第5話『鬼と町娘』
聖水が切れたから、いつもの如く水科神社を訪れた。聖水を受け取って車に積んだ時、もう午後の七時だった。
「ねぇお姉ちゃん。晩御飯食べてきなよ。いいよね、お母さん」
「そうだね。今日はお魚じゃないから、千夜さんでも食べられるはず。それに、泊まっていったらいいわ。鞠も喜ぶだろうから」
鞠さんたちにそう誘われて、お腹も空いていたので私は受けてもいいかと思った。
「菊一郎くん、いいかな?」
「明日の依頼はないし、いいんじゃないか」
「そうだね。
「気にしないで。そしたら菊一郎さん、手伝ってくれるかな?」
「わかった」
「私も……」
手伝うと言おうとしたが、鞠さんに止められた。
「待って、お姉ちゃんはわたしとお喋りしよう」
なるほど、ご飯に誘ったのもそういう意図があったからだったのか。
「わかりました。なにを話したいんですか?」
「お姉ちゃんの昔の話が聞きたい。わたしは、もっとお姉ちゃんと仲良くなりたいの。そうだ、お兄ちゃんと初めて会った時の話をしてよ」
一瞬ドキッとした。それは、あまり話すべきことではないと思っている。
私がまだ人間だった頃の話。鬼と町娘の恋愛物語。私の人生が詰まりすぎている。
江戸幕府が日本を統治していた時代に、私は生まれた。
その日はとても寒く、昼になっても気温が下がらなかった。
お使いで魚を買いに市へ行き、無事マグロを買うことができた。
その帰り、道沿いの木に寄りかかる男性を見つけた。
「……こんにちは」
恐る恐る声をかけるも反応はない。
「こんにちは!」
何度呼んでも、死んだように
「お兄さん、触るよ」
握った彼の手は、まだ彼が生きている事を証明していた。
「大丈夫?」
「……ぃ」
「お医者さん呼んでくる? それとも、なにか必要なもの……水?」
「血……血を、くれ」
医者を呼びに行くのが正解だと思うけど、混乱していた私はこんな事を言った。
「血……えっと、私のでもいいかな?」
彼はそれを聞くや否や、躊躇いもなく私の首に鋭い牙を突き立てた。
初めての吸血の感想は、少しの痛みと共にある大きな快感だった。
しかし、その時間もすぐに終わってしまう。
彼は口をそっと離すと、口元を拭って私をじっと見てきた。
吸い込まれるような紅い目だった。
「……ありがとう。おかげで助かった」
「よ、よかった」
すると彼は立ち上がり、ボロ布を頭から被ってどこかへ行こうとする。
「待ってお兄さん。すぐ動かない方がいいよ……」
「もうお前に迷惑をかけるわけにはいかない」
彼はそう言って私を拒絶し、一歩進んで、よろけて、倒れた。
「だから言ったでしょ。大人しくうちに来て。悪いようにはしないから」
しかし彼の反応はない。どうしたのかと思って見ると、右手から煙が出ていた。
「なにこれ⁉︎ 大丈夫?」
私がその手を掴んで引き寄せると、フッと煙が消えた。
「もう大丈夫だが、日光は苦手なんだ。夜になったら移動するから、お前はもう帰れ」
「でも……」
「いいから」
彼は振り払おうとするけど、私は手を離さない。
「やだ。もう二度とあなたと会えなくなっちゃいそうだから。私の家に来て」
「……はぁ。俺は化け物だ。吸血鬼って呼ばれてる。人間よりも強く、簡単に殺すことができる」
「でも、私を殺さなかった」
「そういう話じゃねぇんだ。吸血鬼って存在が、そもそも人を怖がらせるんだよ。お前がよくてもお前の家族が俺を恐れて追い出し、化け物を拾ってきた馬鹿って理由でお前も追い出されるかもな」
うちの家族なら多分大丈夫だけど、そんなに心配なら……
「信頼のおける知り合いがいる。彼は嘘と本当を見抜ける人だから、あなたの正体もきっと信じてくれる。それに彼は信用されてるから、彼の言うことならみんな信じてくれる。まず彼に説明して、みんなへの説明は彼に頼もう。そうしたら、きっとあなたはみんなに溶け込める。来てくれる?」
