第7話 夜襲

「アレックス、僕に魔獣とか獣の特徴を教えて欲しいんだ。いいかな?」


 僕の罠魔法はアレックスとここに来るまでに結構試したけど鉄で出来た罠以外は作れないみたいなんだよね。

 アレックスの話だと狩りに使う時の罠の種類も色々教えてもらったんだけど、どうしても柔軟に動く、例えばツタとか縄とかっていう部品が必要になるんだよね。でも僕、鉄で出来たものしか作れないし、って事で今はトラバサミしか作れてないんだよね。


 でもトラバサミってあんまり大きいと獣も警戒して踏んでくれなかったって話を聞いてイノシシの足が余裕を持って挟める程度に作っていたんだけどそれだと相手が踏んでくれるかは半分くらい運になっちゃうし、アレックスから習性とか習ったらちょっとは罠にかかってくれる確率が増えるかもだよね?


「おう、別にいいぞ?じゃあまず、そうだなぁ、さっきのビックボアから話すか。あいつらはな」


 アレックスの話は不思議と苦にならない。口調は粗暴だけれどしっかり僕のことを思っていることが伝わってくるからかな?


 ちなみにビックボアとかいうさっきのおっきいイノシシはとにかく真っ直ぐ突っ込んでくるのが特徴らしい。うん、さっき見た通りだね。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 退屈だったはずの街への旅がアレックスの講義のおかげでちょっとだけ楽しくなった日の夜。


「今日はありがとうね色々教えて貰って。勉強になったよ!」


「は?何言ってんだ?明日もやるに決まってんだろ?今日教えられたのなんてめちゃくちゃ弱い魔獣と獣の知識だけ。それこそ入門編みたいなもんだ。まだまだ教えたりないぜ?」


 意地の悪い顔をしてそう話すアレックスの顔を見て明日からもこの講義がずっと続くと知った僕の顔を見てさらにアレックスは声を出して笑うのだった。


「って、おいおい!鍋焦げてんぞ!?」


「あ〜っ!ご、ゴメ〜ン!!」


 その日の夕飯はちょっとだけビターで大人な味がした。


  ...同日、深夜


「ちょっとトイレ行って来るわ...」


 一緒のテントで寝ていたアレックスがモゾモゾと体を起こしイソイソとテントの外へと出ていった。


「ふわぁ〜...。行ってらっしゃ〜い、気をつけてねぇ」


「お〜...」


 あぁ、これは完全に寝ながら行ったなぁ。と思いながら見送って少し。


「ギャアァァッ!!!スミスッ、助けてくれェッ!!」


 アレックスが叫びながら魔法を発動したのかテントの中からでも少し光が入ってきた。


 何かあったんだ!


 アレックスの呼び声で完全に目が覚めた僕は着の身着のままテントの外へと飛び出した。


 テントの外に出た先にはアレックスが防具をつけないままフォレストウルフ?たちに囲まれいつもの大剣ではなく小回りの聞くショートソードを構えて牽制をしていた。


「アレックス大丈夫!?待ってて今助けるから!」


「助かる!なるべく早くしてくれよ!?」


 必死な顔のアレックスが叫ぶと同時にフォレストウルフ?達は僕の方にも走ってきた。

 きっと油断しているとでも思ったのだろう。


「やばッ!?」


「スミスッ!!」


 いや、実際僕は焦ってる。人生最大のピンチだ。こんな早い速度で近ずいて来たのは初めてだったから。


 きっとトラバサミは今から仕掛けても効果範囲が狭すぎて簡単に避けられてしまうだろう。誘導役に数個しかければ引っかかってくれるかもしれないが、いっぱい罠を仕掛けるには僕の魔力が圧倒的に足りない。


 ...新しい奴、試してみよっかな?


「頼むから引っかかってね!?」


 新しく出現させた罠は斜めに立てた槍を僕の周りに半円状で展開したものだ。


 出来ることなら魔獣の目の前に罠をいきなり設置!みたいな事をしたいけど魔力の操作がまだ拙い僕では発動するのに1.5秒くらいかかってしまうからできない。


 て、罠の効果はというと。


「「「ギャインッ!?」」」


 こっちに向かっている五体のうち三体が罠に引っかかり悲痛な叫びをあげる。

 当然僕の罠魔法を避けたフォレストウルフ達は僕の罠を避けるように半円状に左右へ別れ今すぐ噛み付いてやるっ!といった目で僕を睨みながら走ってくる。


 もちろん回り込まれて自分の罠で袋小路にされるのはまずいので僕の目の前にあった槍を自分だけが通れる広さ分消滅させ、その作り上げた隙間に体を滑り込ませた。


 通り抜けられた!!


「...グッ!痛ゥッ!?」


 後ろを振り返ると回り込んできていたうちの一体が通り抜ける寸前の僕の足を噛んでおりそこから血が出ていた。

 とはいえこのままだと完全に脚がやられてしまう。


「オ、リャアァァッ!!」


 僕は激痛をこらえ、噛んできた奴の足元にトラバサミを設置した。


「キャォンッ!?」


 設置した瞬間、フォレストウルフは足に突然生じた激痛に耐えられず咄嗟に僕の足を噛んでいた口を開け後退しようとする。

 かなりの激痛で泣きそうになるが、口を離した隙をつき、もう一体が追いついてくる前に急いで噛まれた足も槍の中から引っ張り出す。


 当然通り抜けた先には罠にかかった3匹のフォレストウルフがいる。全部を仕留めるだけの余裕はないので一番まだ動けるかな?って奴の喉笛を持っている剣で掻っ切ってやる。

 その頃にはアレックスが必死な表情で僕の近くに来ており急いで足を槍で刺されている個体の首を跳ねていた。


「もう、ドキドキしたんだからね!?大丈夫??怪我してない?」


「それはこっちのセリフだっつうの!俺が前はってたのにスマン!俺の方に来ると思って油断してた!!終わったらすぐ手当するから!」


 さぁ、残りニ体。怪我して動けないのも合わせると三体か。頑張ろう。

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