おほしさまにあいたくて

わをん

第1話

 みいちゃんはおほしさまに会う方法を考えました。

 どうしても会いたいのですがいつどこで会えるのかがわかりません。

 そこで犬のポチに聞いてみました。

 「ねえねえ、おほしさまにはどこで会えるのかな」

 「おほしさまはよくわからないけど掘れば出てくるんじゃないかな」

 そういうやいなやポチは庭の土を掘り始めます。

 「そこ掘れわんわん」

 みいちゃんも楽しくなって一緒に「そこ掘れわんわん」といい、土を掘ります。

 コツン

 固いものが手に当たりました。

 「これがおほしさま?」

 手にしたのは前になくしてたと思ってたおもちゃのステッキでした。

 「ポチがかくしてたのね」

 みいちゃんはかくしていたポチを怒ろうとしましたが、なくしてたものが見つかったことと、おほしさまにお話ししたいことが増えたのでニッコリ笑顔です。

 結局見つかったのはステッキだけでおほしさまには会えませんでした。

 「何をしているんだい?」

 声の方を向くと猫のタマがいました。

 「おほしさまを探してるの。タマはどこで会えるか知らない?」

 タマは得意そうな顔で言いました。

 「バカだなあ。お家におほしさまはないよ。おほしさまは外にあるんだから」

 それを聞いたみいちゃんは勢いよくお外へ飛び出していきました。

 「おほしさまはどこにいる〜」

 久しぶりの外出なのでごきげんで外を探索するみいちゃんは、お父さんに着せられた真っ黒なワンピースをひらりと翻して歩き出す。

 みいちゃんのワンピースとおなじようにひらりと飛んできたちょうちょに出会います。

 「ちょうちょさんはおほしさまとどこで会えるか知っている?」

 ちょうちょはみいちゃんの頭に止まってこたえます。

 「おほしさまはたかーいところにあるのよ~」

 高いところとはどこだろうとみいちゃんは考えます。

 少し前に幼稚園の遠足で行ったお山が浮かびました。

 「お山に行けば会えるかな?」

 みいちゃんは記憶をたどってお山へ向かいます。

 遠足でお昼を食べた原っぱが一番高い場所。そこにむかって小さな足で歩き続けます。

 原っぱに辿り着きましたが、そこにもおほしさまは見当たりません。

 「おほしさまどこ~?」

 みいちゃんはおほしさまに呼びかけますが返事は返ってきません。

 「お日様が出てるうちはおほしさまはでてこないカー」

 みいちゃんが声のほうを見るとカラスがいました。

 「カラスさん。おほしさまにいまはあえないの?」

 「おほしさまはきらきらしてきれいらしいカー。僕もほしいけど夜にならないと見えないから鳥目にはむずかしいカー」

 「なら待ってみる!」

 鳥目のことはみいちゃんにはよくわからなかったのですが、夜にならないと会えないならこのまま待とうと決めました。


 おひさまがしずんで辺りが暗くなりました。

 明かりはないので何も見えません。

 草木はカサカサと風で揺れてまるで生き物の鳴き声のように聞こえます。

 おほしさまに会えるまでここにいると決めたみいちゃんですが、真っ暗が怖くて、草木が揺れる音が怖くて心細くなってきました。

 「おほしさま……あいにきたよ」

 小さく呟きますが何も返ってきません。

 「会いに来たよ!」

 さっきよりも大きい声で口に出しましたが、やはり何も返ってきません。

 ついにみいちゃんは泣き出してしまいました。

 えんえんと泣いていると「どうしたの?」と女の人に話しかけられました。

 声がしたほうに顔を上げてみるとお姉さんがたっていました。真っ暗なのにおねえさんはほんのり光って見えました。

 「もう真っ暗だよ。いつまでいるの?」

 「おほしさまに会えるまで」

 鼻水をずびっとかみ、みいちゃんはさらに話します。

 「お父さんが言ってたの。お母さんはお星様になってみいちゃんを見守っているんだって」

 うっうっとつっかえてしまったので最後のほうは小さい声でした。

 「お母さんからは会いに行けないからみいちゃんから会いにいくの」

 袖でぬぐってもぬぐっても涙がこぼれてくるのでみいちゃんはまたうつむいてしまいます。

 夜はさらに暗くなってようにみいちゃんは思いました。

 「みいちゃんはおほしさまじゃないからおかあさんには会えないよ?」

 おねえさんの言葉にびっくりしてみいちゃん顔を上げました。

 「どうしたらおほしさまになれるの?」

 「今はまだなれないかな」

 「今すぐ会いたい。さみしい。お母さんだってひとりじゃきっとさみしいよ」

 「寂しい……でも大きくなったみいちゃんも見たいからお母さんはいつまでも待てるの」

 お姉さんもみいちゃんの側にしゃがみこんで、涙がこぼれるみいちゃんのお顔を包みます。

 「ゆっくり、たくさん時間かけて大きくなって」

 「そうすれば会えるの?お母さんに」

 「うん。会えるよ。約束」

 おねえさんが差し出した小指にみいちゃんは小さな小指を絡ませました。

 

 お姉さんとみいちゃんは手を繋ぎながら山道をくだっていきました。

 その間、二人はおはなしはしませんでした。


 ふもとまで歩いて行くとお父さんの姿が見えました。

 つないだ手は外されておねえさんはみいちゃんの背中をぽんと押しました。

 みいちゃんはお父さんの元へ駆け出します。

 「みいちゃん! こんな時間までどこに行ってたの?」

 お父さんはギューっとみいちゃんを抱きしめます。

 「おほしさまに会いに行ってきたの」

 お父さんはびっくりとかなしいが混ざった顔でみいちゃんをみつめます。

 「でもね、みいちゃんが大きくならないと会えないんだって。だからみいちゃんたくさん大きくなる」

 「うん……うん……。ゆっくり……ゆっくり大きくなろうね」

 

 お父さんと手をつないでおうちまで帰ります。

 みいちゃんはおねえさんにばいばいと言っていないことに気付き山の入り口を振り返りました。

 入り口におねえさんの姿は見えませんでしたが、またねと小さく聞こえた気がしました。


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おほしさまにあいたくて わをん @wawon-a4i1

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