「……暗くなったら危ない。俺はお前の影に潜るから、今行こう」
「う、うん!」
そうしてそのまま吸血鬼さんを影に携えて、とある学者の家に向かった。
戸を叩き、返事がないので勝手に開けると、中からホコリの匂いが漂ってきた。
「
「……お、千夜ちゃん。こんにちは」
長兵衛さんは本に埋もれて眠っていた。戸が開いて光が入ってきたことで起きたのだろう。
「足の踏み場なさそうだね……入っていい?」
「待っててくれ。少し片付ける。その間に要件を話してくれないかい」
「長兵衛さんに見せたいものがあるの。みんなが信じてくれるかわからないから、まずあなたに話をしようと思って。暗い部屋あるかな?」
「ああ、わかった。奥の書斎がうちじゃ一番暗いな。よし、入っていいぞ」
「じゃあ、案内してくれる? 詳しい話はそこでしたい」
彼の家はどの部屋も本だらけで、わざわざ書斎と呼ぶなんてどれだけ本があるのだろう、と関係ないけど思った。
書斎は確かに暗かった。窓があるけど、隣の家があるからあまり光が入ってこない。ここなら問題ないだろう。
「お兄さん、出てきていいよ」
私の陰から闇が立ち上がる。それはだんだんと人の形を成した。
「それで、この人は誰なんだ?」
陰──吸血鬼さんは怪しむように長兵衛さんを見る。
「長兵衛さんだよ。国学を研究する学者さんで、私の知ってる中で一番頭いい人。それで長兵衛さん、この人は──」
「吸血鬼……か」
「知ってるの?」
「古い文献で読んだことがある。不老不死の怪物で、陰に潜る描写もあった」
やっぱりこの人はいろいろ知ってるな。
「だが本物を見たのは初めてだ。それに昔の書物で記録されている限りのことしか知らない」
「そこにはなんて?」
「血を求めて人を襲う不老不死の怪物、だと」
「彼はそんなことしないよ」
私は全力で吸血鬼さんを庇う。吸血鬼さんが安全だと保証しなくちゃ、信じてもらえても意味がない。
「千夜ちゃんがそう言うならそうなんだろうな。だけど、僕は大人として警戒させてもらう」
そして彼はこんなふうに続けた。
「日本で吸血鬼が最初に観測されたのは平安時代の前期だ。当時の歴史書に『白肌の異世界人』について書いてあるが、これは今で言う西洋人のことだな。そして『白肌の異世界人』の中には奇妙な術を使う者がいたらしい。例えば、恐れた村人が農具で殴ったが、すぐに起き上がり、傷も治ったとかいう記述がある。他にも、さっき見せてくれたように影から現れたとかな」
「もっと教えて」
「彼らは不死身だったが、いくつか弱点もあった。日光や、十字、川とかは避ける傾向にあったらしい」
だからさっき
「もしそいつが本当に吸血鬼だとしたら、大発見だ。僕は専門外だが、医学を研究してる奴らは欲しがるだろうな。なにせ、どんな病気も怪我も治る身体なんだ。身体を弄られたりするかもしれない。そうでなくても、歴史書の記述の証明になる。医学者のように解剖するつもりはないが、存在の発表くらいはしたい」
「彼が望まない限り、渡さないよ」
「もちろんだ。勝手に奪おうだなんて考えていないし、君たちが望まない限り彼のことは他の誰にも言わないさ。彼──ところで、名前はなんで言うんだい?」
二人して吸血鬼さんの顔を覗き込む。しかし彼は一言。
「忘れた」
「じゃあ何かつけないと呼びにくいな。千夜ちゃん、いい案はあるかな?」
「うーん、長兵衛さんは?」
「不老不死にまつわるものを入れたらどうだろう。橘、人魚、菊……」
「菊、いいじゃん!」
高貴で静かな雰囲気がなんとなく似ていると思った。
「なら、菊一郎がいい。この時代では、長男に一郎とつけることが多いと聞いた」
吸血鬼さんが珍しく自分の意思で口を開いた。
「確かにそうだけど……長男なの?」
「……ああ」
「じゃあ菊一郎さんで」
「菊一郎……悪くないな」
「名前が決まったところで、菊一郎。これからどうすればいいかな?」
……これから?
