茉琳と茉莉の心のアップリケ 〜残り物に福はあるなり〜

@tumarun

第1話 砂に溺れる

 翔と茉琳は公園にやってきた。小さな公園で砂場とブランコがあるだけのもの。ただ周りにある花壇には花がいっぱい咲いている。今はチューリップが見頃。


「青いつくしっていうからなんだと思ったよ」

「車の中から見たら青くて小さいのが見えたなり」

「これはムスカリっていう花」

「ムフッ、ムシュカ、ムスク、ムックリ、ムシムシ」


 茉琳は言いずらいのかボケたことを呟いている。


「ムスカリ。形は近いけど花だから。つくしはシダ類」

「ヴー」


 翔は嘆息して、


「でもこの青い色は好きだね。少し紫が入ってる」

「そうなのよぅ、綺麗な色だから一緒に見に来たかったなりな」


チューリップが咲いている花壇の周りにムスカリが群生。チューリップの赤とムスカリの青が見頃とに調和していたりする。  

掛けるかー目を離した隙に茉琳はしゃがみ込んで何かをしている。


「で茉琳さんや、ナニしてるのかな?」

「砂場で山を作ってるなし、。隣に見事な山が作られてるなり。これは私に対する挑戦っえ」


 俺たちがくる前に子供達が遊んで作ったものだろう、茉琳は手が汚れることを構わずに山を作っていく。


「私のはトンネル掘るなりー」


 と、盛ってある砂に手を差し込んでいく。


「つっ、いたぁいー」


 茉琳は突き入れた手を引っ込め、反対の手で摩っている。


「どうしたの、大丈夫?」

「指先がシクってきたっえ、いたいなりぃ」


 翔は彼女の指先を見たけどキレたり裂けたりはしていないかった。爪はピンクベェージュに塗られている。その下にはベースコートもしている。実は最近までジェルネイルをしていた。指先に花とかを飾り、色を載せていくネイルアートである。


「まだ、養生中だから優しくしないとだね」

「わかったなりー」

「指先洗うからそこのブランコに乗って」

「ブランコなんて久しぶりなりよ」


 茉琳がブランコに座ったのを見て翔は背負っていたバックバックからミネラルウォーターをのペットボトルを出す。指先にかけてから手持ちのハンカチを濡らして拭いてあげた。


「つっ、しみるぅ」


 茉琳は顔を顰めてしまった。


「爪の間に染みたかな。我慢、我慢だよ」

「はいなしな」


 少し目を潤ませて茉琳は返事をしてきた。よく見ると鼻にはピアス跡の凹み。耳の軟骨にもボディピアスの跡を見ることができた。


「ありぁとなりー。ねぇ翔、背中押してくれるっえ、久しぶりのブランコあそびたいなり」

「良いけどお尻抜けるかな?」

「そこまでおデブじゃないなりー」


 翔は彼女の背に回るとゆっくりと背を押してあげた。


「ねぇ翔。ブランコって小さい時から乗ってたなしか?」

「親に押してもらってたかな。少しして自分で乗ったよ。どこまで跳べるか試したね」

「中学ぐらいからは乗ってないなり、友達は彼氏とおしゃべりに使ったって言ってたっえ」

「大人になってもデートの途中乗ったりして」

「結婚して子供ができたら……」


 話の途中に茉琳の目から雫が二つ流れた。茉琳には、過去、命を賭して愛する彼氏がいた。既にこの世には存在していないが彼との間には………、


「茉琳、まだ爪痛いの?」

「痛くないなりぃ、大丈夫なし」

「子供ができたら一緒に乗って遊んで大きくなったら見守るっえ、その子供もも同じなり)


 茉琳は続けた。


「おばあちゃん、おじいちゃんになっても一緒に乗って日向ぼっこするなしな)

「なんか壮大遠大よなドラマだね」

「だから、だからっえ、ブランコに乗ってる茉琳を子供っぽいなんて思わないなり」


 翔は目を見張った。ちょっと見くびっていたのかもしれないと。


「ブランコは年齢制限ないなりよ」


 ドヤ顔で茉琳は話す。


「じゃあ、押してよ翔」


 押して揺らしてやると笑って喜んでいる茉琳がいた。楽しみすぎた結果、


「あっ」

「きゃぁ〜ぁ」


 翔が勢いをつけすぎ、茉琳の履いているローファーが脱げて飛んでしまった。慌てた茉琳が手を離したものだから、ブランコの上で見事な後転を決めて落ちた。 四つん這いで落ちたこと、茉琳が作っていた砂山が良いクッションになったことで怪我しなくて済んだ。自分で作った砂山に頭からダイブした茉琳は砂を噛んでだのか、ウゲーとした顔をしている。


「よかったよ。茉琳はアクションギャグ担当で」

「酷いなりー」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る