ダンジョンでニートになろうとしたら、家族が付いてきた件

果報は寝て待つ

prologue

【プロローグ】俺はニートに!なる!!!


「秋原!! 秋原誠ぉぉ!!!」


 出社して腰を下ろした直後、糞上司が顔を真っ赤にしながら俺の名を呼んだ。理由は分かる。そしてこの後の展開も。


 遂に来たか、とにやける顔を抑えつつ立ち上がる。無論、誰も目を合わせようとせず机と仲良しだ。


 当然だろう。俺が今勤めている会社は真っ黒も真っ黒。法律を1つも守ってないのではないかと思うほどのブラック企業だ。勿論辞職は元より、退職代行なども平気で無視する強引っぷり。巻き添えを食らえば1日どころか一か月は帰れなくなるだろう。


「貴様! 貴様! 自分が何をしたか分かっているのか!!!!!」


 つばを吐き散らしながら叫ぶ上司に「あー……何かありましたかねぇ」とすっとぼける。勿論、理由も全部知っているが。


「~~~! こ、この! この!」


 怒りで言葉にならない上司は目を真っ赤に充血させ俺にとっての最高の言葉を吐き捨てた。


「首だ!!! 今すぐ出ていけ!!! 落とし前はつけさせるからな!!!」


 その言葉に俺は目が輝く。だがそれを見られるのは駄目だ。素早く顔を伏せ「分かりました」と会釈すると素早く鞄を手に事務所を出た。


「――っくぁああああ!!! やった! やり遂げた! 遂に!」


 外に出た瞬間、思わずガッツポーズ。この日を今か今かと待ち付け早半年。地獄から抜け出せた事にこれまでに感じたことのない解放感を得ていた。


 俺、秋原誠22歳。ついに自由を得た!


 ルンルンと上機嫌のままネクタイをゴミ箱に放り投げ、早々に地下鉄に乗り込む。


「っと、母さんたちにはちゃんと連絡しとかねぇとな」


 ポチポチと文字を打ち、RINEを送信する。内容は簡潔で『会社首になった。暫くは自由に旅とかしたいから帰らない。心配しないで』というもの。勿論、旅は嘘である。


 俺は1年前から計画していた計画を実行するため、家と会社の中間地点にあるダンジョンへと向かう。何をするかって?


 ダンジョンで!! ニート生活だ!!!!





 という訳でやってきましたダンジョン。ダンジョンに入るには国家資格が必要であり、色々と制約もある。


 第一に、15歳未満は入れない。第二に、ダンジョン内で死んでも自己責任。

 他にも色々あるが、ようは世間に『子供は危ないから入っちゃダメ、それ以外は自己責任』っていうポーズを取っているのだ。ダンジョン発足時にはそんな法律も資格もなく、大人だけではなく数え切れない子供も命を落としたらしい。その時代は暗黒時代ともいわれている。


 今は黄金時代後期と言われていて、ダンジョンの中を探索する装備や道具も充実して来ている。その主たる物は『ドローンカメラ』と呼ばれるものだろうか。球体のカメラに飛行型モンスターの羽を装着し空中を飛べるこのカメラは、ダンジョン内で録画や撮影が出来るものだ。

 特殊な電波をダンジョンに流すことが出来るようになってからは、それを使って配信をしている人も多い。


 因みにそういった人間は『Dライバー』と呼ばれている。

 その名の通り『ダンジョンライバー』の略だ。


 Dライバーにも色々種類があるらしいが、良く分からない。姉と兄がDライバーとして働いているがあまり興味が湧かなかったので知らないままだ。


 閑話休題。


 ダンジョンに入る為の資格は高校入学直後に取得済みだから問題はない。定期的に中に入らないとまた受講しなければならない面倒臭い制度もあるが、まぁ命がかかっているから当然の処置だと思う。

 寧ろ日本にしては緩いとさえ思える。それだけダンジョンには魅力が多いのだ。

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