第12話あれ?

 王妃様のお手伝いは週1で行くようになったわ。

 今日がお手伝いの初日。夢中になっていたら、時間はあっという間に過ぎていて、終わりの時刻になっていたの。そうしたらイーサン兄様があらわれた。


 「シルヴィア、今から帰るんでしょう?僕に君を送らせて。」


 今日のイーサン兄様の笑顔は見馴れた優しい笑顔で何だかホッとした。この間の笑顔とゴゴゴって変なオーラ、私の気のせいだったのかな?


 一緒に廊下を歩いている間、イーサン兄様がこの間の話の続きをし始めた。


 「家族ぐるみのお茶会の日にち、候補の日をいくつかあげて、クラーク公爵に手紙で送るね。」


 「ありがとうございます。楽しみにしてます。」


 「楽しみにしてくれるなんて僕こそ嬉しいな。シルヴィアが小さい頃気に入っていたクッキーも用意しておくね。」


 「わぁ、本当ですか!」


 思わずシルヴィアの素の部分が出てきそうになる。


 そんな時だった。


 「あれ?シルヴィアじゃない?」


 少し離れたところからそんな呟きが聞こえた。


 「え?」


 呼び止められた訳ではないが、シルヴィアは聞こえた声に反応し、歩みを止めて視線を動かす。


 「やっぱりシルヴィアだ。」


 声の主が近付いてきた。それが誰か気付き、シルヴィアは驚く。


 「まぁ、久し・・・あっ。」


 ここが城の中であることを思い出し、この人がいるということは城の客人であると気付き、慌ててシルヴィアは声の主にカーテシーをし、挨拶をする。


 「ご機嫌麗しゅう、テルマ殿下。ご無沙汰しております。」


 「シルヴィア、堅苦しいのは無しにして。本当に久しぶりたね。この間のランチ、僕は出席できなかったからさ。」


 所用で城を訪ねてきていた隣国のテルマ第二王子だった。


 「シルヴィア、テルマ王子と知り合いだったの?」


 イーサンが驚いたように質問する。


 「はい、イーサン兄様。学園で一緒に過ごした仲間でした。テルマ殿下も私と同じ飛び級組みで。この間、仲良しグループでのランチに殿下も参加予定だったのですが直前に欠席の連絡があって、皆と残念がっていたんです。」


 イーサンとシルヴィアのやり取りを様子をみていたテルマが思い出したかのように話し始める。


 「そうか。そういえばシルヴィア、時々話していたね。仲の良い優しい年上の幼馴染がいるって。イーサン王子の事だったんだね。

 ふーん、なるほどね。」


 テルマが何か思惑があるような言い方をする。


 ぎゅっ。


 突然イーサンがシルヴィアの腰に手を当て、寄せる。


 「え?イーサン兄様?」


 「うん?なあに?シルヴィア。」


 イーサンがシルヴィアに笑みを浮かべるが、シルヴィアは少しビビる。


 「イーサン兄様のその笑顔、少し怖い気がしますが、何か怒ってらっしゃいます?」


 「僕が?いつもと同じだよ。気のせいじゃないの?」


 テルマはイーサンの様子から彼のシルヴィアへの想いに気付く。肝心のシルヴィアの彼への反応が異性というより、幼馴染への反応であることも。



 滞在中面白そうなものが見れそう。

あの自分の事に関しては別人のように鈍感なシルヴィアの恋愛沙汰がみれるなんてさ。


 テルマは心の中で吹き出していた。


 「イーサン兄様、あ、あの?」


 腰に当ててるイーサンの手の力がやや強くなり、シルヴィアは困惑する。そして自分の表情が作り笑いになるのを自覚する。



 だからね、イーサン兄様。背後からジワジワ滲み出ているそのオーラは何なのですか?

 少し黒い気がします。


あれ?


 この間のゴゴゴも気のせいではなかったという事?

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