第50話求婚の後日、イーサンが聞いた祖父からの説明

 「私は親友のあいつのことが本当に大事で、人としても尊敬していた。人間なんて所詮煩悩だらけで、一度相手のそれを気にしてしまうと、どうしても目がいってしまう。そんな話をあいつにしたら、どんなやつでもピュアな部分がわずかでもあるからそれを探せってあいつに言われたよ。絶望する程憎らしいやつにも何かしらあるんだって。王太子なんて地位にいたら嫌なものを多くみる。それでもあいつはその考えを捨てなかった。そんなあいつとその妻が生死不明なんて情報が入った時には、喪に服すレイルズに奇襲かけたタイール国にすぐにでも怒鳴り込みに行きたかった。父に冷静に、そんな時こそ冷静になれって叱られたよ。お前からみたらひいお祖父様だよ。」


 「腹黒なお祖父様が冷静でない姿が想像できない・・・」


 イーサンは眉をひそめる。


 「はは。流石にあの時ばかりはねぇ。ブチ切れても表向き冷静な顔した上で相手を徹底的に懲らしめる発想よりも、怒りのままにぶん殴りたくてね。父に言われて、タイールに日頃から腹立てしてる周辺国に協力してもらう形に変えた。輸入、輸出もストップ。タイールから他国へ入る税はありえないくらい高額。国境にありとあらゆる武器を設置。他にも色々。事実上タイールは干されかけた。昔から色々やらかすのでタイールに嫌な感情をもつ国だらけだったし、懲らしめは非常にスムーズだったよ。戦争は終戦。本来レイルズ国も強かったが、あの日は病死したレイルズ王の国葬終えた直後でね。」


 「我が国との合併は話し合いの上での合意ですよね。亡きレイアルズ公爵であるレイルズ元王太子の希望。」


 「あいつ、頑固でさ。昔から友好国だったし、お互いの国の危機にはお互いが助け合ってきたから今度も別に合併しなくてもと話しても蹴りやがった。先に国民を安心させたいし、侵略されかかった責任もとりたいって。当時のレイルズ国民は誰も王太子を責めてなかったし、むしろあの状況で国民のために耐えたこと、一度生死不明になり、国民は絶望したが、タイールの暗殺を逃れ、無事な姿をみせてくれて安心させたことで国民にとっては希望だったんだ。

そりゃあ、過去の歴史の中で、今までの中で一番援助が必要な事態になり、金もかかったが、それがどうした、お互い様だと我が国は言ったけど、引かないんだよ、あいつ。」


 「それで合併になったのに、国の復活とは?いくら元王太子が亡くなったからといっても、約束に反するのでは?」


 「そりゃあ、合併契約時の内容の解釈を利用したのさ。

合併後も元レイルズの土地は元レイルズ国民達が管理すること。もちろん復興は援助する。


合併したことで関税等もなくなるが、新たな部署作る手間は避けたいから、関税以外はこれまで通りの形を保つ。


元レイルズ王太子はアドリウス筆頭公爵家のクラーク公爵家と同じ、筆頭公爵家の1つとなる。


元王太子が倒れ亡くなった場合はレイアルズ公爵家の管理する土地、つまり元レイルズ国に関してのその後のことはアドリウス王家に委ねる。」


「委ねる・・・。」


「そう、元王太子がいなくなっても、アドリウス王家が寄り添ってるから安心しろと、一見そう思えるだろう?」


「国復活とは思ってなかったということですか?お祖父様・・・黒い・・・。」


 「だって、私からすれば合併は一時的なものだ。あいつが臣下になるなんてことも嫌だった。信頼関係は抜群だから、側近になれば誰よりも心強い。でもな、私にとっては同じ『国を担う立場』の親友なんだよ。実際、合併の件だって国民のことばかり気にする、立派な、王の器なやつだ。本人は、いや、元王太子妃のウィノア含めて本人達は自分達のことをわかってなかった。


 今回アドリウス王家から説明受けたウィノアが固まったと聞いて吹きそうだった。ウィノアがねぇ。」


 「何故今なんですか?おかげで僕がシルヴィアを一気に押す・・いや、結局それのおかげで夢が早く叶いそうなのか?あれ?」


 文句を言いかけてイーサンは思考が止まる。


 「別に私は今である必要は感じてないぞ?現王夫妻の発想だろ?息子の婚姻と隣国の復活の両方をめでたさ続きで発表したかったんだろ?というか、いたずら好きだから国民を喜びという形で驚かしたかったんだろ。そもそも合併後も国民は特別地域的な感覚というか、隣国という感覚のままだったし。元々国民同士も仲良いし。そりゃあ王家がそう仕向けた部分はあるけどな。」


 「現王は貴方の息子でしょうが。待て位言ってほしいのですがね。せめて僕の成婚が終えて、確実にシルヴィアはアドリウスの王太子妃になったと、僕の妻になったから手出しできないぞと周辺国に知らしめて落ち着いたあと位に。」


 「仕方ないだろ。あいつ、私の子どものくせに、腹黒になぜかならず、単なるいたずら好きな人間になっちゃった。しかも好むのはハッピーなもの。」


 「なっちゃったって・・・・・。」


 イーサンは両親へ怒りを持つ時間がもったいなくなってしまった。

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