第52話 解決?
こういう場面で絶対に前に出たがらないタイプの鈴木からの援護に、一朗も熱くなった。
オリエンテーリング以降あんま絡んでないのに、助けてくれるのかよ……。
義理堅いヤツだな……。
そしてそんなポジションの鈴木でさえそう考えているのなら――と、この考えを周囲も支持し、それを口々に表明し始める。
「え、マジで犯人、雪野さんと黒戸さんの人気に嫉妬して、嘘ついてるだけのやつじゃない?」
「最初からありえないと思ったんだよね」
「明らかに狙いはそれだよねー」
「なんかあれ以来気まずい空気あったよね。なんか犯人の思う壺みたいでムカつくわー」
掌をくるりと回しているように見えるが、実際に皆も最初からその可能性を少しは疑っていたはずだ。
だからこそ、付け入る隙があると、一朗はそこに勝算を見た。
こうなってしまえば、もう流れは止まらない。
岩田がクラス中に聞こえるように提案する。
「ねえ、今日早速黒戸さんも含めて、みんなで遊びに行かない? ねえ黒戸さん、いいよね?」
「あ、ああ、ボクはそれでいいけど」
「ユキノンもいいよね?」
「もちろんだよっ!」
「じゃあ決まりねー! 今日の放課後はみんなでカラオケとボーリング決定!」
打って変わって、クラスの雰囲気が一気に明るくなった。
これで前の一件は事実無根の、質の悪いやっかみだったと他のクラスにも周知されるはず。
想定した通り、最良では無いが、いい決着をした。
――だが、一朗は内心で謝罪する。
……すまんな雪野、黒戸。
事実とは異なり、結局はお前らの本当の関係を貶すような、強引な形の解決になっちまった……。
だがこれで、二人で会っていても怪しまれることはなくなった。
こんなやり方で悪いが、許してくれよ……?
この日の放課後、岩田が提案したカラオケ&ボーリング大会に雪野や黒戸、他のクラスメイト達も参加し、それはそれは盛り上がったという。
もちろん一朗も雪野や黒戸だけでなく、岩田や鈴木からも強く誘われたが、それを頑なに断った。
そしてその日の夜には、雪野と黒戸の双方から電話で感謝される。
……ひとまず、黒戸と雪野に関してはなんとかなったか……。
だが、まだ終わってない……。
今回の犯人を突き止め、なぜこんなことをしたのか、その理由を訊き出し、今後は手出し無用の確約を取るまでは……。
――一朗には犯人に心当たりがあった。
もっとも心当たりと言うには乏しい、微かな違和感といった方が正しいかもしれないが――。
しかし、なぜか確信にも似た感覚を覚えていた。
そうであって欲しくないと、そう願いながらも――。
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