④-3

「おかあ...さん?」


溶岩のような炎の中には確かに何かが蠢いているが、それが明白に見えることはなく、悲痛の叫び声だけが暗い洞窟の中に人がいるかもしれないと思わせる。


のどかは数えることはできない叫び声のなかに、母親の気配を感じた。


「おかあさん?!おかあさん?!!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!」


のどなはうろたえて、そして地面に額を押し付けて泣き叫んだ。


「お願い、やめて!!!お願い!!!おかあさんが!!!!助けて!!!やめてぇぇええええええ!!!!!」


会いたかった家族。

何があっても耐えてきた。

いつか笑える日が来る。

たとえそれが息を引き取った後だとしても

地獄に行くようなことはしてないから

きっと天国に行ける。

そしてそこで、家族と再会して、笑い合って暮らせるんだ。


のどかの頭の中の理想の死後さえも叶わない。



「ぎょうちゃん、どうしたの?顔を伏せて。お前が苦しめていた女が苦しんでるんだぞ。喜ばしいことだよ。」


「違う!!俺はこんなことをしたかったんやない!!なんでこんな惨いことになってんねん?!」


「...なぜ?なぜというのは、どういうこと?」


「業火に焼かれるような人間じゃない!!!なのにどうして!!!!」


「黙れ!!!!!」


ドン!!!


行疫の上に光の玉が円を書き、百合の花の形になって落ちた。行疫は痛みに叫び狂う。


「業火に焼かれるような人間じゃない?それは間違いだよ。彼女は、僕の大切な叶を奪った。生きている時に立派な罪を犯したんだ。でもね、ぎょうちゃん、僕は気分がいいよ。だって、あの女が産んだ叶との子どもたち全員が苦しんでる。親の罪滅ぼしをしてるんだ。何も悪いことなんてしていないのに、ぎょうちゃんの怒りを暇つぶしでぶつけられて奈落を歩くような人生を歩んでいる。僕の加護があるから、まだ、生きながらえてはいるけど。」


琥珀色の目がまどかを見つめたその時、一瞬の出来事だった。光り輝いていた珠が、業火の洞窟の中に飛び込んだ。


「叶!!!!!」


珠が人の形になり、のどかに遠目から話しかける。


『ごめんね、のどか...』


行疫が隙を縫って光の球を蹴飛ばし、それは業火の中に消えた。


「だめぇだぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」


「おとうさん!!!」


「ひゃっひゃっひゃっひゃ!!!ザマァみやがれ、瑠璃光!!!お前の大切な男はこれからは業火で焼かれるわ!!真頼と一緒にな!!!!」


「...殺す。」


琥珀色の目が瑠璃色に変わり、一気に当たりが冷え凍える。


「さっぶ!!!でもな、お前も知ってるはずや!!押さえつけることはできても、俺を消すことはできへんってなぁ!!それに、これ以上ここにおると、その女は死ぬぞ?お前の大好きな男に顔も心もそっくりな人間がな!」

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