箱庭の息子

 ブラット家、それは吸血鬼の名家で3つの分家を従え、オスラという領地を納めている。博愛であること、領民が第一あることを重んじている。

 そんな由緒ある名家にぼんくら息子がいるのだった。


「シルバ様、おはようございます。朝になりました。お目覚めになってください」


 自室に黒い燕尾服を纏う白髪の使用人のコルダがいつものように起こしに来た。ボルドー家といい、代々ブラット家に使用人として仕えており、コルダは現領主ユーリ・ブラットの世話係をしていたことがある。


「・・・」

「シルバ様、朝になりました、お目覚めになってください」

「・・・」

「はぁ、、朝です!!起きてください!!」


毎度のことだと思いながら、コルダは小言を言った。


「う~ん、後、3時間寝かせろ。まだ朝ではないか。吸血鬼は夜行性だろう。なら、朝寝て夜起きるのは当然だろう」


 シルバは紫のバラ柄ベット中でうずくまりながら、抗議をしてきた。


「いつの話をしているのですか。今、帳が領地に展開されているですから、日が出ていても活動できるではありませんか。」

 

 帳とは吸血鬼が太陽の下でも活動したいと願いから作られた黒魔術で、シルバの父で領主のユーリが提案して作らせたものだ。


「帳によって、夜でないと活動できない、純潔血の我々も人間、亜人種方々との交流が盛んになり、このオスラも交易都市して、栄えることができているのですぞ」

「そんなことは知っている。俺だって父上に連れてかれて、外で領民と交流することがあるのだからな」


 ユーリは領民のことを愛して尊重しているため、定期的に領民との交流をもつ為、城下町や港赴くことがある。その際は、次期領主候補のシルバも同伴することがある。


「いいですか、領主候補のシルバ様は領民の規範にならないといけません。さぁ、早く起きて朝食を食べてください。その後しっかり、座学はしっかり受けてくださいね。アイビー先生を困らせないで下さいね」

「わかった、わかった。起きるから」


 全く、なんで第三候補の俺が領主としての振る舞いなんて押し付けられて、座学や作法の稽古なんてしないといけないだ。兄上たちや弟たちだけで充分じゃないか。


 はぁ、領民の子供として生まれてくれば、もっと自由に生きられてたのかな。

 そんな不満を抱えたまま、自室を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る