「千夜ちゃんは吸血鬼を信じない人に彼の存在を信じさせるために僕のところに来たんだろ? 僕を信じさせることには成功した。それで、誰に話せばいい? それと、なんで君が吸血鬼を匿おうとしているのか聞いておきたい。さっきも言ったけど、僕はまだ
「……」
「どうした?」
口にするとなると、恥ずかしいな。
「菊一郎さんが、好き……なの。一緒に暮らしたいんだけど、彼は吸血鬼だから周りの人を怖がらせちゃう。だから、私の家族に彼は安全だって保証してほしいんだ」
「──好き、ってのは初耳だな……会ったばかりの男を好きになるって惚れやすいタチなのか?」
菊一郎さんが気まずそうに目を逸らす。
「いや、それは千夜ちゃんよりも菊一郎の問題だな。吸血鬼の吸血には魅了作用があるって文献を読んだな。多分それだ」
長兵衛さんから衝撃の事実を聞かされる。この『好き』という気持ちが、吸血鬼の能力によって作られたもの、ってこと?
でも、そんなことはどうでもいい。それが事実だとしても、今更この気持ちに逆らえない。
「それで、吸血鬼と一緒に暮らすにはどうしたらいいの?」
「千夜ちゃん。一つ言っておくが、吸血鬼と暮らすのは普通じゃない。常識に囚われてる人は絶対に許してくれないだろう。君の家族には僕から説明するけど、それでダメだと言われたらきっぱり諦めるんだ。いいね?」
「……でも、彼を見捨てろって言うの?」
「そうだ。いいね? 約束ができないなら、僕は彼の件に対して何もしない」
「…………わか、った」
長兵衛さんはため息をつく。
「吸血鬼であることを隠して生活するのは不可能だ。幸い君の家は町から少し離れている。家族にだけ話して承諾を得られれば、数ヶ月は隠せるだろう。もし彼の危険性を町の人に知られたら……僕の手に負えないな。まぁとりあえず家族だ。暗くなる前に送っていくから、匿いたいこと、自分から説明するんだぞ。吸血鬼の信憑性の保証だけはしてあげる」
「ありがとう長兵衛さん」
「いいよ。君が小さい頃から君のことを知ってるんだ。そんな君に好きな人ができたとあらば、協力くらいする。それに、こんな稀有な相手じゃ、僕くらいしか協力できないだろうからな」
うん、本当にありがとう。
長兵衛さんの家を三人で出て、大通りを抜けて町を出た。もう十分暗かったので、木陰で菊一郎さんを影から出して、徒歩で数分、私の家に着いた。
私は弟の
「お母さん、ただいま」
「よかった、千夜。マグロ売ってなかった? 探して変なとこまで行ってたんじゃないわよね?」
「う、うん。マグロはすぐに買えたよ。で……その帰りに『彼』を拾ったんだ」
私が合図を出すと、菊一郎さんと長兵衛さんが家に入ってくる。
「彼は菊一郎さん。弱っていたところを私が助けた吸血鬼」
「きゅう……けつき? なぁに、それ?」
「血を吸って生きる生き物。私の血をあげたんだけど、全然辛くなくて、むしろ嬉しいって言うか気持ちぃって言うか、そんなで……とにかく、害はないの」
一通り説明をしてやっとお母さんは口を開いた。
「……とりあえず、三人とも上がりなさい。夕飯を食べながら話しましょう。夜も遅いから泊まっていけばいいわ。吸血鬼がどうとかよくわからないけど、長兵衛さんがわかってるならいいわ。あとは私が、千夜たちが騙されてないか判断するだけでいい」
お母さんは怪しむように菊一郎さんを見た。
「そんな! 菊一郎さんはいい人だよ」
「道で拾って、しかも今日会ったばかりの人を私はそこまで信用できない。明日起きたらあなたが連れてかれてて、奴隷として売られるかもしれない。そのくらい考えてるわ」
