白百合と黒薔薇

八竜坂 合戦

第1輪

 プロローグ

 ―黒と白が交わるとき国が滅ぶであろう―

 ダルモリス王国がまだ黎明期・・・大国と戦時下に在ったときに訪れた大賢者まつろわぬ者が初代国王に残した予言と言われている今となっては書かれている石碑が綻びておりそう読めるには読めるが…という程度なので半信半疑の者が多い上に意味がわからないので歴代の王達も特段気にしていなかった

 しかし現国王であるジラーソレには心当たりがありここ数年気が気ではなかった。そして今目の前に心当たりの張本人達が王の間にて片膝を付き頭を垂れこう言った

「私リーリエ・ヴァイスが望む報奨はローザとの婚姻であります」

「オレローザ・ネェーロが望む報奨はリーリエとのその…あの…えっと…///り、リーリエとのこ、こ、婚姻で…ス…///」


 ー遠征内容報告ー


「よく無事で帰って来てくれた我が娘たちよ。それではまずリーリエから話しを聞こう」

 現女王であるジラーソレはいつもは遠征より帰還した騎士たちはさっさと休ませるのが良いと思っているので話はとりあえず後日聞く主義なのだが今回はそうではないようだ。

それぞれ帰還した2名の騎士団長も珍しいといった表情ではあったが真っ白な鎧を着たリーリエはある程度察しつつ報告した

「はっ、今回の遠征期間が大幅に延びたことまずは謝罪させていただきます。誠に申し訳ありません」

「い、いや別に時間かかるのは良いのだがそのへんも踏まえて報告してくれると助かる」

「かしこまりました」

 リーリエは真面目なので事細かく滅茶苦茶詳細に報告したその結果王が出した結論は

「つまるところ相手側が勘違いして物凄く手厚く歓迎されて帰るに帰れなかった尚且つ頼まれ事をされ断れなかった…と」

「はい…神の使者として歓待を受けた身では頼まれ事は断れず」

「私が遮ってしまったのが悪いのだがその頼まれ事というのは何であったのだ?」

リーリエは表情を変えることなく言い放つ

「黒竜退治でございます」

 その瞬間王とローザ意外の者たちがざわめいた、顔を真っ青にする者、大笑いするもの様々な反応だ

「それを頼まれ事程度に片付けたのか流石我が子。とはいえやはりそれで時間を要したのだな仕方のないことだ気に病む必要は―

「いえ、退治自体は半日で終りました。訪れたときの歓待と退治後の宴が原因で帰りが遅れたのです」

「真面目なリーリエには珍しい事であるな」

「はい、大変申し開きの程もありません」

ここでようやくリーリエの無表情な顔が申し訳無さそうな泣きそうな顔になる

「よいよい、偶にはよかろう怪我したわけでも死者が出たわけでもないのであれば」

 リーリエは深々と頭を下げ

「有難き御言葉」

 と言い下がった

「では、ローザ報告を」

「はい…」

 黒色の鎧を着たローザは報告などの仕事での会話は物凄く下手というか雑である

「オレの騎士団が死神の軍勢に間違われそれで遠征が大幅に延びましたすいません」

 分かるには分かるという内容ではあるが流石に

「詳細を頼むそれだけではよく分からん。私はお前の親だ気軽に雑談するノリで良い」

「えっと…オレが遠征で行った北方の国ソルゲニアは今若い奴らが出払っていて信心深い年寄衆が門番や警吏をやっているらしく、オレの騎士団の様相を見て死神と判断したみたい…です。それで警戒されたのか守りが堅固になり使者を遣わせたけどビビって話にならなくて……仕方ないからオレが直接話に出向いたら……ヒイッって言われて……」

