第13話

 しばらく、二人で夕陽を眺めていると、すぐ後ろからカシャッ。と、シャッター音が聴こえた。

「あっ」

 ……三人の看護婦さんがいた。

「ち、違うのよ。ほら、結ちゃんに彼氏が出来るかもしれないって、みんなそわそわしちゃってね」

 楽しそうだなぁ、この人たち。

「矢野さん。私、恥ずかしいから覗きだけはやめてって言いましたよね」

「うっ……」

「酷いです。ずっとずぅっと、信頼してたのに」

「うぐぅ……」

「……まぁ、見られちゃったから、もう隠しませんけど。次やったら許しませんからね。つーんってしちゃいます」

 ……楽しそうだなぁ。

 とりあえず、しばらくは楽しんでいる姿を眺めることとしよう。


 ――その後は、とんとん拍子で話が進んでいった。この前の体調不良の後から、気になることがあったと医者に告げると、どうやらかなり進行したガンがあったらしく。

 また、結さんの体も、あまり芳しくないらしい。

 そこで、私は私たち二人の延命ではなく、同棲を願った。

 どうせ、お互いもう数ヶ月もすれば死ぬとわかっている同士なんだし、それなら楽しく暮らしたい。……と、正直には言えず。要所を誤魔化して、幸せな結婚生活を少しでも楽しみたいからと、無理を通そうとした。

 そこで聞かれたのは、私たちの住む家をどうするのか、生活費は足りるのか、など。

 私は、手元に用意していた貯金通帳を見てもらい、私たちが亡くなった後は、友人に全て任せると伝えた。

 やけに手際がいい事を疑われたが、今はとにかく彼女と少しでも長く一緒にいることが大事なのだ。

 そんな私の決意に、医者は折れて、ちゃんと病院に来て検査をすること。無茶はしない、させないことを約束して、私たちの幸せな新婚生活の準備を始めることが出来た。

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