「酷い! 菊一郎さんはそんなんじゃないよ!」
「いいんだ、その考えが普通だ。お前を心配してくれてるんだよ。いい親だな」
「え、あ、うん……」
菊一郎さんを庇おうとしたけど、彼自身にそう言われては黙るしかない。
お母さんは夕食を準備し、匂いを嗅ぎつけた忠彦が奥から出てきた。忠彦は二人の来客に戸惑っていたが、私の説明を聞いてなんとなく納得してくれた。
「お姉ちゃんが好きになった人なら、まぁいいよ。騙されてても、僕には関係ないし」
そうして五人で夕飯を食べはじめたけど、誰も話そうとしない。10分くらい無言が続いてから、最初に口を開いたのはお母さんだった。
「菊一郎さん、あなたが今まで生きてきた出来事を話してくれないかしら。そしたら完全に信用するってわけじゃないけど、あなたの口からあなたのことを知りたいわ」
お母さんの提案に、菊一郎さんは重い口を開く。
「俺が生まれたのは、今から900年くらい前だ。だが、人間の脳は900年分の出来事を覚えていられる作りをしていない。それは元人間の吸血鬼も例外ではない。だから、俺の過去をできるだけ話すが、忘れてしまったこともあると頭に入れておいてくれ」
そして彼は、少しずつ過去を話してくれた。農家の生まれだったこと、吸血鬼になってから人を殺さないようにしてきたこと、多くの別れを経験して、山に籠るようになったこと、そして、飢えに耐えられなくなって町に降りてきて私に出会ったこと。
彼の経験してきた900年を、圧縮して聞いた。怪談を語るかのような彼の暗い口調に妙なリアルさを感じて、お母さんすら黙ってしまった。
長兵衛さんは忠彦の部屋で、菊一郎さんは私の部屋で寝ることになった。
暗い寝室。一つの布団に二人の男女。お母さんは不安そうだったけど、なんとか許してもらえた。菊一郎さんの昔話がいい説得材料になったらしい。
全身で感じる菊一郎さんの体温は、妙にあったかい。
「なんでお母さんの説得に協力してくれたの?」
元々彼は乗り気ではなかったはずだ。私が無理に連れ込んだのに、最後には自分から説得してくれた。彼の性格的に、過去を話してほしいと言われても『忘れた』で済ませそうなのに。
「昔、とある人に『運命はある』と言われた。色々なことを忘れたが、その言葉はどうも忘れられず、その言葉を信じて生きてきた。俺は運命がどんなものなのか知らない。だから、手探りで運命を探している。お前は俺を好きと言ってくれたな。直接好意を向けられたのは初めてなんだ。だからこれを、お前を、運命かどうか確かめる時間がほしかった」
運命──それが彼の人生で求めているもの、なのか。
「長々と語って悪かった。忘れてくれ」
彼はそう言って後ろを向いてしまう。もう話すことはないとでも言いたげだ。
「……私を、吸血鬼にしてほしい」
私はほとんど無意識にそう呟いていた。
「やめておけ」
彼はぶっきらぼうに返す。
「菊一郎さんがこれから何年も生き続けるっていうなら、私も一緒にそうしたい。菊一郎さんのことが好きだから。菊一郎さんの運命になりたいから」
「あの学者が言っていただろう。吸血鬼の吸血には魅了作用がある。お前の『好き』は吸血鬼に作られた感情だ」
「最初はそうだったかもしれない。でも、そうやってあなたを見ているうちに、魅力的なところにどんどん気づいていって、ただなんとなくじゃなくて本気で好きになったの。これは、吸血のせいなんかじゃないよ」
彼はため息を吐いて、諭すように言う。
「……たとえそうだったとしても、不老不死はお前が想像しているほどいいものじゃない」
