第27話 サブスク対応パンツ

 黒戸にやられっぱなしも性に合わない。

 ……そうだ! 

 ここで一朗は、都合よく一矢報いるための策を思い付いた。

 満を持して告げる。

「……まあ、俺も昨日雪野をヒーヒー言わせたけどな」

「なっ!?」

 黒戸の表情から余裕が消えた。

「死んじゃう死んじゃうって、喜んでたぜ? なあ雪野?」

「それは――!?」

 じろりと黒戸が雪野を見る。

「本当かい? 栞」

「ほ、ほんとはほんとだけど違くてっ!?」

 黒戸は雪野からこちらへ向き直って言った。

「……一朗、ボクにも昨日やったのと同じことを試してみてくれないかい?」

 からかおうにも、やはり黒戸は一筋縄ではいかない。

 おおよそのことは、もうわかっているのだろう。

 一朗は観念した。

「いや、やめておこう。今急にお前を笑わせられる自信はない」

「そんなことだろうと思ったよ。栞はゲラだからね。息ができなくて死にそうなくらい大笑いしたんだろう?」

 やはりお見通しだったのだ。

「……それで、どうだったんだい?」

「ん? 何が?」

「栞のパンチラは」

「――ッ!?」

 ――こいつッ!? 

 そこまで見通して――!? 

 なんつー観察眼だよ!? 

「えっ」と驚いた後、急に冷静になった雪野が氷のような瞳で確認してくる。

「……そうなの? 斎木君……?」

 嘘をつくのは悪手になりうると、そう思わせる迫力が雪野にはあった。

 素直に白状する。

「……まことにごめんなさい。腹を抱えて転げ回っていたので、実際にはチラどころかモロに丸見えでした……」

 真っ赤になりながら、雪野は金銭を要求した。

「百円っ! 百円を要求しますっ!!」

「やっす」

 雪野が恥じらいながらも説明する。

「……お気に入りじゃない、ちょっと古いパンツだったので……。どうせならもっと可愛いの履いてる時に見て欲しかったよっ!? いや別にパンツ見られたくは無いんだけどねっ!?」

「でも十分にエロ可愛かったぞ」

「ほんとっ? なら百三十円っ!」

「やっす」

「……一朗」

 隣から殺気と冷気を感じた一朗は、本能から即座に謝罪した。

「す、すまん黒戸!! わざとじゃないにしろ雪野のパンモロを――」

 だが、黒戸は予想外の言葉を続ける。

「ボクもパンツを見せたら百円貰えるのかい? 今なら一月見放題で五百円にしてあげるけど?」

「何言ってんだ黒戸まで!? 二人揃ってイカれてんのかよ!? 倫理0点だからなお前ら!?」

 まあ見せてくれるなら喜んで払うけどなそんなはした金ッ!! 

 そんな本音は胸の内にしまっておくことにした。

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