第32話シルヴィアの祖母

 「奥様。昨日に続いてお客様です。今日はアポ無しの。」


 シルヴィアの祖母は眉間にシワを寄せた。次男の結婚の話が決まっだ後、しばらく客が続いていたが一旦落ち着いたばかり。

 昨日の客は事前に連絡が来ていた。ただし、シルヴィアが公爵家に戻ったことは知らなかったようで、こちらに届いた。たまたまシルヴィアが家出騒動起こし、そのまま屋敷へ泊まっているのですぐにシルヴィアに手紙を渡せた。


 でも、今日の客は先触れなし。


 余程の急ぎか、単なる礼儀知らずか、通りがかりの気まぐれか、もしくは・・王家の者。


 だが、の件ならば連絡をしてくるはず。

 

 「お客様のご要件は?」


 「シルヴィアお嬢様に会いに来たと。」


 「殿ね。」


 「はい。イーサン王太子・・・え?奥様?」


  元レイルズ王太子妃、ウィノアは自ら玄関に向かい、扉を開けた。


 「無礼と理解した上での先触れ無しの訪問、誠に申し訳ありません。

 ご無沙汰しております。レイアルズ公爵夫人。」


 「ようこそと言いたいところですが、頭をあげてくれませんか?殿下。素直に誰に対しても誠実に謝る事ができる王太子の心の豊かさはとても感慨深いものがありますが、私相手にそんなに深く頭を下げてもらっては困ります。」


 「貴方様は我が国の国賓扱いの方です。」


 「いいえ。私はあなた方の臣下です。お間違い無きよう。」


 「私は両親からは臣下の名を隠れ蓑にした大事なお客、もしくは我が国の友人として扱うよう申し付けられて育ちました。」


 

 意外にタヌキだったか、前アドリウス国王。

 なるほど。は現国王の案ではなく、前国王からのものだったのね。



 ウィノアはイーサンの顔をみつめる。

 シルヴィアが公爵家に完全に帰った事でイーサンの目が活き活きしているのがよくわかる。


 「ところで殿下。先触れも無しにシルヴィアに会いに来るとはどんな急ぎですか?

 あいにくシルヴィアは今は客人と面談中でして・・・。」



 「客人が居たのですか。それは大変失礼致しました。」


 「昨日来られたシルヴィア宛の客人でしてね。お泊まり頂いてるのです。相談がまとまったら国にお戻りになる予定で。」


 「国に戻る・・・・・お泊まり・・・シルヴィア嬢の学生時代の友人か何かで?」


 「当人達は友人と言ってましたね。隣国の侯爵令息ですが、大事な相談があるとかで。」


 


 しかも相談がまとまるでここに滞在が続く?




 イーサンはシルヴィアを他の男性に奪われるヘマはしないよう常日頃心がけている。


 でも、イーサンだって年頃の青年。急ぎ会いに来た理由は、妹に言われた内容を振り返り、大切な事を伝えたかったから。そこへ虫かも知れない者が現われたら流石にいい気分はしない。




 イーサンの表情の変化をウィノアは見逃さなかった。



 「殿下。孫は向こうで面談中ですよ。殿下がその場に行っても、おそらく2人は嫌がらないと思いますし、隠し事なく面談を続けると思います。むしろ意見を求められるかもしれません。

 そのような表情を臣下の私に見せる位なら向こうへどうぞ。」


 

 やれやれ、まだ最終結果はでてないのに、今から男の孫が一人増えた気分だわ。



 レイアルズ公爵夫人ことウィノア元レイルズ王太子妃はため息をついた。


 


 シルヴィアはクラーク公爵令嬢であると同時に、世が世ならレイルズ王女でもあったのよね


 政略結婚としてみても、そんな世だったら本人の意思関係なく殿下との婚約話は出ていたのかもしれないわね・・・

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