「それでも、菊一郎さんと一緒なら!」
「周りの人間が、俺を置いて死んでいくんだ。お前の母親も、弟も、学者も、お前の知ってるすべての人間が、お前を置いて死んでいく」
その言葉が、私に重くのしかかる。900年も生きた吸血鬼の命の重みがそうさせた。
「確かにそうかもしれない。でも、二つ反論がある。一つ、私が吸血鬼になればあなたを置いて死ななくて済む。それは同時に、あなたが私を置いて死なないってことでもある。二人一緒なら、孤独じゃないよ」
「孤独には慣れた。お前を巻き込んだところで変わらない。だから、迷惑だ」
「そうやって優しくした結果ぶっきらぼうに突っぱねちゃうところが好き」
「…………はぁ」
面倒くさそうにため息をつく。心なしか嬉しそうだ。
「二つ目の理由は?」
「えっと、私が一緒にいれば菊一郎くんがもうご飯に困ることもなくなる」
お互いに血を吸い合えば、食料問題は解決。
「いや、それは無理だ。吸血鬼は同族の血を吸うことはない」
「え?」
「つまり……お前が吸血鬼になるだけじゃあ、その悩みは解決しない。むしろ必要な血の量が二人分になる」
「……そっか。じゃあ、ちょっと考える」
「諦めてはくれないんだな」
それは、もちろん。
「あ! 彼なら何か知ってるかもしれない」
明日朝一番で相談に行こう。こんな時に力を貸してくれる、一番の知識人の所に。
翌朝、忠彦の部屋を見張っていると、彼が起きてきた。よし、狙い通り。
「長兵衛さん、おはよう」
「あぁ、千夜ちゃん。何か用かな?」
「うん。吸血鬼のことを知ってた長兵衛さんなら、吸血鬼以外の不老不死のことも知ってるかと思って、聞きにきた」
「言おうとすることはわかった。不老不死になりたいんだな」
「うん」
彼は最近のことと今の会話だけですべてを察したらしく、訊きたかったことを全部話してくれた。頭いい人と話すのは楽でいいな。
「吸血鬼は同族の血を吸わない、ね。なかなか面白い情報だな。あぁ、悪い。吸血鬼以外の不老不死だったな。生まれつき不老不死な生物は、この場合関係ないから除外するが、そうしたら俺が一番信憑性があると思ってるのは『人魚の肉』だな。文献の数が一番多く、日本で人魚の目撃例もある。人魚の肉を食べた人間は八百比丘尼といって、不老不死になれる」
「ほんと⁉︎ 人魚の肉を食べるにはどうすればいいの?」
「最近目撃されたのは
「ありがとう! 早速行ってみる」
荷物をまとめようと部屋に戻る私を長兵衛さんは引き留める。
「あーでもひとつ。決して人魚を密猟しようなんて考えるなよ。やつらは警戒心が強く失敗する可能性の方が高い。嫌われたらその特徴を人魚間で広められ、二度と姿を拝むことはできなくなる」
「……わかった。絶対に不老不死になって帰ってくるよ」
「待て。あと一つだけ聞いてくれ。この方法は絶対成功するとは限らない。中には人魚の肉を食べて苦しみながら死んだやつもいたそうだ。それでも……行くか?」
「うん」
「なら、止めない。行ってこい」
私は長兵衛さんに深くお辞儀をしてから、菊一郎さんに人魚の肉について話そうと部屋に走った。
菊一郎さん。
あなたを八百年の苦しみから解放したい。これからは私も一緒に苦しみたい。
そのために、あなたと一緒に地獄に落ちる覚悟もあるわ。
【次回予告】
町娘が鬼に恋をして、不老不死になることを誓った。そしてその方法は人魚の肉を食べること。二人は人魚の目撃情報があった照潮海岸に向かう。
第6話『人魚と町娘』
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