第3章:猟魔群英

(1)

 冒険者ギルドが解散させられて3ヶ月。

 それ以前は、ダンジョンなどの一般市民が普通は立ち入らない場所は冒険者ギルドの担当で、都市まちの中にモンスターが現われた時は、退魔師ギルドやスーパーヒーローギルドが担当していた。

 けれど、「外」から来る脅威から都市まちを守り続けていた冒険者ギルドが理不尽な理由で解散する事になった結果……モンスターが市内に出没するのが日常茶飯事になってしまった。

「急いで〜ッ‼」

 僕は、スーパーヒーローギルドに移籍したが……何故か、同じパーティーだったドワーフ戦士のシュタールは死んでいて、エルフの魔法使いのシュネと「聖女」ローアは指名手配犯になっていて、結局、冒険者ギルド時代にランキングが1つ上だった「光の剣士」シャロル達とチームを組む事になった。

 しかも、シャロルのパーティーの「僧侶」役だった巫女サーラは、何故か、スーパーヒーローギルドに入った時の「身体検査」で別チームに加えられる事になった。

 噂では「悪の力でより大きな悪を討つ」ダークヒーローチームらしい。

 何がどうなってるんだ?

 善属性の神様の力を借りた「神聖魔法」の使い手の筈のサーラが「悪には悪をぶつけんだよ‼」的なチームの一員なんて……?

 ともかく、新しいチームは「聖騎士」のボクと、「サイキック」と呼ばれる東方から伝わった特殊な「魔法」を使って近接戦闘を行なうシャロル、援護・後方支援向きの魔法を得意とするジュリアの3人……ヒーラー役が足りない、いびつな編成だ。

 今日も今日とて、ある飲み屋街に、魔族の戦士に率いられたゴブリン達が現われ、暴れているらしい。

「うわああ……ッ⁉」

 ようやく、現場に辿り着いた途端、路面に転がってた何かに足を取られて転倒。

「えっ?」

 僕の足下に有ったのは……何者かにブチのめされて、気絶してるか死んでるらしいゴブリン。

「な……なによ、これ?」

 あまりの光景に……シャロルの声が震えていた。

 現場に転がっていたのは……何十匹ものゴブリン達。

 のだ。

「中々やるな。だが、この俺には……」

 そう言っているのは、手にバカデカい剣を持った頭に角が有る以外は人間そっくりの魔族だ。

 僕は聖剣を引き抜いた。

 この聖剣を使えば、聖騎士パラディンとしての能力を使える。もっとも、「治癒」「悪を討つ一撃」「解呪」のどれかを合わせて1日たった3回だけなんだけど……。

「うわああああッ‼」

 魔族とは言え、背後から襲うのは卑怯かも知れない。

 しかし……どうやら、こいつは上級魔族らしい……すぐに倒さないと、一般市民に被害が出る。

 僕は、1日3回分だけの力を全部「悪を討つ一撃」に変えて……僕が剣を振り降すと、光の刃が放たれ……。

 放たれ……。

 放た……。

 放……。

 嘘嘘嘘嘘嘘……。

 「悪を討つ一撃」は、魔族の体を素通りして、どっかに消えた。

「ん?」

 ようやく、その時になって、その魔族は僕達に気付き、振り向き……。

「えっ? まさか……ゴールさん?」

 そ……そんな……何で……冒険者ランキング3位のパーティーのリーダーだった「剛力闘士」ことゴール・ナハバールが……魔族になって……?

「誰かは知らんが……」

 そうなんだよ。

 冒険者ギルドに居た頃はランキングに天と地ほどの差が有ったんで、僕の事なんて知ってる訳が無い。

「その名は捨てた。俺は闇堕ちして、魔王軍の将ラゴールとなったのだ。この都市まちの奴らに、自分達が犯した罪を償わせる為なら、魔王にでも魂を……グエッ?」

 呑気に、そんな事を言ってた、ゴールさんだが、魔王軍の将ラゴールだかの脇腹に……どう見ても居酒屋のウェイトレスにしか思えない格好の女の子が廻し蹴りを叩き込む。

 丁度、肝臓の真上あたり。

 鎧が歪むほどの強烈な廻し蹴り。

 ドオンッ‼

 たった、一発で……冒険者ランキング3位のパーティーのリーダーの成れの果ては地面に倒れ……。

「ど……どうなってんの、これ?」

「わ……わかんない……」

 魔族の証である角は……路面に倒れ伏した自称「魔王軍の将ラゴール」の頭から取れていた。

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