2-3
そして一週間後。
今日もまた昼間から、
青ざめるメイドたちをよそに、実家から持ってきた男物のシャツとズボンに
「あんの『
コンラート
アルマは手にしていたスコップを、折れ曲がりそうなほど握りしめた。
「誰よりも大切にするって言ったの、忘れたのー!?」
(もう知らない! そっちが勝手にするなら、私も好きにしてやるんだから!)
ずんずんと勇ましく
すると木々の向こうに、ガラス張りの大きな建物が見えてきた。
(これ、ここに来た日に馬車から見えた――)
高さは
(温室?
中を確かめたいが、
うっかり傷つけてはいけないと、アルマは
「さて、気を取り直して――」
適度に
(ここの土は栄養も多そうだし、いい子が住んでるかも)
初めて出会う
だが先ほど生じた胸の痛みが、すぐに顔を
(ほんと、どうしてこんなことに……)
いきなり魔法だなんだと言われて。
同じコンラートと説明されても、あまりにも違いすぎる。
(もし、このまま魔法が解けなかったら……。前のコンラート様には、もう一生会えないのかしら……)
鼻の奥がつんと痛み、アルマはぐっと
しかしすぐにぶんぶんと首を
「あーもう
「えっ、おれのこと好きじゃなかったの?」
「ぎゃーっ!?」
突然降ってきた言葉に、アルマは叫びながら顔を上げる。
パーティー会場にいるはずの『軟派閣下』がこちらを見下ろしていた。
「ど、どうしてここに……」
「いつまで待ってもきみが来ないからだろ?」
「わ、私がいなくても、大丈夫じゃ……」
自分の気持ちに整理がつかず、アルマはつい言い
それを見たコンラートは、「ねえ」とまっすぐにアルマを見つめた。
「さっきの、ちゃんと聞かせて。おれのこと――好きじゃない?」
「……正直、よく分かりません」
「そっか。じゃあ、前のおれは好きだった?」
「…………」
あの晩、
そんなアルマを見つめていた『軟派閣下』は、やがて小さく息を
「そっか。……
「えっ?」
「決めた。要は以前のおれより、好きになってもらえばいいんだよね?」
「そ、それはどういう……」
コンラートはにこっと笑うと、すっと片手を差し出した。
アルマが手を取るのをためらっていると、コンラートがふと小首を
「ところで、こんなところで何してたのかな?」
「えっ!? ええとその、か、
「花壇? それなら庭師に
「じ、自分でやりたかったんです!」
ストレスが限界
ひやひやしながら反応を
「そっか。まあ広さだけは
「えっ?」
「シンプルだけど良く似合ってる。きらびやかなドレスも
すると『軟派閣下』は
それを見たアルマはすぐさま離そうとする。
「ん? どうかした?」
「わ、私の手、いま泥まみれで……」
「そんなの全然気にしないで。それとも、おれとは手を
「い、いえ……」
「良かった」
コンラートはそう言うと、アルマの手を引いて迷いなく歩いていく。
アルマはその背中を見つめながら、意外そうに何度も
(令嬢らしくない、とか、言わないんだ……)
あれだけ
アルマの中にあったもやもやは、いつの間にかすっかりなくなっていた。
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