「ロザまさかそれがショックで二、三日寝込んだんじゃないでしょうね?」

 リーリエが優しく聞く

「い、一日だけ…」

 王とリーリエは(可愛いなコイツ)と思った

「して、その後どうやって解決したのだ?」

「なんか様子がおかしいなと思った皇太子と皇太子妃が様子を見に来たんです。あの国の王族武闘派だからなにかあっても平気くらいの感じでしたよ」

「戦ってはおらんだろう?」

「当たり前でしょう。 戦しに行ったわけじゃないんですから」

「今回の遠征の理由覚えていたのだな」

 今回の遠征の目的は大きく分けて3つある

 1つ遠征先の小国の様子を見る

 これは可能性は低いが敵対する様子はあるのかそして後述するもう2つの理由で打撃を受け支援をする必要があるのかということである

2つモンスターの様子である

元よりモンスターは基本的に人型が多く人間と大して敵対はしておらず共存していた。が昨今凶暴化する個体が居り一般モンスターの集落の被害状況並びに現状凶暴化した個体は倒すしかないため理解を求める目的がある

3つ目が最大の理由である

「今回は特にヤマムによる被害はなかったようで良かった」

王はでっかい胸をなでおろした

「だけど妙なんだよなぁ」

腕組訝しみながら首を傾げるローザ

「何がなの?」

「一応ヤマム共の痕跡はあったんだ。ただ、ヤマム人だけ消えてるんだあいつらの道具や猟犬等々は残ってる」

「そう言われると私の方もそうだったわね・・・」

「リーリエ・・・ちゃんとそれを報告なさい。ローザ、其のことに関しては別の部隊に調査させよう」

「あ、あと皇太子から伝言が」

「?」

「『我が精鋭部隊が何者かの手によりした。壊滅や殺されたではなく消滅。貴君の部隊も注意されたし』と、帰りに言われたんで部下たちが大変だったよ」

その場が凍りついた。その場にいた参謀は王に一礼して退出、近衛長や情報伝達係も参謀についていった

「なるほど・・・これは大変なことになりそうだな。そんな中部下たちをまとめご苦労だったローザ。あとでスイーツでも買ってあげましょうね」

「ありがとう!!」

この場に残っていたものは最後にほっこりした

そして冒頭に戻る―

「なるほど?なるほど〜なるほどね~う~む本当にそれで良いのか?」

勿論と返す二人

(参った・・・予言は迷信と思っていてもなんとか食い止めたいと思ってしまう。この国では同性婚は禁止されていないというか女しか居らん!我が子として二人を育てたが二人は血は繋がっていないからしようと思えばできる・・・うぅん、困りましたわ、できれば彼女たちのお願いは聞き入れたいもの・・・でも・・・あ!そうだわ!課題を出せばいいじゃない!王らしく親らしく)

「もう二人の気持ちはわかったわ。でもねリリー、ロズの二人には試練を与えようと思うの」

「へ、陛下 素に戻っております」

「あら!ウォッフォン!すまぬジェニー宰相・・・やっぱりごめんここは母親としての私でいいかしら」

「仕方のない人ですね相変わらず。先程の報告で混乱してほとんど出払ったのでいいですよ」

「ありがとう!貴女も変わらず優しい子で友として嬉しいわ」

とイチャつき始めた

10分ほど続いたのでゲンナリしたリーリエが

「あのそろそろよろしいでしょうか?ロザが茹でダコのように真っ赤になっておりまして」

意外とピュアなローザは頭から湯気が出るほど真っ赤になっていた

「あら、ごめんなさいね・・・でもなんでそんなに怒ってるのかしら」

リーリエ、ロザ、その他宰相以外にも残っていた数人が

(ほんとこの人は緩いというか鈍感というか・・・そもそも怒ってない)と思ったが面倒になるのは嫌なので黙っておくことにした

「母さん結局試練ってなんなの」

なんとか落ち着いたローザが聞く

「そうね、あなた達には学園の先生になってもらって時期騎士団長候補を育て上げてもらおうと思うわ」

「はっ・・・はいぃぃぃ?!」

「なななんで、訳がわからないはぁ〜?!」

混乱する二人を見ながらニコニコ微笑ましく思うジーラソレであった

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白百合と黒薔薇 八竜坂 合戦 @jackcrown

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