね.....」

「アッ、ハイ」


相変わらず脳のキャパオーバーでキョドリまくりな俺はカタコトな返事や当たり前のことを言うことしかできなかった。


(てか、本当に美少女に人溜まりってできるんだ...漫画の世界とかだけだと思ってた)


美少女も楽じゃないなとかも思いつつ、佐藤さんが着替え終わるのを待つことにした——


「え?楓は着替えないのか???」

「あ、着替えるけどなんかお兄ちゃんが『脳のキャパオーバーでキョドリまくった』とか思ってそうだなって思って」

「心読むのやめてくれ」

「へへ、何年兄妹やってると思いで?」

「はいはい、楓も水着姿可愛かったから早く着替えておいで〜」


そう言うと楓は不満がありそうだが何も言わずに大人しく更衣室に入って行った。


「お兄ちゃんのムッツリ〜」

「おい、その言葉残されると人の目が痛くなるからやめようね??」

「ばいば〜い」


やれやれと思いつつ仕方がないので痛い目線を気にしながらも待つことにした——








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ボーイッシュ系女子を助けたら学年一の美少女だった件 煮干しとたくあん @yozakurasaki

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